4話『これ、彼女のとか?』
イベントが2週間後ということで、それまでに完成させなければならないと思い込み、初めての衣装づくりなのに終わるのかと不安になる新菜。
もし間に合わなかったら楽しみにしている海夢を失望させてしまうため、帰ってすぐ取りかかろうと段取りを考えます。
帰宅した新菜を祖父が迎えます。「友達と買い物に行ってきた。」と言うと、祖父はとても喜びます。何を買ってきたのか尋ねると、紙袋からレースのストッキングが出てきたため驚きのあまり腰を抜かし、祖父は転倒してしまうのでした。
夜ですが二人は病院に向かいます。
幸いなことに大事には至らず、湿布を貼ってもらってその日のうちに帰してもらいました。
しかし、2週間安静ということで、祖父はしばらく新菜の叔父さんの家でお世話になることに。その日は新菜も叔父さんの家で寝ることになりました。
祖父の着替えと筆を届けるため、新菜は1日学校を休みました。
翌日、学校に復帰し、買い物に行ってきた後の出来事について、海夢に話します。海夢は心配し、手伝えることがあれば手伝うと申し出ますが、新菜は頼ることが苦手なため断ります。何かあった時のために二人は連絡先を交換します。
祖父の一件があって、買い物の後すぐに衣装作りに取り掛かる予定だったのにできていない新菜。それに加えて中間テストも控えており、テスト勉強と祖父の見舞いの合間を縫って衣装づくりをしなければなりません。
かなり焦り、精神的に追い詰められますが、日程に余裕がないことを海夢に相談することはせず、一人で抱え込んでしまいます。
そうしてなんとか勉強と見舞いと衣装作りをこなしていきつつも、寝不足な日々が続きます。毎日学校が終わると、即帰宅する新菜を海夢は気に掛けますが、声をかけ損ねます。
中間テスト最終日の夜、心配した海夢は牛丼を買って新菜の家に向かいますが、新菜の家には明かりが点いていません。叔父さんのうちでゆっくりしているのだと思い、インターホンを押さずに帰ってしまいました。
実は新菜は家にいて、自室で横になっていたのです。
連日の寝不足で体調が最悪な新菜。なにも手に付けることができないでいます。
「衣装全然できてない」
「それを知ったら喜多川さんは悲しむだろうな」
「人形づくりが何日も手付かずで、練習を怠って頭師になれなかったらどうしよう」
「向いてないのかもしれない」
布団に横になり、頭に浮かぶことはネガティブなことばかり。
一人静かに涙を流します。
そんな時、むかし祖父に、毎日人形づくりをすることは大変ではないのかと尋ねたことを思い出します。
「大変だけど、好きだからこそ踏ん張れる。」
「お客さんの笑った顔を見るとやってよかったと思う。」
その言葉を思い出すと共に、海夢の言葉や笑った顔が重なります。
なんとか起き上がり、衣装作りに取りかかります。
ふとした瞬間泣きそうになりますが、それでもこらえます。
明け方。衣装が完成し、海夢に「出来ました」とメッセージを送り、ようやく就寝します。
メッセージを読んだ海夢は、新菜の家に駆け付け、本当に衣装が出来上がっていることを確認し、驚きを隠すことができません。
翌日のイベントに海夢が参加すると思っていた新菜は「ギリギリで間に合った」と言いますが、海夢はイベントは割といつでもやっていて、「五条君が衣装完成させるまで全然待つつもりだったっていうか…。」と返します。
それを聞いてへたりこむ新菜。怒らせたと思って海夢は謝ります。
しかし、「良かった。余裕あったんですね。」と新菜は安心しきったようにふにゃっと笑いますが、目には酷いクマ。
新菜がそんな大変な日々を送っているとは知らず、気づかずにいたことに申し訳なさが込み上げてしまい、海夢は声をあげて泣きじゃくります。
しばらくして海夢が泣き止んだタイミングで新菜は「袖、通してみませんか」「せっかくなのでウィッグと化粧もしてみましょう」と提案します。
「喜んでもらえたらそれで良かったですが、嬉しくなかったですか?」
「嬉しいに決まってんじゃん。」
そうして出来上がった衣装を試着することになりました。
二人でメイクの研究をしていると、新菜がつけまつげを持っていることが発覚。
自分につけることはないだろうということで、「これ、彼女のとか?」と尋ねます。
新菜が持っていたつけまつげは、彼女のものではなく(彼女いない)、雛人形用。
現代の雛人形は口紅の色や髪の色もさまざまなんだそう。
「一目見て自分が作ったとわかるような雛人形が作れるようになれたらな。」と、ぽろっと夢を口にします。
「なれるよ。」
「え?」
「五条くんなら絶対なれる。」
新菜の目をまっすぐ見つめ、海夢は言い切ります。
嬉しくて笑う新菜をみて、「そんなふうに笑うんだね」と海夢も嬉しそう。
着替えて、メイクをして、ウィッグをかぶり、自信なさげに「雫たんになれてる?」と尋ねる海夢。
目の前の海夢は普段とガラッと雰囲気が変わり、コスプレの完成度もかなり高め。新菜のテンションは一気に高くなります。
「喜多川さんは立派な雫たんです!!!」
二人は嬉しそうに笑いあいます。
ここで4話は終わります。
みどころ
4話は一言でいえばシリアス回。新菜が追い詰められても相談できず、一人で抱え込んでしまう描写はかなり細かく、共感したり本気で心配になる人も多いのでは。その大変な時期があっただけに、衣装が完成し、二人でその完成度の高さに喜ぶシーンの喜びがより大きいものとなります。
5話『この中で一番いい乳袋だからじゃん?』
前回の試着の場面の続きから始まります。
腕があまり上がらない以外はスカートの丈感も海夢こだわりの乳袋も絶賛。
「五条くん神~」と嬉しがる海夢は写真を撮ってほしいと新菜にお願いします。
雫たんに寄せようと思ってもうれしい気持ちが勝ってしまい、どうしても笑ってしまいます。
しかし、海夢は読者モデルの仕事をしており、一般人よりは写真を撮られ慣れています。
雫たんのスイッチが入った海夢を新菜は変態カメラマンのごとく撮りまくります。
ふと我に返り申し訳なさそうにする新菜ですが、まったく気にしていない様子の海夢。
いつもの行動力を発揮し、その場でSNSのアカウントをつくり、投稿します。
そして極めつけに、「明日のコスイベ行っちゃおっか」と提案。二人はコスプレイベントに参加することに。
翌日。
会場着くとそこには、自分の好きなキャラクターのコスプレをしたコスプレイヤーがたくさん参加しています。
テンションが上がる海夢とは裏腹に女性だらけで肩身が狭く、視線も気になる新菜。
落ち着かない様子の新菜に配慮し、二人はカメラマンや男の人もいる広場に行くことに。
するとさっそく、撮影いいですか、と声かけられます。
新菜は少し離れた場所で撮影を見守っていると、いつのまにか海夢に列ができていました。
男装も女装も自由に楽しむ人の中で、「喜多川さんも楽しそうで良かった」と安心する新菜ですが、海夢とこうして過ごすのは今日で終わりなんだと思い、切なくなります。
今まで友達がいなかったので、放課後に寄り道したり、休みの日に会ったりして過ごすのは初めてでした。
「嘘みたいだな」「楽しかったな」と思い出にふけってぼーっとしながら海夢をながめていると、ふと海夢が新菜のほうを見て、雫たんの笑顔ではなく素の笑顔で笑いかけます。
ドキッとする新菜。
海夢はそのまま走って寄って来ます。
何を言われるのか、少し期待して見つめていると、
「あのね、あたし、服脱げそう!!」
と言うのでした。
予想外の発言に、慌てながらどこが脱げそうなのか尋ねると、胸が苦しいと答えます。
実は前日の夜、撮った写真を見返した時に本人はもっと胸が大きいことに気づき、ヌーブラを2枚重ねて来たのだそう。
それに加え、ウィッグも蒸れて、服自体も重厚感のある生地をあえて選んだため、炎天下では暑さに耐えられないのでした。着心地などにまで配慮ができなかったことに対し、新菜は責任を感じます。
急いで涼しい場所に行き、体を冷やしたり、服の苦しい部分を縫ったりと、応急処置を施します。服をはだけている海夢に狼狽えてしまう新菜ですが、そんな場合ではないと必死に自分に喝を入れます。
海夢が回復し、さっき撮影していた広場に戻ります。撮影が途中になってしまっていた人がいたので、最後にその人にだけ撮影をお願いして、会場を後にしました。
帰りの電車。空いた車内で隣同士に座る二人。
「いい経験になりました。」「楽しかったです。」
「私も超楽しかったよ。」
「次のコス、何しようか?」
もう関わることがなくなってしまうと思っていた新菜は、海夢の一言に驚きます。
「次があるんですか?」
「当然じゃん!あたし、一番好きなキャラ50人はいるから!」
とコスプレを続ける気満々の海夢に、こころなしか嬉しそうな新菜。
「不束者ですが、これからもよろしくお願いします。」
二人はまた約束を交わしました。
そうして寝不足続きの新菜はうとうとし始めます。
海夢はその横でスプレイベントの感想を熱く語ります。
新菜は寝ぼけながらに一言、「喜多川さん、とても綺麗でした。」と感想を残し、本格的に寝落ちます。
心から思った時ではないと言えないと言っていたのを覚えていた海夢は、新菜から「きれい」と言われて、戸惑い、顔を真っ赤にするのでした。
5話はここで終わります。
みどころ
「服脱げそう!!」の直前の、海夢が雫たんになりきっている表情から素の表情に切り替わって新菜のことをみて笑うところが、本当にイキイキして楽しそうなので、注目して見ていただきたいです。その海夢を見て、ドキドキしている新菜の表情も恋を予感して、みている側もきゅんとします。