大河ドラマ『どうする家康』第19回について

大河ドラマ『どうする家康』第19回について

第19回「お手付きしてどうする!」
今回は女のしたたかさを感じた回だった。

今回のあらすじ

冒頭は武田信玄の最期から始まった。
甲府の森林(駒場)のシーンで、信玄は幹に寄りかかり、嫡男の四郎勝頼に遺言を残した。
「『信玄の病状は良くなり、次の合戦に向けて準備をしている』と伝えよ」「儂の死は3年は伏せておけ」「勝頼は自分の世を作れ」と。

しかし、信玄の死はそこら中に広がることとなった。
信玄の死を喜ぶ徳川家臣もいたが、「敵とはいえ、人の死を喜ぶべきではない」と諫めた家康は「三方ヶ原の戦い」で、大勢の徳川勢をなくしたことに心を痛めていた。

一方、信玄の死を知った織田信長側は、室町幕府の将軍である足利義昭を朝廷から追放していた。
信玄側に加担していたのが理由である。
将軍側に付いていた明智光秀も将軍の追放を手伝い、織田信長に忠誠を誓うのだった。

そして、羽柴秀吉は浅井長政を討つべく、小谷城へと向かった。
浅井長政は自害した後で、その妻(市)と3人の娘たちが残っていた。
秀吉を拒絶する市に、秀吉は市の娘の一人を抱きかかえていってしまった。(あれは茶々だと思う)

一方、家康は心身を癒すのに、風呂に入っていた。
薪をくべるのは家来たちだ。
やがて「髪をすいてくれ」の家康の頼みに参ったのが、侍女である「お万」だった。
この女はもとは瀬名の侍女であった。

浴室の中で家康の髪を後ろ側・前側とゆっくりすいていくお万。
時に家康を励ましながら、慎ましくも、時折妖艶なしぐさも見せてくる。
お万はそそっかしい侍女だといわれているが、家康との場面はどちらかというとしたたか
そのお万の雰囲気に家康は意識していっているようだった。
浴室でのやりとりは3度続き、ついには…!

場面は変わり、家康の部屋に忍びの服部半蔵がやってきた。
「医者に見せたところ、間違いありませんでした。」
つまり、家康は妻には内緒で侍女にお手付きし、孕ませてしまっていたのだ!

お腹を押さえた和服を着た女性の顔以外の部分

お子が産まれるのはめでたいことでも、これでは一大事!
家臣の石川数正や酒井忠次は激昂し、家康のいる浜松城だけでなく、妻・瀬名のいる岡崎城にまで知ることとなった。

「見損なった!!」とご立腹の嫡男・信康。
すぐさま、瀬名は浜松城まで赴くのであった。
信康同様、瀬名もご立腹である。
「側室を持つなとは言わないが、誰これかまわずお子を作られてはお家はどうなりますか」「正室である私だけでなく、信康・亀(家康の娘)のこともないがしろにしたのです」と家康を叩きながら憤慨する。
瀬名はお万と話し合うために、彼女のところへ向かうのだった。

お万のところへ行くと、彼女は縄で縛られ、お手打ちにしてくれと懇願した。
しかし、これは彼女の演出で縄も周りの侍女たちに頼んで実行したのであった。

これを見た瀬名は「お腹の子に罪はない」と言いながら、縄をほどいた。
そして「私はそなたを見くびっておった」とお万の素性を悟ったのだった。

結果としてお万は家康からたくさんの金銭をいただいて、屋敷から出ていったのであった。
家康とは一緒には暮さないのである。

そして、一段落した瀬名は、また岡崎城へ戻っていった。

今回の見どころ

今回はやはり、お万の存在である。
ドラマでは気づいてなかったが、お万は瀬名の侍女としてずっと仕えていた者だった。
その侍女が家康を誘惑したのだから、大した女子(おなご)と思わざるをえない。

お万とはどんな女子(おなご)だったのか

お万は1548年に、三河にあった池鯉鮒(ちりゅう)神社の神主の子として生まれます。
史実によると、お万の母親は家康の母・於大の方の姪であり、家康の従妹ともいわれています。

しかし、1547年に織田と今川との対立の中で、今川氏の戸田宣光が神社の社殿を焼いてしまいます。
そうした家庭事情の中、お万は最初は家康の正室である瀬名の「奥女中」であったといわれています。
奥女中とはお世話係である役割で、立場的には松平家臣に近い立場でした。

そうした侍女が浜松城で働き、家康の目に留まるわけです。
こうしてお万は身ごもりますが、築山殿(瀬名)は側室として認められませんでした。
現代の感覚で考えれば、妻の側についている女中が夫の子を妊娠したとなると修羅場しかありません。
このような気持ちが築山殿にもあったため、お万は岡崎城を出ることになり、城外で子を産むこととなったのです。

通説との違い

ドラマではわりと言葉同士で事が解決されていますが、史料によるとお万の懐妊を知って激怒した築山殿が彼女を裸にして庭の木に縛り付けたという逸話もあります。
それを見かねた徳川家臣である本多重次が助けて匿わせ、そのおかげでお万は出産できるようになったようです。
しかし、ドラマでは明らかにされていませんが、産まれたのは双子でした。

当時の社会では、双子は忌み嫌われていました。
そのような迷信があったためか、家康はこの出産を歓迎しなかったといわれています。

双子のうちの1人は、早々に永見家へと養子に出され、池鯉鮒神社を継ぎました。
もう1人の息子は「於義伊」と名付けられ、お万のもとで育てられました。
この息子が後の結城秀康になるのでした。

※歴史上でお万という女性は何人かいますが、こちらのお万はやがて「長勝院」になりました。

今回の配役

今回のメインはお万で、この役を演じたのは松井玲奈さんです。

略歴

積み上げられたCDたち松井玲奈さんは1991年生まれで、SKE48の元メンバーでした。
一時期乃木坂46を兼任していたメンバーでもあります。
出身地は兵庫県生まれで、愛知県豊橋市出身です。
こうした出身のため、AKB48の名古屋版のオーディションに応募し、2008年に『SKE48オープニングメンバーオーディション』に合格したのでした。SKE48の第1期生の始まりです。

SKE48はAKB48の姉妹グループなので、AKB48の『10年桜』や『涙サプライズ』でも選抜入りしていました。
もちろんSKE48の作品にも、在籍中にはシングル曲18作品にすべて出演しています。

彼女がSKE48を卒業したのは2015年でした。
卒業後は女優としての道を選びました。

今までの主な代表作(ドラマ)

2015年以降の作品を抜粋

  • フラジャイル
  • 神奈川県厚木市ランドリー茅ケ崎(主演)
  • 笑う招き猫(主演)
  • まんぷく(連続テレビ小説)
  • エール(連続テレビ小説)
  • 必殺仕事人2019
  • 明日すべてわかるから~失踪彼女=~(主演)
  • 30禁 それは30歳未満お断りの恋。(主演)

など

まとめ

今回は家康のお手付きから「お万」について取り上げてみました。
ドラマだけ見ると、お万は大変頭が良く、「女は人に尽くして癒しややすらぎを与えて、欲しいものを手に入れる」と言い放っていましたが、通説をみるとあまり幸運な人生ではなかったかもしれません。
殿のお子を産むと、殿の跡継ぎ候補になったり、徳川勢の要職に就けたりしそうですが、こちらの母子はそう容易くはありませんでした。

ドラマのお万は最後にこんなセリフを残しています。
「男どもに戦のない世など作れるはずがない。政(まつりごと)はおなごがやればいいのです」
この言葉は令和の世にもリンクしやすいように入れたのではないでしょうか。

令和の世でも、世界では戦争が行われています。
そして、政治の世界も男性だけで決定されているところがあります。
いつの時代も女の苦労は繰り返されていますね。