有機溶剤作業主任者とは、閉鎖された空間の中で有機溶剤を使っての作業を安全に進めるために指導する責任者です。
有機溶剤とは、アルコールやベンゼン、ガソリンなどを指しますが、誤った使い方をしてしまうと、有毒ガスが発生して中毒を起こしてしまう可能性もあります。
そのため、工場などで大量に有機溶剤を取り扱う場合には、この責任者が必要になります。
こちらの資格は、2日間の講習を受けて取得します。
有機溶剤作業主任者の資格は労働安全衛生法で定められた国家資格ですが、比較的取りやすいといわれています。
では、どんな仕事に役立つのか、詳しくみていきましょう。
Contents
適用する仕事
まず、資格名にもなっている「有機溶剤」とは、有機化合物で作られている溶剤の総称を指します。
さまざまな物質を溶かすときに用いられる液体のことで、油や樹脂など水に溶けにくい物質を溶かす性質を持っています。
有機溶剤は自動車の塗装など塗装業や、医薬品・農薬・甘味料などの製造など幅広く活用されています。
そのような幅広く使われている有機溶剤ですが、危険な面もあります。
こうした溶剤は一定温度であれば液体のままですが、常温では揮発性が高いため蒸発しやすくなります。
もし、蒸気となって口から体内に吸い込んでしまったら、体調不良を起こしてしまいます。
それに、油や樹脂など水に溶けにくい物質を溶かす性質も持っているため、口からでなく、皮膚からも吸収してしまう可能性もあります。
有機溶剤は使い方を誤ると、事故につながりかねないのです。
そうした事故を起こさないために選任して置かれるのが「有機溶剤作業主任者」です。
有機溶剤作業主任者に任せられる仕事内容
有機溶剤作業主任者として選任された方は、労働者が安全に作業できるように指揮をとるのが役目です。
具体的には下記のような業務を行います。
- 有機溶剤を使用する労働者が、有機溶剤を吸引したり、さらされないようにしたりして指揮をとる
- 局所排気装置や、プッシュプル換気装置、全体換気装置を1ヶ月以内ごとに点検する
- 保護具の使用状況を監視して、全員が正しく保護具を使用するように指示をとる
- タンク内における作業において、有機溶剤中毒防止措置が講じられているか確認する
この資格を活かせる仕事として、自動車整備士や塗装工、化学工場の作業員などが挙げられます。
他にも、有機溶剤は医薬品・農薬・甘味料などの製造などにも使われることから、そうした製造現場や印刷会社、クリーニング店でも活かせるでしょう。
危険物取扱者との違い
危険物取扱者と有機溶剤作業主任者の資格は、区別して考えなければなりません。
有機溶剤作業主任者の仕事は、あくまで有機溶剤を安全に取り扱うための指導や監督です。
有機溶剤とは有機化合物で作られている溶剤の総称を指しているため、実際には数多くの種類があります。
そのなかには危険物に指定されているものもあるため、そうした溶剤を一定数以上保管するのには危険物取扱者の資格が必要なのです。
有機溶剤作業主任者では、この「保管の仕事」はできません。
また、有機溶剤以外の危険物を取り扱ったり、使用者を監督したりすることもできません。
一方、反対に危険物取扱者が有機溶剤を安全に使うための指導は行えません。
このように、2つの資格は似ているようで、使える範囲が異なります。
もし、危険物の保管や取り扱いと、有機溶剤を安全に使うための作業や監督の両方を行いたいという場合は、2種類の資格を取得する必要があります。
そうすれば、資格の権限の範囲を気にすることもありませんし、採用する企業にとっても欲しいと思われる人材になるでしょう。
おおよその年収とキャリアパス
【適用する仕事】でもお伝えしたように、有機溶剤作業主任者の資格はさまざまな業界で活躍できるため、平均の年収データというのは分かりません。
仮に、具体的な数値を挙げても300万~650万程度と幅があります。
なぜなら、立場によって年収が異なるからです。
現場作業員の場合は300万円程度ですが、工場の研究員や人材管理の職種につくと大幅に年収が上がります。
しかし、具体的な年収が分からなくとも、有機溶剤作業主任者の資格があれば給料面で優遇される可能性はあります。
仕事内容によっては、有機溶剤作業主任者の資格が必須と定められているところもあるため、資格を持っていれば責任者の立場になることができるからです。
言い換えれば、資格があれば、就職・転職のチャンスが広がりやすいです。
この資格は有機溶剤に関する一定の知識があることを示すことができるし、有機溶剤はさまざまな分野で使用されているため、将来的にも需要が安定している資格といえるでしょう。
認可団体
厚生労働省
受験条件
有機溶剤作業主任者の資格は講習を受けることで取得します。
受講条件は特になく、18歳以上であれば誰でも受けることができます。
合格率
合格率は95%以上です。
国家資格といえども、講義のときにずっと寝ていたり、スマホをいじっていたり、テストを白紙で出したりしない限りは合格するので、とても易しいです。
たとえ不合格になっても再受講できます。
1年当たりの試験実施回数
講習は地域によって、日程が異なります。
ですが、月1回ペースで実施されているところが多いので、1年の間に何度も受講するチャンスがありますよ。
試験科目
- 健康障害およびその予防措置に関する知識(4時間)
- 保護具に関する知識(2時間)
- 作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
- 関係法令(2時間)
講習は2日間かけて実施します。
講習の後、1時間の修了試験が行われます。
採点方式と合格基準
全科目の所定時間を修了し、かつ修了試験に合格した方に修了証が交付されます。
試験の合格基準は、各科目の得点率40%以上、そして全科目の合計得点が全体の60%以上です。
2日間の講習をしっかりと受講して勉強すれば、充分試験に合格できますよ。
取得に必要な勉強などの費用
勉強するための費用は特にありません。
有機溶剤作業主任者の取得に使うテキストは講習でもらえます。
試験問題も講師がどの部分がポイントなのか教えてくれますので、そこさえ押さえておけば修了試験は受かります。
講習で使用するテキストだけで十分合格できるため、わざわざ市販のテキストを購入する必要はありません。
受講料は次の項目でお伝えします。
受験料
一例として、関東地方の講習機関の料金を調べてみました。
料金はすべて税込価格です。
・東京都:13,490円(受講料11,510円+テキスト代1,980円)
・神奈川県:13,450円(受講料11,470円+テキスト代1,980円)
・千葉県:14,080円(受講料12,100円+テキスト代1,980円)
・群馬県:15,730円(受講料13,750円+テキスト代1,980円)
・栃木県:14,080円(受講料12,100円+テキスト代1,980円)
・茨城県:12,980円(受講料11,000円+テキスト代1,980円)
受験申込方法
講習を受けたい機関のホームページをご覧いただくと、開催日程や申込書が載っています。
各講習場所での申込方法に沿って申し込みましょう。
まとめ
有機溶剤作業主任者とは、有機化合物で作られている溶剤を扱うときに、事故が起こらないよう指揮をとる責任者のことです。
この有機溶剤というのは、たくさんの種類があります。
こちらでは、危険物取扱者の資格と比べながら解説しました。
有機溶剤作業主任者の資格は国家資格ですが、取得は講習を2日間受けるだけで合格できます。
修了試験もありますが、易しいです。
もし、この資格に適用する仕事に該当していたら、取得を目指してみてはいかがでしょうか。
現場は有機溶剤による事故が起こらないために、有機溶剤作業主任者の資格保持者を選任して置かなければなりません。
資格を取得して責任者に就けば、給料や待遇も変わってきますよ。
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