臨床心理士試験は、文字通り臨床心理士になるために受験する試験です。
臨床心理士とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて心の問題に取り組む専門家のことです。
こちらは「日本臨床心理士資格認定協会」が認定する民間資格の部類ですが、医療や福祉、教育現場などでも公的に認められてきた実績のある資格です。
2023年4月1日の時点で、40,749名の「臨床心理士」が認定されています。
心理系の資格はいろいろありますが、こちらはどのような特徴を持っているのか調べました。
ぜひ、ご覧ください。
Contents
適用する仕事
臨床心理士試験に合格して適用する仕事は、試験名のとおり「臨床心理士」です。
臨床心理士は心の問題を抱えた人の話に耳を傾け、解決に導いていく心理学の専門家のことです。
臨床心理的技法を用いて、問題解決するためのサポートをします。
臨床心理士の仕事内容をお伝えしていきます。
1.臨床心理査定
これは面接や行動観察、心理テストなどを用いて、クライエント(相談者)の問題を明らかにすることです。
そうした心理検査を行うことで、相手の特性や問題の状況、課題を明らかにします。
そうして援助の方向性を決めます。
場合によっては、他の専門家とも検討を行います。
2.臨床心理面接
こちらはさまざまな臨床心理学的技法を用いて、クライエントの心をサポートする業務です。
別名「心理カウンセリング」とも呼ばれます。
カウンセリングと聞くと「ただ話を聴く」だけに見えますが、クライエントが自分の心の状態を理解し、自尊感情を取り戻して自己治癒できるように進められます。
臨床心理士の活動の中心ともいえる業務で、れっきとした専門行為なのです。
臨床心理学的技法というのは、いろいろあります。
3.臨床心理的地域援助
これはクライエント個人のみを支援するだけでなく、医療機関や司法機関、行政、学校などと連携しながら地域社会への介入をする業務のことです。
具体的には、地域住民や学校・企業に属する方々の相談に乗ったり、事故や事件の被害者の精神的なケアを行なったりします。
4.調査と研究活動
これは心の問題への援助を行なっていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするための業務です。
例えば、現場で対応した事例を取り上げて、クライエントの心の問題がどのように形成されて、どのように援助したのか内容を検証します。
おおよその年収とキャリアパス
臨床心理士が活躍できる分野は、医療や保健をはじめ、教育、福祉、産業や労働、大学や研究所、司法や警察など幅広くあります。
試験に合格したら
試験に合格した後から説明すると、ただ合格しただけでは臨床心理士にはなれません。
合格通知を受け取ってから、期限以内に認定証書の交付手続きを完了させなければなりません。
この登録が完了すると、資格認定協会から認定証書と顔写真つきのIDカードが送られてきます。
それらには本人の臨床心理士登録番号が記載されていますから、そこでようやく臨床心理士になったといえるのです。
登録には5万円の費用がかかります。
年収やキャリアパス
臨床心理士の平均年収は350万~400万円台です。
上記で活躍できる分野を挙げましたが、それでも平均年収が高くないのは正規雇用従業員の求人が少ないからです。
つまり、非正規雇用従業員やパートタイム従業員で働いている人が多いので、このような平均年収なのです。
いずれは正規雇用を目標にしながら、経験を積んでいる人もいます。
また、年収が低い理由として、医療・教育・福祉・大学・司法などの領域は採用がすぐに満員になるケースが多いからです。
国家公務員や地方公務員として働く臨床心理士もいますが、一般企業での採用はあまりないので、複数の就業先で掛け持ちして働かなければならない人もいます。
臨床心理士はやりがいのあるお仕事ですが、資格を持っている人が供給過多になっているところもあります。
将来性としては、2017年9月15日に公認心理師という国家資格が誕生しましたので、そちらの資格も取ってダブルで活かす方法もあります。
他には、稀ですが、独立して自分のクリニックや相談室を開業する人もいます。
しかし、経営するのは容易ではありません。
一般的には、資格取得から最低でも10年ほど経験を積んでからでないと難しいでしょう。
認可団体
認可団体は「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」です。
1988年に、16の臨床心理学に関連する心理学関係学会の協賛を得て発足しました。
〒113-0034
東京都文京区湯島1-10-5 湯島D&Aビル3階
TEL:03-3817-0020
受験条件
あらかじめ、臨床心理士養成に関する指定大学院または専門職大学院を修了していること。
- 指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を満たしている者
- 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
- 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後に日本国内で心理臨床経験が2年以上ある者
- 医師免許取得者で、取得後に心理臨床経験2年以上を有する者
など
合格率
2022年:64.8%
2021年:65.4%
2020年:64.2%
1年当たりの試験実施回数
年に1回行われています。
10月が筆記試験、合格者のみ11月に口述試験があります。
試験科目
筆記試験において、多肢選択方式試験と論文記述試験の2種類が行われます。
多肢選択方式試験
内容は、広く心理学の基礎的設問に加えて、臨床心理士の基本業務である4種の内容(臨床心理査定・臨床心理面接・臨床心理的地域援助・それらの研究調査)に関する基礎的・基本的な専門知識が問われます。
また、臨床心理士に関する倫理・法律などの基礎知識や、基本的な姿勢や態度にかかわる設問も出題されます。
臨床心理士として、最低限理解しなければならない専門基礎知識が中心でしょう。
論文記述試験
心理臨床に関するテーマを1題
採点方式と合格基準
- 多肢選択方式試験はマークシート形式で100題出されます。
- 論文記述試験は、所定の解答用紙に1,001字以上1,200字以内の範囲内で論述記載します。
- 口述試験は2名の面接委員によって、受験者を個別に時間指定して実施されます。単に専門知識や技術の習得度を確認するだけでなく、臨床心理士としての基本的な姿勢や態度、専門家として最低限備えておくべき人間関係能力が問われます。
合格基準は非公開です。
国家資格のように、合格のための明確な基準点が公開されていないからです。
しかし、最終的な合格は上記の3種類の試験方式の結果を総合的に判定して、決定されます。
取得に必要な勉強などの費用
【受験条件】の項目で挙げましたが、受験を受けるには大学院や専門職大学院を修了することが必須です。
国公立の大学院では、入学金28万2000円、授業料53万5800円(年間)としているところが多いです。
一方、私立の大学院では、入学金は15~20万円程度が相場で、授業料は年額50~70万円あたりが中心です。
それに加えて、その他として、数万円~10万円台程度の施設費などが別途必要になるでしょう。
しかし、私立の大学院での学費は学校ごとに異なります。
もし、学費を安く抑えたいのであれば、通信制課程を持つ臨床心理士指定大学院を活用する手もあります。
受験料
申請書類を請求するための料金:1部1,500円
資格審査料:30,000円
受験申込方法
受験するには申請書類が要ります。
書類は所定の期間内に、認可団体である「日本臨床心理士資格認定協会」に請求します。
請求方法は郵便局に備え付けられている振込用紙を使って、氏名、住所(送付先)、そして、通信欄に「申請書類希望(2部以上必要とする場合は、部数を記入)」と明記して、下記の口座に送金します。
- 郵便振替口座番号:00130-1-362959
- 加入者名:(公財)日本臨床心理士資格認定協会
受験に必要な申請書類の提出と、審査料の納付が完了したら、協会側で受験資格の確認をします。
それが済んだら、「臨床心理士資格審査受験票」が本人あてに送付されます。
まとめ
今回は心理系の資格の1つである「臨床心理士試験」を取り上げました。
年々、認知度が上がっている職業ですが、この資格は民間資格です。
受験するには、大学院や専門職大学院を修了することが必須です。
学費がすごくかかると思いますが、この資格は心理系の資格の中でも信頼度がもっとも高いです。
就職において、他の民間のカウンセラー資格より優遇されます。
それに、ニーズもあるため、働き口も増加しています。
【年収やキャリアパス】での現実に驚いた方も多いかと思いますが、女性の場合は結婚や、出産を機に仕事を辞めた方でも再就職が可能な職種です。
心理関係の職に就きたい方は、信頼度の高い資格の臨床心理士を目指してみてはいかがでしょうか。
関連する記事はこちら
産業カウンセラーについて
など