司法試験について、取り上げさせて頂きました。
司法試験に合格すると、約1年間の修習期間がありますが、それが修了すると法律事務に従事する法曹になることができます。
Contents
適用する仕事
司法試験合格が必要な仕事には、次のようなものがあります。
弁護士
弁護士の仕事は、刑事事件や少年事件、交通事故、相続、離婚といった身近にあり得る問題の相談を担当することです。
そのほかにも、日常取引や倒産処理、債権回収、株主総会対策などの企業法務、国際取引などの渉外事件、知的財産権(特許や著作権など)、金融法務、不動産法務といった様々な分野を扱います。
裁判官
裁判所で刑事訴訟や民事訴訟などの判決を下す仕事です。
裁判官とは、最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、判事、判事補、簡易裁判所判事をまとめたものです。
検察官
検察官は検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事に区分されます。
検察官の役目は、犯罪の疑いがある事件があったときに、その事件を捜査して被疑者を取り調べたり、被害者から聴取したり、証拠品の収集や精査をしたりすることです。
捜査の結果を考え、検察官は被疑者を起訴するかどうかを決定します。
起訴をすると、刑事裁判になります。
日本では、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定できるのは、検察官だけです。
税理士
弁護士資格を持てば、税理士の資格の登録もできます。
税理士は、企業や個人に対してアドバイスをしたり、確定申告書などの作成をしたりするのが仕事です。
さらに、会計業務をサポートしたり、経営や相続などのコンサルティングもしたりします。
税理士はその専門知識を使って、公平な税負担で済みやすい豊かな暮らしを守るという社会的な役割を果たしています。
弁理士
弁護士資格を持てば、弁理士の資格の登録もできます。
弁理士の仕事で主たるものは、企業や個人事業者の依頼で、特許庁に対して新規の発明品の知的財産権を申請することです。
特許権の侵害のような、知的財産権についての争いを解決するのが、弁理士の仕事です。
産業財産権の取得、産業財産権の紛争解決、コンサルティング業務が主な弁理士の仕事です。
社会保険労務士
弁護士資格を持てば、社会保険労務士の資格の登録もできます。社労士と略されることが多いです。
社労士は、社会保険や年金、労務管理をあつかう専門家です。
年金などの社会保障制度は複雑化しています。
年金制度を、円滑に利用する手助けをすることなども、社労士の仕事です。
また、経営者と労働者が、いい関係を結ぶための相談にも応じます。
行政書士
弁護士資格を持てば、行政書士の資格の登録もできます。
行政書士の仕事は、官公署へ提出する書類や、権利義務や事実証明に関する書類を作る「書類作成業務」、その申請を代わりに行う「許認可申請の代理」、依頼人から相談を受けてアドバイスを行う「相談業務」の3つです。
行政書士は、国民と行政の間をつなぐ役割ともいえます。
海事補佐人
海事補佐人とは、海難審判所の審判廷に出ている者が、自分の立場を正しく、適切に主張するときに、その手助けをしてくれる人のことです。
海の事故を起こした人は、受審人または指定海難関係人となって、審判廷で事故当時の状況を尋ねられます。
海事補佐人を利用すると、主張したいことを代わりに説明したり、弁護をしてくれたりします。
おおよその年収とキャリアパス
おおよその年収とキャリアパスは次のようになっています。
弁護士
弁護士の所得額の平均は、1年目~10年目でみると、317万円~739万円になります。
キャリアパスは、今まで勤めていた法律事務所から、ステップアップしたい法律事務所への転職などが考えられます。
一方、インハウスローヤー(企業内弁護士)の平均年収は、約1,000万円です。
キャリアパスは、法務部の正社員として入社して昇進を重ねていくことが考えられます。
最終的には、執行役員やCLO、GCになることを目指せます。
CLOは、日本では最高法務責任者とも呼ばれています。
GCとは、弁護士資格を持っていて、企業の法務部門を取り仕切る役員であるゼネラルカウンセルのことです。
裁判官
裁判官の平均年収は、おおよそ900万円です。
30歳で約600万円、40歳で約1,000万円が平均額です。
年収の幅は500万円~2,000万円ほどとみられます。
キャリアパスは、簡易裁判所判事→判事補→判事→東京以外の高等裁判所長官→東京高等裁判所長官→最高裁判所判事→最高裁判所長官と昇進していきます。
検察官
検察官の年収は、おおよそ600万円~2,900万円です。
検察官の報酬月額は、法律で決まっています。(ここが一般企業と大きく違うところです。)
キャリアパスは、検事20号~1号→次長検事→検事長→東京高等検察庁検事長→検事総長となります。
税理士
税理士の年収は、おおよそ360万円~1100万円ほどです。30歳から50歳までが年収のピークです。
勤務税理士、独立開業、企業内税理士かによって、キャリアパスは変わってきます。
弁理士
弁理士の年収は、おおよそ500万円~1,000万円ほどです。
キャリアパスは、弁理士→主任弁理士→主幹弁理士→パートナー弁理士となっているのが一般的です。
社会保険労務士
一般的に社会保険労務士の年収は、おおよそ500万円~700万円ほどです。
キャリアパスは、社労士事務所→総合会計事務所・労務コンサル会社
そして、人事・労務コンサルの専門家という道もあります。
行政書士
行政書士のおおよその年収は、300万円~500万円ほどです。
キャリアパスは、事業会社の法務コンプライアンス部門への就職や、事業会社の政策渉外部門などがあります。
コンサル業界
幅のある業界ですが、コンサルタントの平均年収はおおよそ374万円です。
総合コンサルティングファームに、リスクコンサルを担うところがあります。
リスクコンサルとは、企業が抱えるリスクへの対応を支援するサービスで、主に法令遵守やガバナンスを対応します。
キャリアパスは、何かしらのプロフェッショナルとして専門性を高めていくことが考えられます。
例を挙げると、経営企画系、組織人事系、IT・デジタル系、会計士、監査法人といった具合に、業界やテーマを絞り、その道の上位を目指すことが考えられます。
海事補佐人
海事補佐人は損害保険会社やフェリー会社に起用される場合があります。
平均年収は残念ながら、詳細不明です。
認可団体
司法試験を実施しているのは、法務省です。
法科大学院の認可団体は、国立大学の場合は国立大学法人の運営、私立大学の場合は学校法人の運営です。
受験条件
司法試験を受験するには、法科大学院を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。
受験資格を得てから、5年間は有効です。
つまり、受験をすることができるのは5回までです。
受験資格を失ってしまうと、また受験資格を得る必要があります。
再度得るには、法科大学院を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。
また、2023年7月からは、大学院在学中での受験が出来るようになりました。
合格率
法科大学院全体としてみると、司法試験の平均合格率は37.7%です。
法科大学院での合格率は、合格者の居ない大学はデータが残っていません。
合格者の居る大学をみると、合格率は8.3%から68.0%と、かなり差があります。
1年当たりの試験実施回数
試験は1年に1回実施されています。試験は2023年の場合、7月に実施されました。
試験科目
司法試験には短答式試験と論文式試験があります。
短答式試験
短答式試験は憲法、民法、刑法の3科目があります。
・憲法
憲法は分野別にすると、総論、人権、統治です。非常に高い知識レベルが求められる問題が多いです。
・民法
民法は、総則分野から相続分野と幅が広いです。試験範囲が広いです。
抵当権や相続分の計算問題の出題などもあり、暗記だけでは対応できない問題もあります。
・刑法
こちらも試験範囲が広いですが、シンプルな問題も多いです。
刑法は、判例がどのような立場に立ったものであるかを意識して解く問題が多いです。
論文式試験
論文式試験の試験科目は、7科目と選択科目があります。
基本の7科目
・民法
貸したお金を返却してほしい、損害賠償の請求をしたい、私人同士の権利の揉め事や、相続や離婚の出題がされます。
・憲法
表現の自由や、職業選択の自由、幸福追求権、平等権などの憲法上の権利に関する紛争などについての出題、国家の統治機構についての出題などがあります。
・刑法
暴行罪や傷害罪、公務執行妨害罪といった、具体的な行為で犯罪が成立するかしないかの検討をするなどが出題されます。
・行政法
違法建築の撤去処分や、公務員の懲戒処分といった、行政上の問題点についての出題や、国家賠償や損失補償などが出題されます。
・商法
株主総会でのミスの対処や、取締役が不祥事を働いたときどうすべきかといった出題や、企業同士の合併の規律についてなどが出題されます。
・民事訴訟法
民法や商法を裁判の手続きに乗せたときに、気を付けなければいけない点などの出題や、裁判上の和解についてどう考えるかといった出題がされます。
・刑事訴訟法
警察が捜査をする際の注意点や、犯罪の成否を裁判で争うときの注意点などが出題されます。
選択科目
次の中から1科目選択します。科目は出願の時点で選択します。
・労働法
選択者の多い科目です。民法と同じように、身近なところにある法律です。暗記量の多い科目でもあります。
・倒産法
破産法・民事再生法から出題されます。どちらも民事系科目と関連性が強いです。
企業法務を扱うのであれば、重要な科目です。
有用性は高いですが、学習量は多いところです。
・経済法
出題はほぼ独占禁止法です。刑法的要素が多く含まれます。
選択できる科目ですが、試験合格後の実務において使われることがあまり多くないことを追記しておきます。
・知的財産法
特許法、著作権法からの出題が多いです。民法・民事訴訟法との関連性が高いです。
こちらも学習量が多いですし、改正の多い法分野です。
・国際関係法(私法)
ここのところ、人気のある選択科目です。
海外の企業との契約などの渉外案件を扱う事務所では、大切な科目です。
学習量もそれほど多くはありません。
しかし、教材が充実していないことと、イメージをつかみにくい点がデメリットでもあります。
・租税法
出題は所得税法についてのものが多いです。
所得税法と関係するような、法人税法と国税通則法からも出ます。
こちらは企業にとっては重要な問題なので、実務上重要な科目です。
採点方式と合格基準
短答式試験は、マークシート方式なので、そのまま採点されます。
短答式試験の合格基準ですが、こちらの試験には足切りがあります。
各科目の満点の40%が足切りラインです。
1科目でも40%を下回ってしまうと不合格です。
論文式試験も足切りラインがあります。各科目の満点の25%です。
採点方法は、1枚の答案を複数人の採点者で採点します。
評価されるのは、事例解析能力、論理的思考力、法解釈・適用能力などが基本で、論理的構成力や文章表現力等も総合的にみられます。
採点には、部分点もあります。
取得に必要な勉強などの費用
法科大学院の学費の例を挙げさせて頂きます。
法科大学院は、法学未修者が対象の3年コースと、法学既修者が対象の2年コースに分かれます。
おおよその学費は次のようになっています。
国立の法科大学院の場合
国立大学の場合は、入学金も授業料も一律です。入学金が28万2000円、年間の授業料は80万4000円です。
法学既修者の2年コースの場合は、総額189万円です。
法学未修者の3年コースの場合は、総額269万4,000円です。
私立の法科大学院の場合
私立大学の場合は、入学金と授業料には国立の大学とかなり差があります。
同じ大学を卒業した者に対しては、入学金が無料のところもあります。
年間の授業料は、50万円~70万円のところもあれば、130万円~150万円のところがあります。
初年度納付金も80万円~200万円あります。
受験料
司法試験の受験料は28,000円です。
収入印紙を使って、受験願書の添付欄に消印を押さずに貼ります。
収入印紙は4枚以内です。郵便局やコンビニで購入することができます。
郵送による出願の場合、手数料が17,500円かかります。
受験願書の添付欄に、収入印紙を消印を押さずに貼ります。こちらも収入印紙は4枚以内です。
受験申込方法
2023年から、法科大学院在学中に司法試験を受験することができるようになりました。
それに伴って、司法試験の実施日程が、今までより2か月程度遅くなっています。
願書交付期間、願書受付期間なども例年と異なります。
受験願書の入手方法
受験願書の入手方法は3通りあります。
1.法科大学院を通して交付を受ける場合
通われている法科大学院か、課程を修了した法科大学院に受験願書の交付の申請をする方法です。
1名1部ずつの交付となります。
2.郵送による交付の場合
郵送の場合は交付期間内必着です。少し早めに請求するのがいいです。消印が期間内でも有効にはなりません。
封筒2種類:①適宜 ②角型2号
封筒①の表面に赤字で「司法試験受験願書請求」と記載します。
裏面には差出人名を明記します。そして、84円切手を貼ります。
返信用封筒②(角型2号 縦33.2cm 横24.0cm程度)に210円分の郵便切手を貼ります。
郵便番号、送付先住所、氏名、電話番号を明記しましょう。
そして、①に②を入れて、司法試験委員会宛てに送ります。
〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1(法務省内) 司法試験委員会
3.来庁による交付の場合
法務省へ直接取りに行く方法です。来庁でも1名1部ずつとなります。
場所は法務省1階東玄関(日比谷公園側)です。
司法試験出願に必要なもの
- 受験願書
- 写真
- 収入印紙
- 該当する人のみ添付書類
受験願書
願書には、名前や生年月日などの基本情報を記入します。
写真
顔写真は正面、無帽、無背景、カラーのものを用意します。
出願前6ヶ月以内の撮影です。
写真の大きさは縦45mm×横35mmのものです。
頭頂から顎までが34mm程度がいいです。
受験時に眼鏡を使用する場合は、眼鏡をかけて撮影してください。
写真の裏面には、氏名と生年月日を記入し、裏面全面にのり付けをして、願書の写真欄に剝がれないように貼りましょう。
収入印紙
受験料の28,000円は、収入印紙を使います。
収入印紙を願書の収入印紙添付欄に貼り付けます。
収入印紙は4枚以内でなければなりません。
該当する人のみ添付書類
1.在外公館が発行する在留証明書
日本国籍を有する人で、海外に住んでいる場合は、在外公館が発行する在留証明書の提出が必要です。
2.戸籍抄本、除籍抄本(戸籍個人事項証明書または除籍個人事項証明書)
次のいずれかに該当するときは、氏名変更等の経緯が確認できる戸籍抄本(交付が6ヶ月以内のもの)または除籍抄本の提出が必要となります。
a.司法試験において、旧姓(戸籍上の旧氏名)による受験を希望する場合
b.過去に司法試験、旧司法試験第二次試験または司法試験予備試験に出願をしていて、最後の出願時の氏名と現在の氏名が異なる場合
まとめ
司法試験を受験するには条件があります。
法科大学院を修了するか、司法試験予備試験での合格です。
司法試験は弁護士になるための試験と思っておられる方も多いかと思いますが、司法試験に合格してできる仕事は他にもあります。
弁護士、裁判官、検察官、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、海事補佐人、インハウスローヤーなどです。
司法試験では、それらの職業に就くときに必要な学識、応用能力が備わっているかどうかが判定されます。
関連する記事はこちら
司法試験について
弁護士法人ではない一般企業や、学校法人、公益法人、行政機関などに所属している弁護士のことです。
役員や社員として働いています。
企業に属する者を企業内弁護士、官公庁に属する者を行政庁内弁護士と分けて呼ぶこともあります。
法廷に立つことはあまりありません。所属組織の業務に、プロジェクトの一員として加わることが多いです。