航空整備士の資格には、一等航空整備士、二等航空整備士、一等航空運航整備士、二等航空運航整備士、航空工場整備士があります。
航空整備士の仕事の内容は、飛行機やヘリコプターの整備や点検や、必要箇所の修理をすることです。
一等・二等航空整備士の資格は、飛行機、回転翼航空機(ヘリコプター)、滑空機など、それぞれが機種によって分けられています。
整備できる航空機は、資格として取得した種類の機体だけです。
さらに、等級や型式(ボーイング777、エアバスA-320型など)にも限定されています。
複数の種類の機体を整備する場合は、等級や型式ごとに試験に合格しなければなりません。
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適用する仕事
航空整備士の場合、仕事内容の主たるものは、以下の3つです。
ライン整備
ライン整備とは、空港内に駐機された航空機の整備や点検のことです。
この整備はそれぞれの空港の駐機場で行われます。
ライン整備に使える時間は、国際線でおよそ2時間、国内線では僅か45分から1時間ほどです。
限られた時間で点検と整備をしなければなりません。
異常があるときはすぐに気が付くことのできる、正確さと迅速さが求められます。
機体を整備することだけでなく、空の状況の把握をしておくため、操縦士や客室乗務員から情報収集することも仕事の一つです。
大型機のライン整備となると、その機種を扱える資格を有していなければなりません。
大型機のライン整備をするには、一等航空整備士か、一等航空運航整備士の資格が必要です。
また、航空日誌に確認のサインができるのは、一等航空整備士の主任クラスだけです。
ドック整備
ドック整備とは、空港にある航空機を格納庫内で保守整備や点検をすることです。これは定期的に行われます。
ドッグ整備のことを、定時整備や重整備ともいいます。
決められた飛行時間を経過した機体を、格納庫に収納して徹底的に行う整備です。
ここで不具合があれば、修理や部品交換を行います。航空機の安全性を保つためにメンテナンスをしていきます。
金属疲労しているかどうかを調べることができる非破壊検査や、機体の再塗装もここで実施します。
重整備に対応できる施設がないときは、国外の整備専門会社に委託することもあります。
通常は、小型機の整備をするのは、二等航空整備士です。
大型機の整備は、機種ごとの限定資格をもつ一等航空整備士が担当します。
ショップ整備
ショップ整備とは、航空機のエンジンや電装部品、油圧系統の部品を機体から取り外して精密チェックを行うことで、工場整備ともいいます。
部品はそれぞれ、分解されて徹底的に点検や整備が施されます。
飛行機は多くの人命を預かるので、装置の取り扱いはデリケートに行われます。
そして、次の整備までに考えられる、経年劣化も予測して手立てを考えます。
整備をする人に各装置の深い知識と技術力、経験が求められます。
おおよその年収とキャリアパス
航空整備士の年収の、おおよその平均は次のようになっています。
30代:400万円から500万円
40代:500万円から600万円
初任給は、月給で15万円ほどです。
認可団体
航空整備士は、国土交通省管轄の国家資格です。
受験条件
資格である航空整備士を受験するには、整備経験が必要です。
学校を卒業してから航空会社や航空整備会社で働いて、一定の整備の経験を積んでから受験するのが一般的です。
受験をするときに、それぞれ次の条件を満たしていなければなりません。
1等航空整備士
・飛行機
20歳以上。4年以上の整備実務経験(8.6t以下の飛行機か航空運送事業用飛行機の整備を6ヶ月以上含む)
・回転翼航空機
20歳以上。4年以上の整備実務経験(9.1t以下のヘリコプターか多発回転翼航空機の整備を6ヶ月以上含む)
2等航空整備士
・飛行機
19歳以上。3年以上の整備実務経験(飛行機の整備経験6ヶ月以上含む)
・回転翼航空機
19歳以上。3年以上の整備実務経験(回転翼航空機の整備6ヶ月以上含む)
・滑空機
19歳以上。3年以上の整備実務経験(滑空機の整備6ヶ月以上含む)
国土交通大臣指定航空従事者養成施設では、二等航空運航整備士と一等航空運航整備士、さらに二等航空整備士は、在学中の取得を目指せます。
一方、航空機整備訓練課程を設けている学校では、教育を修了すると資格要件の一つである、整備経験が一部認められます。
合格率
はっきりしたデータはありませんが、航空整備士の試験の全国平均合格率はおおよそ20%くらいです。
受験条件にありますので、受験者は全て航空整備経験者です。
2年以上の経験者であるのに、合格できるのが5人に1人であると考えると難しい資格です。
1年当たりの試験実施回数
航空整備士の学科試験は、年に3回です。
3月、7月、11月に試験が行われています。
試験科目
試験には、学科試験と実地試験があります。
1等航空整備士(回転翼)
学科試験
航空法規:20問:40分
機体に関する事:25問:90分
タービン発動機に関する事:25問:90分
電子装備品等に関する事:25問:90分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
1等航空整備士(飛行機)
学科試験
航空法規:20問:40分
機体に関する事:25問:90分
タービン発動機に関する事:25問:90分
電子装備品等に関する事:25問:90分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
2等航空整備士(回転翼)
学科試験
航空法規:20問:40分
機体に関する事:20問:60分
タービン発動機に関する事:20問:60分
電子装備品等に関する事:20問:60分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
2等航空整備士(飛行機)
学科試験
航空法規:20問:40分
機体に関する事:20問:60分
タービン発動機に関する事:20問:60分
ピストン発動機に関する事:20問:60分
電子装備品等に関する事:20問:60分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
2等航空整備士(動力滑空機)
学科試験
航空法規:20問:40分
ピストン発動機に関する事:20問:60分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
2等航空整備士(上級滑空機)
学科試験
航空法規:20問:40分
機体に関する事:20問:60分
実地試験
整備基本技術
整備・検査知識
整備技術
点検作業
動力装置操作
採点方式と合格基準
学科試験・実地試験、それぞれ設けられています。
学科試験
学科試験の採点方式はマークシート方式です。
それに、科目合格制度が採用されています。
これは一部の科目が不合格でも、次に受験するときは合格している科目は免除されるということです。
合格していない科目を1年以内に合格点をとれば、学科試験は合格になります。100点満点の試験で70点以上が合格です。
学科試験に合格すると、実地試験に進めます。
実地試験
合否の判定ですが、全科目の実地試験を終えて、その成績が判定基準に達しているときに合格となります。
ただし、次のいずれかに該当するときは、不合格となります。
2.実機に関して、1科目でも判定基準に達していない。
3.専門技術に関して、1科目でも判定基準に達していない。
取得に必要な勉強などの費用
航空整備科のある専門学校の学費は、1学年で100万円を少し超えるくらいになっています。
それとは別に、入学金が20万円ほどかかります。教科書や作業服などの費用にも15万円ほどかかります。
つまり、3年間通うと、350万円ほどの費用がかかります。
受験料
・一等航空整備士
学科:5,600円
実地:50,100円
登録免許税:9,000円
・二等航空整備士
学科:5,600円
実地:45,000円
登録免許税:6,000円
受験申込方法
受験を申し込むには準備するものがあります。
学科試験受験申込時
- 申請書(19号様式)
- 納付書(手数料 5,600円の収入印紙貼付)
- 航空局指定返信用窓付封筒(2枚)→通常郵便の切手を添付します。受験票用及び結果通知書用です。
- 学科試験結果通知書(学科試験の科目合格により、科目の免除をする場合)
- 資格証のコピー(他の資格の所有によって、科目の免除をする場合)
- ライセンスの写し(外国のライセンスを所有していることによって、科目の免除をする場合)
- 写真(縦3cm×横2.5cm)[試験前に受験票が送付されますから、学科試験当日に添付して持参する]
提出先は、希望する受験地を管轄している地方航空局です。
- 千歳、岩沼、東京の受験地を希望している場合は、東京航空局です。
- 名古屋、大阪、福岡、宮崎、那覇の受験地を希望している場合は、大阪航空局です。
住所:〒540-8559
大阪市中央区大手前4-1-76 大阪合同庁舎第4号館
宛名:大阪航空局保安部運用課検査乗員係
実地試験受験申込時
受験希望月の前月15日に、学科試験を合格した地方航空局へ提出します。前月15日は必着です。
郵送の場合は、板紙封筒による書留郵便です。
学科試験の有効期限は、学科試験合格通知日から2年間です。
実地試験の申請には、次のものが必要です。
①申請書(19号の2様式)
②納付書(手数料相当の収入印紙貼付)
③航空経歴書
④ログブックのコピー(以下の項目を全て含めたもののコピー)
i.最新の飛行時間50時間以上(自家用操縦士においては40時間以上)
□上空滑空機
i.30回以上の滑空
□動力滑空機
i.15時間以上の飛行時間
⑤住民票(本籍記載のもの)
⑥学科試験結果通知書のコピー
⑦既得ライセンスのコピー(一部免除を受ける場合、計器飛行証明を受ける場合、操縦教育証明を受ける場合)
⑧外国ライセンスのコピー(一部免除を受ける場合)
⑨不合格通知書のコピー(再実地を受ける場合)
提出先は、住民票のある住所を管轄する地方航空局です。
東京航空局管轄の都道府県と、大阪航空局管轄の都道府県に分かれます。
それぞれ、どの県がどちらの管轄なのかを、地域ごとにまとめさせて頂きました。
ただし、中部地方は東京航空局管轄の県と大阪航空局管轄の県があります。
東京航空局管轄
〇北海道・東北
北海道.青森県.岩手県.秋田県.宮城県.山形県.福島県.
〇関東
茨城県.栃木県.群馬県.千葉県.埼玉県.東京都.神奈川県.
〇中部
新潟県.静岡県.山梨県.長野県.
大阪航空局管轄
〇中部
愛知県.岐阜県.富山県.石川県.福井県.
〇近畿
滋賀県.三重県.奈良県.和歌山県.京都府.大阪府.兵庫県.
〇中国
鳥取県.岡山県.島根県.広島県.山口県.
〇四国
香川県.徳島県.愛媛県.高知県.
〇九州沖縄
福岡県.長崎県.大分県.佐賀県.熊本県.宮崎県.鹿児島県.沖縄県.
まとめ
今回は国家資格である航空整備士についてお伝えしました。
航空整備士は、飛行機やヘリコプターの整備、点検、修理を行います。
整備には、ライン整備、ドック整備、ショップ整備があります。空港や格納庫、工場で整備を行います。
小型機は二等航空整備士が整備することができますが、大型機は一等航空整備士でないと整備できません。
また、機種ごとの限定資格も必要です。
航空整備士の資格には、整備の実務経験が必要です。
平均合格率が20%ほどの難しい試験です。
ですが、1度で全科目に合格できなくても科目合格という制度があります。
次に受験するのが1年以内ならば、合格している科目は免除となります。
つまり、1年以内に全科目に合格できれば、資格を取得できますよ。
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国際航空運賃検定について
住所:〒102-0074
千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
宛名:東京航空局保安部運用課検査乗員係