土地家屋調査士試験について

土地家屋調査士試験について

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しい専門家で不動産の表示に関する登記の仕事をしています。
土地や建物がどこにどれぐらいあるのか?ということを登記簿上に明らかにします。
こうして説明しても難しく見えるかもしれません。

土地家屋調査士になるには、試験を受けなければなりません。
その合格率はとても低く、10%くらいしかありません。
土地家屋調査士は法律分野での国家資格です。
どのような仕事に活かせるのか、試験内容を詳しくご紹介していきます。

適用する仕事

土地家屋調査士とは、一言でいえば「不動産登記の専門家」です。
登記とは、住所や所有者など不動産の詳しい情報を記したものです。
例えば「あの建物の中はどのくらいの広さなんだろう」と知りたいと思ったら、登記所に行って請求すれば見ることができます。

不動産の登記の仕事というと、司法書士が思い浮かぶかもしれませんが、登記には「表示」に関するものと「権利」に関するものの2種類があります。

土地家屋調査士と司法書士の違い
  • 表示に関する登記:不動産が「どのような大きさか」「どのような形か」など、物理的な状況を表す登記→専門家は土地家屋調査士
  • 権利に関する登記:不動産が「所有者が誰なのか」を表す登記→専門家は司法書士

土地家屋調査士の仕事はたくさんあります。

1.不動産の調査や測量

土手の中で測量をしている三脚表示に関する登記は土地や建物の現況を示すものなので、正確な情報が必要です。
そのため、不動産の物理的状況を正確に登記記録に反映させるのに、調査や測量を行います。

例えば、売買や遺産分割で所有地を分ける場合(分筆)でしたら、まず既存の登記書類や登記所に備え付けの公的な地図を調査した後、現地で実際の状況を確認します。
もし、登記書類に記載されている境界線が実際の土地の状況と異なっていたら、隣接する土地の所有者にも聞き取り調査などを行なって、境界線を確認して測量します。

測量士との違い
測量というと、測量士の仕事にも見えますが、測量士は測量のみが業務内容ですので登記申請は行えません。
それに、土地家屋調査士側も登記が目的の場合でしか測量は行えない決まりとなっています。

2.表示に関する登記の申請の代理

不動産の表示に関する登記は、その所有者に申請が課せられていますが、とても複雑な手続きなので一般の人には難しいです。
そこで、その登記申請の代理を行うのが土地家屋調査士です。

登記を申請するには「建築確認の床面積求積図から建物図面や各階平面図を作成」しなければなりません。
依頼を受けた土地家屋調査士は、CADを利用して図面を制作し、最終的には登記を法務局に届け出るところまで一貫して業務を請け負います。

3.表示に関する登記の審査請求手続の代理

表示に関する登記を申請すると、登記官が受理するかどうかを判断します。
もし不当な処分をされてしまった場合は、処分を下した登記官の所属する地方法務局の局長に不服を申し立てる(審査請求)ことができます。
その手続も土地家屋調査士が代理で行うことができます。

そのようなケースは稀ですが、この業務は申請者の権利を守るためにあります。

4.筆界特定の手続の代理

筆界とは土地が登記された際に、隣の土地との境界として定められた線のことです。

家と家との境界線(筆界)

その筆界の場所が不明確のときに、判断するのに申請するのが筆界特定の手続です。
申請後は登記官や筆界調査委員の方が、調べて筆界の位置を判断します。

5.土地の筆界に関する裁判外紛争解決手続の代理

裁判外紛争解決手続とは、裁判になる前に民間人同士の話し合いで争いを終わらせる方法で、その手続の際に土地家屋調査士が関わります。
略称はADRです。

このADRの認定を受けた土地家屋調査士が相談に応じることができます。
その際は弁護士と共同で代理します。

おおよその年収とキャリアパス

土地家屋調査士の平均年収は500万~600万円です。
若い頃や仕事をやり始めたときは300万円しか稼げませんが、年数を重ねるごとに高収入になっていきます。

年収が上がるのが早いといわれています。
例えば、50代では900万円の年収を手にすることができますし、それ以上に稼いでいる方もいます。
ボーナスも基本的に平均で「年に2回・各2ヶ月分」もらえるでしょう。

次にキャリアパスですが、土地家屋調査士は事業会社や土地家屋調査士事務所に勤務するか、独立開業して事務所を構えるかになります。

勤務する場合

建設会社を模型で表している写真勤務先は土地家屋調査士事務所や建設会社建設コンサルタント会社などが挙げられます。
独立開業する場合でも、まずはこうしたところに勤務して経験を身につけてからの方が良いでしょう。

建設コンサルタント会社では、調査士法人を立ち上げて測量・登記を行います。
就職先としては珍しいですが、民間企業や官公庁がクライアントになることが多いので、土地家屋調査士の資格や知識が重宝されます。

独立開業する場合

土地家屋調査士は独立開業がしやすい職種です。
独立開業した場合は、3つの形態をとることができます。

  1. 個人事務所にする(土地家屋調査士1人と補助者数名)
  2. 法人にする(土地家屋調査士が2人以上集まった場合)
  3. 他の資格者と一緒に合同事務所にする

上記の3番目の形態は、一人が複数の資格を保有して開業すると、土地家屋調査士会、司法書士会などといった各資格の職域団体に支払う登録料が多くなってしまうからです。
そのような費用負担を避けるために、他の士業の資格保有者と組むこともできます。
特に司法書士や行政書士の方との組み合わせが多いです。

認可団体

法務省法務省

受験条件

制限なし(どなたでも受験できます)

合格率

2022年:9.62%
2021年:10.47%
2020年:10.36%

1年当たりの試験実施回数

試験は筆記と口述があります。
筆記試験は、年1回、例年10月の第3日曜日に実施されます。

10月のカレンダーの周りに置かれている紅葉や木の実

口述試験は筆記試験合格者のみ、1月中旬に行われます。

試験科目

試験は筆記と口述があります。

筆記試験

午前の部:平面測量10問/作図1問
しかし、測量士補、測量士、一級建築士、二級建築士に合格している人は免除されます。

午後の部:
[択一]不動産登記法・民法他から20問
[記述]土地1問/建物1問

口述試験

業務に必要な知識について、1人15分程度の面接方式による試験

採点方式と合格基準

土地家屋調査士の試験は相対評価のため、毎年合格点が変わります。
さらにいうと、こちらの試験では、合格点の他に択一式と記述式の筆記試験にそれぞれ基準点も設定されています。

基準点の出し方を表した図

択一式の基準点に到達してなければ、その時点で不合格となり、記述式の採点もされません。

択一式基準点

択一式基準点は、受験者数を半分に絞り込むようにして点数が設定されます。
これは、記述式の採点が手作業で行われるため、採点できる人数に上限があるため設定されています。
この択一式基準点を突破できるのは、受験生の40%~50%ほどだといわれています。

記述式基準点

記述式基準点は、択一式の基準点を突破した者の3分の1くらいが達せられるように点数が設定されています。
最低でも60%の点数は取らなくてはいけません。
択一式を突破した者の35%程度が、記述式基準点を突破します。

合格点

合格点は70点~80点です。
択一式基準点と記述式基準点を足した点数から、10点ほどの上乗せをした点数が合格点です。
ですが、合格者は400人程度とあらかじめ人数枠を確保しておいて、合格点を調整する仕組みです。

このような採点方式をとっているのは、資格を取っても仕事が無いという状況を無くして、資格としての価値を守るためです。

取得に必要な勉強などの費用

土地家屋調査士試験は不動産登記について多くの関連法規があるため、覚えることがたくさんあります。
それに作図という動作を伴う記述式試験がありますので、独学では非常に苦労します。

試験対策には予備校を利用した方が短い期間で合格できます。
いくつかの予備校の中で、テキスト発送付き講座の代表的なプランを比べてみました。

社名 講座名 料金(税込)
アガルート 一発合格カリキュラム 275,220円~
早稲田法科専門学院 調査士総合Aパーフェクトコース 352,000円
日建学院 Web講座本科Webコース 451,000円
LEC 初学者向け 土地家屋調査士&測量士補W合格コース 385,000円~
東京法経学院 合格講座フルパック(通信A:DVDタイプ) 508,200円

受験料

8,300円(収入印紙で納付)

受験申込方法

受験の申込は窓口か郵送で行います。
インターネットではできません。

1.受験申請書などの入手

受験申請書は法務局または地方法務局の総務課で入手します。
直接窓口に行くか、郵送してもらうかで手に入ります。

郵送してもらう際は、封筒の表に「土地家屋調査士請求」と朱書きし、返信用封筒〔自身の宛名を書き、120円切手を貼った角形2号(A4版)の封筒〕を同封します。

2.提出書類

願書提出するには、土地家屋調査士試験受験申請書、写真票、筆記試験受験票、写真、受験料などが必要です。

写真は縦5cm×横5cmのサイズで、写真票の所定の欄に貼り付けます。
受験料も収入印紙を受験申請書の所定の欄に貼り付けましょう。

これらの他に、該当する方は、午前の部の試験の免除を受けるための資格証明書(測量士や建築士)や、筆記試験免除申請書に対する証明書が必要です。

3.受験申請書類の提出

持参する場合

筆記試験を受験しようとする会場の所在地に対応した、法務局または地方法務局の総務課に提出します。
なお、地方法務局(那覇を除く)に提出する場合は、筆記試験受験票に郵便番号、住所、氏名を記載して郵便切手(63円)を貼ります。

郵送する場合

郵送封筒の表に「土地家屋調査士受験」と朱書きしたうえで、筆記試験を受験しようとする会場の所在地を管轄する法務局または那覇地方法務局の総務課宛に郵送します。
必ず書留郵便で送付します。

※那覇地方法務局以外の地方法務局には、郵送で申請することができませんのでご注意ください。

筆記試験免除申請者

口述試験を受験しようとする会場の所在地を管轄する法務局の総務課に、提出してください。

まとめ

今回は不動産の登記を専門にする「土地家屋調査士」について、解説しました。
土地家屋調査士の不動産登記は、表示に関する登記を対象としています。

こちらの資格に合格するには、採点方式や合格基準を知る必要があります。
相対評価を取っていますので、合格枠が少なめに設定されています。

それを突破するには、独学ではなく専門の予備校で対策するのが良いでしょう。
こちらでは、いくつかの予備校も挙げましたので、費用や特徴を比較してみて自身に合ったところを見つけてみてくださいね。

 

関連する記事はこちら
土地改良換地士試験について

再開発プランナー試験について

宅地建物取引士(宅建)試験について