こちらは与信管理の実務技能を認定する検定試験です。
与信管理という言葉を初めて聞く人も多いと思いますが、与信とは取引先に信用を供与することです。
つまり、互いに信用を得て取引するという意味で使われます。
そして、与信管理とは信用取引において発生しうるリスク被害を抑えるためにする管理のことです。
身近に感じないと思いますが、実はいろいろな企業の部署で行なっていることなのです。
仕事と絡めながら、この検定をご紹介していきましょう。
Contents
適用する仕事
この検定を受験する人の多くは与信管理部門で働いている職員です。
与信管理は販売管理と財務管理の主要なマネジメント機能をつなぐ重要な業務です。
与信管理専門の部を設けなくても、経理部や総務部、営業部や法務部が担当していることもあります。
ですので、与信を伴う取引に関わる全ての部門におけるリスクマネジメント業務で、この資格を活かすことができるでしょう。
業界では、銀行や商社、メーカーや卸売業など、多くのところで与信管理が行われています。
与信管理を行う理由
与信管理とは、取引先の信用状況を評価して、いくらまで取引して良いかを管理することです。
私たちの普段のお買い物では、商品を手にしたり、サービスを受けたりするのと同時にお金を支払うのが一般的です。
しかし、会社間の取引では、製品やサービスを提供してすぐに代金を回収することはほとんどありません。
1か月など、まとまった期間の取引額を後日精算する「掛け取引」が一般的です。
この掛け取引ができるのは、期日になれば代金を入金してもらえるという取引相手に対する信用があるからです。
このように取引先に信用を供与して、商品やサービスを提供した後に代金を請求する取引をしていきます。
しかし、売掛金等の掛取引による与信取引をする企業は、もし未回収の資金があると、資金繰りに悪影響を受けたり、損失を被ったりすることがあります。
未回収の資金が大きい場合には、事業継続すら困難になりかねません。
ですので、与信管理が必要なわけです。
どんなことが検定から活かされるのか
具体的には、与信担当者の業務の流れは以下のようになります。
- 営業部門から取引先の与信審査依頼を受ける
- 営業部門から取引先に関するヒアリングや資料を入手する(担当者の印象、過去の取引、資本状況・役員構成、スポンサー情報など)
- HPなどから決算情報、事業活動の状況を調査する
- 帝国データバンクなどの企業調査会社から情報収集をする
- 反社チェックをする
実際に与信管理を行うには、財務分析などの企業分析知識や商流分析、契約、債権保全、債権管理・回収など多岐にわたる知識が必要です。
また、検定内の試験範囲をみると、営業職の業務知識と重なるものも多いのが特徴です。
ですので、この検定は与信を伴う取引に関わる全ての部門におけるリスクマネジメント業務で、活かすことができるでしょう。
おおよその年収とキャリアパス
求人を見ると、与信管理の仕事は年収500万~740万円ぐらいのものが多いです。
与信管理は金融業界や経理を行う場面で行われますので、そのような業界や業種で活かすことができます。
「ビジネス実務与信管理検定試験」は、1~3年程度の業務経験を有する一般の社会人や審査部門の担当者の人たちを対象にしています。
検定は3級~1級まであります。
各級を合格したら、どんなメリットやキャリアパスが待っているかをご紹介します。
3級
- 社会人の必須スキルが身に付けられる
- 就職や転職のアピールができる
- 就業している会社のリスク(貸倒れや倒産など)を回避することができる
2級
- 社会人の必須スキルが身に付けられる(財務分析や法律など多岐にわたるビジネスマンとして)
- 昇給や昇格の要件として活用できる
- 就業している会社のリスク(貸倒れや倒産など)を回避することができる
1級
- スキルアップすることができる
- 就業している会社のリスクマネジメントができる(積極的なリスクの測量やリスクマネジメント方策の提案など)
- 販売戦略や財務戦略をはじめとした経営戦略の立案と遂行が可能になり、企業経営そのものに寄与することができる
- 与信管理士(与信管理に関する高度な技能かつ、豊富な経験を有する職業専門家)として認定される
認可団体
認可団体は「リスク管理情報研究所」です。
2010年5月10日に設立されました。
所在地
〒141-0031
東京都品川区西五反田7-24-5
電話:03-3231-0272
事業概容
- 資格試験教育
- 情報発信(リスク管理に役立ちそうな情報の発信)
- さまざまな分析情報のコンテンツ化
受験条件
各級とも受験条件はありません。
しかし、想定する受験者は設定されています。
3級 | 部門を問わず、1~3年程度の業務経験を有する社会人全般 |
2級 | 1~3年程度の業務経験を有する審査部門のスタッフや営業職、その他の部門においては3~5年程度の業務経験を有する社会人全般 |
1級 | 3~5年程度の業務経験を有する審査部門のスタッフや営業職、その他の部門においては管理職 |
合格率
合格率はこのように分けられています。
2・3級
2021年:59.7%
2020年:54.7%
2019年:53.9%
1級
1級は科目ごとに割り出されています。
― | 与信管理の基礎 | 経理・財務分析 | 債権保全・回収に関する法務 |
2021年 | 14.8% | 7.8% | 7.8% |
2020年 | 14.3% | 12.3% | 11.0% |
2019年 | 25.3% | 16.4% | 17.3% |
1年当たりの試験実施回数
3級の受験要項によると、試験実施日時及び申し込み期間は設定されていないとのことです。
受験者のインターネットにつながるパソコンであれば、どこからでも受験が可能となっています。
1級・2級の受験要項でも受験日時は自由に選択できます。
申込み可能な試験日は、最短で3日、最長で3ヵ月先までです。
受験方法はリモート受験の他に、会場受験もあります。
会場受験は全国の主要都市をおおむねカバーしています。
試験科目
3級と2級の科目は同じで、1級のみ細かく分けられています。
3級・2級の試験科目
- 与信管理の基礎
- 信用情報の収集
- 財務分析や定性分析
- 与信管理制度の構築と運用
- 契約法
- 債権保全と債権回収
1級の試験科目
与信管理の基礎
- 与信管理の目的
- 危険な取引
- 商業登記簿、不動産登記簿の見方
- 信用不安情報
- 社内ルールの設定
- 与信限度制度の目的
など
経理・財務分析
- 決算書と財務諸表の見方
- 財務指標分析
- キャッシュフロー分析
- 粉飾決算の見分け方
- 定性情報と決算書の比較
- 危険な兆候
など
債権保全・回収に関する法務
- 基本契約条項の理解
- 担保権の種類
- 債権回収の準備
- 手形ジャンプへの対応
- 支払督促や交渉による保全
- 倒産手続
など
採点方式と合格基準
各級ごとにお答えします。
3級
試験はCBTによる4択式で解答します。
試験時間は30分で、出題数は40問です。
合格基準は100点満点中、70点以上で合格です。
2級・1級の場合
どちらともCBTによる4択式で解答します。一部記述問題も含まれています。
合格基準はどちらも100点満点として、70点以上で合格です。
2級
2級の場合は60分の試験時間の中で、50問解きます。
1級
1級は科目ごとに、各60分ずつ解答時間が設けられています。
出題数 | |
与信管理の基礎 | 40問 |
経理・財務分析 | 29問 |
債権保全・回収に関する法務 | 40問 |
また、以下の資格の保有者は該当科目の受験が免除されます。
【経理・財務分析が免除】
- 公認会計士(会計士補含む)
- 税理士
- 中小企業診断士
- 日商簿記1級合格者
取得に必要な勉強などの費用
公式サイトに無料学習コンテンツがありますし、「与信管理教室」というアプリも開発されていますので、特別に費用はかかりません。
もし、有料で学習ツールを使うなら、公式サイトにて11,000円(税込)の使用料がかかります。
詳しくは公式サイトの「学習の手引き」のページをお読みください。
受験料
3級:無料
2級:3,300円(税込)
1級:1科目につき6,600円(税込)
受験申込方法
無料による3級とそれ以外の2級・1級と分けてお伝えします。
3級
まず、試験申込メールアドレスの登録をします。
登録すると、メールアドレスに『与信管理試験及び練習問題のお申込手続きのご案内』と題したメールが送られてきます。
これには受験者情報を登録するサイトのURLが記載されていますので、そちらにアクセスして本登録を行います。
そこまで行うと、今度は『与信管理試験受験者登録及び練習問題受講者登録完了のお知らせ』と題したメールが送付されてきます。
それには、資格試験受験のためのログイン画面のURLと、ログインのためのIDとパスワードが記載されておりますので、ログイン画面にアクセスして、試験の申し込みを行いましょう。
ログインすると、受験者別マイページに移動します。
2級・1級
こちらも会員登録することから始まります。
そして、試験申込のためのメールアドレスを登録します。
あとは会場かリモートなのかの試験予約を行い、申し込みをします。
受験料の決済方法は、クレジットカード、コンビニエンスストア、ペイジー(銀行決済)から選びます。
まとめ
以上、与信管理の実務技能を認定する「ビジネス実務与信管理検定試験」をご紹介しました。
与信管理のことは、少しお分かりになりましたか。
お伝えしたように、受験者は与信管理部門で働く方が多いです。
また、営業職の方にも知識が重なるところがあります。
想定される受験対象者も書かれてありますから、該当する方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
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