皆さん、保健師という職業をご存じでしょうか。
保健師というと、地域の保健所や市役所にいそうな職業ですよね。
実際の保健師も、地域に住む住民の保健指導や健康管理、乳幼児検診などを行うことが主な仕事です。
けれども、保健師の働く場所はそこだけではありません。
医療の現場では、いろいろな職業があります。
では、保健師はどんな仕事をする人なのでしょうか。
試験内容と併せてみていきます。
Contents
適用する仕事
保健師試験を受けて合格したとき、適用する仕事は保健師です。
ただし、保健師になるには、保健師試験だけではなれず、看護師の資格も取得しなければなりません。
その理由は「保健師助産師看護師法」という法律が関係しています。
この法が制定されるまでは、それぞれが独立した仕事として機能していました。
それが3種の職業を統合したのは、各職種には「看護」の知識が不可欠と考えられたからなのです。
その背景が改正にも反映されて、保健師や助産師は看護師資格がないとなれない職種だと明示されました。
こうしたことが、保健師も看護師資格を取得しなければならない理由なのです。
そうした背景がある保健師の資格ですが、保健師は働く場所によっていくつかの種類に分けられます。
それによって、仕事内容も変わってきます。
行政保健師
こちらは各地域に行政が設置する保健所や保健センターなどに、勤務する保健師のことです。
こちらの保健師は公務員として採用されるため、大変人気があります。
- 地域の健康促進や保健指導
- 疾病予防対策
- 医療や福祉の相談支援
- 乳幼児健診や予防接種のサポート
- 障害者や要介護者の生活支援
- 地域の保健関連施策の企画や立案
産業保健師
こちらは企業に従業員として勤務し、その企業の社員の健康管理や適正な労働環境の管理を行う保健師です。
企業には産業カウンセラーを配置しているところもあります。
ですが、産業保健師は保健師の国家資格を持った産業保健の専門家に対して、産業カウンセラーは民間資格で心理的手法を用いてメンタルヘルスへの支援をするのが主な仕事です。
- 従業員の定期健診
- 従業員の健康管理や相談
- 生活習慣病予防対策
- 従業員のメンタルヘルスケア
学校保健師
こちらは学校(主に私立学校)に通う生徒や教職員の健康管理や健康維持を行う保健師です。
しかし、「保健室の先生」である養護教諭とは異なります。
養護教諭の専門は、あくまで「教育」であるのに対して、学校保健師は端に予防医療を行うのみの範囲です。
学校保健師は法律で規定された職種ではありませんので、あくまで「学校に勤務する保健師」としてのポジションです。
- 病気やケガの応急処置
- 児童や生徒、教職員の健康管理や相談
- 生徒同士のいじめや、教職員によるパワハラなどへのメンタルヘルスケア
- 救急用品の準備や点検
病院保健師
こちらは病院・診療所・訪問看護ステーションなどの医療機関に勤務して、患者や病院関係者をケアする保健師です。
医療機関には看護師もいますが、患者の病気の治療に関する業務を中心に行うのが看護師の役割です。
それに対して、病院保健師は病院に勤務している職員を含めた人たちの、病気の予防が中心業務となります。
- 健康診断の実施
- 病気予防のアドバイスや指導
- 予防接種のサポート
- 患者や職員の健康管理、生活指導
- 伝染病の対策室の運営
おおよその年収とキャリアパス
保健師の平均年収は481万円です。
2023年の最新のデータによりますと、日本全体の平均年収は445万円ですので、それよりは高い傾向にあります。
勤務先別の年収
前項目で保健師を4つに分類しましたが、勤務先別ではどのくらいの年収になるのでしょうか。
保健師の種類 | 年収 |
行政保健師 | 国家公務員は約584.3万円、地方公務員は約635.3万円 |
産業保健師 | 500万~600万円 |
学校保健師 | 400万~500万円 |
病院保健師 | 400万~500万円 |
キャリアパス
保健師試験に合格して資格を取得すると、保健師として働けます。キャリアパスはいくつかあります。
行政保健師の場合 | 公務員となるため、公務員試験を受験する。 |
産業保健師の場合 | 転職サイトや就職情報サイトなどに掲載される情報をチェックして就職。その後はその企業の制度に沿ってキャリアアップする。 |
学校保健師の場合 | 各学校のウェブサイトや求人サイトをチェックして就職。養護教諭の資格を取る道もアリ。 |
病院保健師の場合 | 医療系求人サイトから求職する。看護師としての業務をすることも少なくない。 |
認可団体
厚生労働省
受験条件
【適用する仕事】でも触れましたが、保健師になるには「看護師資格」と「保健師資格」の2つを取得しなければなりません。
資格取得の方法は主に2種類が挙げられます。
看護大学や統合カリキュラムの場合
保健師養成課程と看護師養成課程の統合カリキュラムを採用している大学や4年生専門学校の場合は、卒業と同時に保健師と看護師の両方の国家試験を受験することができます。
看護系の短期大学や看護学校などの場合
看護学系の3年制短大や3年制の看護学校や養成所の場合は、まず卒業後に看護師資格を取ります。
その後、保健師の養成学校(1年制)に入ったり、保健師コースがある4年制の大学に3年次より編入(2年間)したりして、保健師試験の受験資格を目指します。
合格率
令和5年:93.7%
令和4年:89.3%
令和3年:94.3%
学校の勉強をしっかり習得すれば、受かる試験でしょう。
1年当たりの試験実施回数
年1回、毎年2月中旬に実施されます。
試験科目
- 公衆衛生看護学
- 疫学
- 保健統計学
- 保健医療福祉行政論
採点方式と合格基準
保健師の国家試験では、一般問題と状況設定問題が出題されます。
一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点として計算します。
令和5年の試験では一般問題が74点満点、状況設定問題が70点満点でした。
合格基準では60%以上の得点が必要です。
合格点は毎年変わります。
令和5年の試験では144点中87点以上でした。
取得に必要な勉強などの費用
まず、すでに看護師の資格を持っている人は1年保健師養成校に通えば、保健師試験を受験できます。
保健師養成校に1年通う場合は、100万~200万程度の学費がかかります。
一方、看護師資格が無い場合は、保健師試験を受けるまで最短で4年かかります。
詳しくは【受験条件】の解説をご覧ください。
4年制の大学や専門学校の場合
大学(公立):約250万円
大学(私立):約450万~700万円
専門学校(公立):約60万円
専門学校(私立):約250万円
3年制の短期大学や専門学校からの場合
- 短大3年+大学編入2年の計5年の学費は520万~850万円
- 短大卒業後に保健師養成学校へ通う場合は、合計で500万~600万円
- 専門学校から大学編入まですべて公立の場合は、200万円
- 専門学校から大学編入まですべて私立の場合は、400万~600万円
- 専門学校から保健師養成学校へ行く場合は、160万~450万円
受験料
5,400円
ただし、受験料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼って納付します。
この場合、収入印紙は消印しないようにします。
受験申込方法
受験を申し込むには、いろいろ用意するものがあります。
受験願書を入手する
受験願書を含め、受験手続に必要な書類は各学校養成所で入手できます。
その他には、保健師国家試験運営本部事務所、もしくは保健師国家試験運営臨時事務所、または厚生労働省からも手に入れられます。
その場合は窓口か郵送によって請求できます。
提出する書類
すべての受験者が提出するもの
- 受験願書
- 写真(出願前6ヶ月以内に脱帽・正面から撮影した縦6cm、横4cmのもの。裏面に撮影年月日と氏名を記載する)
- 返信用封筒(縦23.5cm、横12cmのもので、表面に郵便番号、宛先、宛名を記載する。529円(定形郵便94円+一般書留435円)の郵便切手を貼り付けて、書留の表示をする)
その他
まず「保健師助産師看護師法第2条」に規定する業務に関する外国の学校や養成所を卒業したり、外国において保健師免許に相当する免許を受けたりした人は、保健師国家試験受験資格認定書の写しが必要です。
その他の人は、まず修業判定証明書か卒業判定証明書か卒業見込証明書のどれかが必要になります。
そして、以下の書類からいずれか1点を提出します。
- 看護師国家試験の合格証書の写し、または合格証明書
- 看護師免許証の写し
- 看修業証明書、看修業判定証明書、看修業見込証明書、看卒業証明書、看卒業見込証明書のいずれか1つ
- 看護師国家試験受験資格認定書の写し
提出の仕方
受験に関する書類を郵送する場合は、書留郵便で送ります。
郵送する際の提出先は「保健師国家試験運営本部事務所」です。
この他の受験申込方法に関しては、厚生労働省の保健師試験のページをご覧ください。
まとめ
今回は保健師の仕事とその試験内容をお伝えしました。
保健師は看護師より、上位資格だったのです。
保健師の資格を取得するには、看護師の資格も取得しなければなりません。
取得する方法は2つあります。
1つは、保健師養成課程と看護師養成課程の統合カリキュラムを修了する方法、もう1つは先に看護師の資格を取得する方法です。
- 前者は短期間で取得できるのがメリットなものの、受験のときに保健師と看護師の両方の試験対策をしておかなければならないのが大変なところです。
- 後者は看護師の後に段階的に保健師の資格を取得する方法なので、保健師資格を得るために何年も費やさなければならないのがデメリットでしょう。
どちらの方法としても、保健師という資格は看護師よりも取得が大変ということが分かりました。
それでも保健師の活躍する場はとても多いです。
これからの時代でも健康問題に対しては、医師や看護師だけでなく、保健師も広く関わることとなるでしょう。
保健師になりたい方はもちろん、すでに看護師の資格を持っている人も保健師の資格を目指してみるのはいかがでしょうか。
関連する記事はこちら
精神対話士(メンタルケアスペシャリスト)について