特別支援学校教諭について

特別支援学校教諭について

特別支援学校教諭とは、2007年まであった養護学校教諭、盲学校教諭、ろう学校教諭を一本化したものです。
その特別支援学校教諭について、まとめさせて頂きました。

適用する仕事

特別支援学校では、幼稚園、小学校中学校高等学校準じた教育を行っています。

一般の学校で行われている授業を、障がいのある子どもたちの身につくように、工夫をして授業がおこなわれています。

特別支援学校の支援対象となる障がいには、次のような障がいがあります。

教室

視覚障害

両眼の視力がおおむね0.3未満の場合。
視力以外の視機能障害が高度の方のうち、拡大鏡などを使用しても、通常の文字や図形などの視覚による認識が不可能であるか、著しく困難な方。

視能訓練士試験について

聴覚障害

両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上の方のうち、補聴器などを使用しても通常の話し声を解することが不可能であるか、著しく困難な程度の方。

知的障害

知的発達の遅滞があって、他人との意思疎通が困難で日常生活をするのに頻繁に援助を要する方。
社会生活への適応が著しく困難な方。

肢体不自由

肢体不自由の状態が補装具を使用しても、歩行や筆記などの日常生活における基本的な動作が不可能であるか、困難な程度の方。
常時の医的観察指導を必要とする方。

病弱

慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患、神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が、継続して医療または生活規制を必要とする程度の方。
身体病弱の状態が、継続して生活規則を必要とする程度の方。

 

特別支援学校教諭は、障がいのある生徒や児童の、それぞれに合った指導計画を立てて、必要な教材の用意などから始めます。
指導計画は、医師看護師、他の教諭などと連携しながら作成します。

そこから、各教科の授業を行います。
小学部と中学部では1クラスの生徒数は6人、高等部では1クラス8人を標準に、教育委員会が教員の配置を決定します。
ほとんどの学校は、1クラスに担任2人体制をとっています。

さらに、障がいを2つ以上併せ持つ児童(重度重複)の学級は、1クラスの児童数は3人です。
こちらでも、基本的には担任は2人つきます。

おおよその年収とキャリアパス

キャリアの道筋

2019年度の文部科学省の学校教員統計調査によると、全国の公立、国立、私立を含めた特別支援学校教員の平均給与の月額は33万5,600円でした。年収にすると約400万円です。

自治体によって、年収は変わってきます。東京都の場合の平均年収は約656万円です。
公立の特別支援学校に絞ったデータでも、平均給料月額は33万5,600円でした。

教諭から始まり、出世をすると学年主任になります。
学年主任になると、その先生が中心に学年チームをまとめていきます。
基本的には、学年の教諭の中で一番経歴のある先生が学年主任になることが多いですが、キャリアの浅い年配の先生が学年主任になる場合もあります。

学年主任になると、主任手当てがつくことがあります。
教育連絡指導手当といわれています。ただし、これは市区町村によっては廃止しているところもあります。

そこからさらに出世をすると、主幹教諭、指導教諭になります。
主幹教諭・指導教諭は、管理職と教諭の間の立場です。

  • 主幹教諭は、管理職の手助けをします。
    学校全体の関わる仕事をまとめる役目もあります。
    教諭や職員に対して、指導し、改善を促す立場となります。管理職の次の立ち位置です。
  • 指導教諭は、児童の教育に関わりながら、若手の教諭に対して教育指導や助言を行います。

認可団体

文部科学省

特別支援学校教諭の資格を管理しているのは、文部科学省です。

受験条件

特別支援学校教諭の免許状は、働かれる学校等(幼稚園、小学校、中学校、高等学校)の免許状を取得します。
そして、特別支援教育に関する必要単位を修得して卒業し、各都道府県教育委員会に授与申請を行うことが必要です。

1種免許状

学士の学位があり、幼稚園教諭、小学校、中学校、高等学校の普通免許状を取得した者で、特別支援学校のⅡ種免許、3年以上の実務経験があり、必要とされる6単位以上を大学で修得した者。

2種免許状

幼稚園教諭、小学校、中学校、高等学校の普通免許状を取得した者で、小学校、中学校、高等学校で3年以上の実務経験があり、必要とされる6単位以上を大学で修得した者。

専修免許状

修士の学位があり、幼稚園教諭、小学校、中学校、高等学校の普通免許状を取得した者で、特別支援学校のⅠ種免許、3年以上の実務経験があり、必要とされる15単位以上を大学院等で修得した者。

特別支援学校教諭の免許状がなくても、特別支援学校の採用試験の受験はできます。
ただし、採用後5年以内に特別支援学校教諭普通免許状の取得が必要です。

合格率

東京都(公立)の特別支援学校の教員採用試験の合格率は、次のようになっています。

令和5年:71.1%
令和4年:35.7%
令和3年:31.7%

1年当たりの試験実施回数

数字の1

試験は年に1回です。
ただし、県ごとに行われます。試験日が同じでなければ、他県との併願をすることはできます。
視覚障害教育、聴覚障害教育、言語障害教育、肢体不自由教育の4つに分かれていますが、毎年すべての種目の試験が行われているわけではありません。
試験は1次試験が8月、二次試験が10月前後に行われています。

試験科目

特別支援学校教諭の出題分野は、主に7つあります。

  • 特別支援教育の制度
  • 特別支援教育を支える仕組み
  • 教育課程・学習指導要領
  • 自立活動
  • 検査法・訓練法
  • 病理と教育の実際
  • 障害児教育の歴史

それぞれの分野をまとめさせて頂きます。

特別支援教育の制度

特別支援教育の制度では、次のことを押さえておかなくてはいけません。

  • 特別支援教育の理念
  • 特別支援学校の目的と設置義務
  • 就学指導
  • 特別支援教育の形態
  • 学級編制の基準
  • 使用される教科書

特別支援教育を支える仕組み

「障害者の権利に関する条約」は頻出です。「障害者の権利に関する条約」に関しては、締結までの流れや関連法規をおさえておきましょう。
また、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」も頻出です。確認しておいた方がいいと思います。

教育課程・学習指導要領

学習指導要領は、教育課程編成のときの基準です。出題頻度も高いので、詳細に理解しておく必要があります。
教員採用試験では、特別支援学校独自の部分がよく問われます。その部分である「自立活動」を押さえておきましょう。

まず、教育課程の編成と特例に関する法規を確認しておきましょう。
学習指導要領では、次のところを理解しておくのがいいです。

  • 教育の基本と教育課程の役割
  • 授業時数等の取扱い
  • 重複障害者等に関する教育課程の取扱い

自立活動

特別支援学校では、障がいのある児童生徒は障害による困難を抱えています。
学習上の困難や生活上の困難について、それを改善・克服するために独自の領域を設けています。
それが自立活動です。

自立を目指す子

検査法・訓練法

まずは、障がいの分類についてICFの概要を押さえましょう。
検査法については、原著書、適用年齢、検査方法の概要などを意識して、それぞれの検査法についてまとめておくと、わかりやすいです。

略称についても出題がありますので確認しておきましょう。
訓練法については、まずそれぞれの概要をまとめておいて、病理と教育の実際との関連もあるので、そこも理解しておきましょう。

病理と教育の実際

病理に関することは、障がいのある児童生徒の状態を理解して、指導に役立てていく上での基本的な知識となります。
最も出題が多い分野です。

障害種別ごとに、さらに専門的な知識まで問われることもあります。
自分の志望する自治体の出題傾向の把握は、必ずしたほうがいいです。
教育の実際に関しては、障がいの特性を踏まえた具体的な対応の手立てを問われることが多いです。
併せて理解が必要です。

障害児教育の歴史

  • 人物名とその業績
  • 年代と事項を結びつける

といった出題が多いです。
学習方法は、日本と西洋とに分けて、自分なりに年表や人物・業績の整理カードといったものを作って、繰り返し目を通すのがいいです。

その際に、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由といった分野ごとに整理していくと、効率よく覚えられます。
出題範囲はとても広いです。専門用語も多いので対策するのが難しいところです。

自治体による

選考方法は、自治体によって異なります。

  • 筆記試験のみ課されるところは、北海道、神奈川県、大阪府、岐阜県、福岡県などがあります。
  • 筆記試験と小論文なのは、東京都、愛知県、名古屋市、徳島県などがあります。
  • 筆記試験と面接なのが、千葉県、大阪市、兵庫県、静岡県、岡山県などがあります。

採点方式と合格基準

特別支援学教員資格認定試験は選択式問題なので、採点はそのまま正誤判定されます。
小論文や面接の合格基準は不明です。

教員採用試験の合格最低点は、決まっていません。
教員採用試験は、競争試験となるので相対評価になります。
何点以上取れば合格といった、資格試験とは異なります。

合格基準は、その年の問題の難しさや、応募者数によって変わってきます。さらに、面接や小論文などもあります。
それらを総合して合格者を決定するので、試験だけの合格基準ははっきりと示すことはできません。

基準

取得に必要な勉強などの費用

特別支援学校教諭免許状を取得するための学校には、大学と大学院、短大があります。
大学では「一種免許状」、短大では「二種免許状」、大学院修士課程では「専修免許状」が取得できます。

国立の大学の4年制学部の費用ですが、4年間通った場合は2,442,200円かかります。
私立の大学の場合は、学校にもよりますが4年間通った場合の学費は、私立文系でおおよそ350万円ほどかかる場合が多いです。
私立理系だと490万円ほどかかるところが多いです。

大学院へ行く場合の学費は、国立で約135万円、私立で約180万円が目安です。

2年制の短大へ行く場合の学費は、公立で約100万円、私立で約200万円の学費がかかります。
3年制の短大へ行く場合の学費は、公立でおおよそ140万円くらいかかります。私立で約300万円ほどかかります。

受験料

特別支援学校教員資格認定試験の受験料は、15,000円です。

15000円

受験申込方法

特別支援学校の教員免許申請方法は、条件によって分かれます。

  1. 教員経験が無く、幼、小、中、高のいずれかの免許を所持していて、大学で所定の単位を修得している場合。→免許法別表第1による申請
  2. 教員経験が無く、教員資格認定試験に合格している場合。→免許法第16条の2による申請
  3. 既に教員免許を取得していて、幼、小、中、高のいずれかの教員免許を取得後、教員経験が3年以上ある場合。→(2種免許の申請)免許法別表第7による申請
  4. 既に教員免許を取得していて、特別支援学校の教員免許取得後、特別支援学校での教員経験が3年以上ある場合。→(上級免許の申請)免許法別表第7による申請

まとめ

悩む子特別支援学校教諭は、基本的には特別支援学校教諭の免許状がないと試験を受けることができません。
学校の種類ごとの普通の教員免許に加えて、特別支援学校教員免許のどちらも必要になります。

ただ、自治体によっては特別支援学校教諭の免許がなくても、特別支援学校で働くことができます。
特別支援学校の支援対象となる障がいには、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱があります。
仕事を重ねていくと、教諭→学年主任→主幹教諭→指導教諭と立場が上がっていきます。

 

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