電気工事施工管理技士(1級)について

電気工事施工管理技士(1級)について

電気工事施工管理技士とは、建造物の建設であったり、増築などに必要である電気工事に関することを監理することができる国家資格です。
電気工事の施工計画の作成や、工程、安全、品質の管理等を行って、電気工事の監督を行うことが出来ます。

適用する仕事

まず、特定建設業について説明させていただきます。
特定建設業とは、1件の建設工事(元請工事)について、合計額が4,000万円以上の工事を下請に出す場合に、取得が義務付けられている許可のことです。

電気工事業は指定建設業の1つです。
指定建設業とは、総合的な施工技術を必要とするもので、社会的な責任が大きいことから、下請け代金が4,500万円以上の場合に必要な特定建設業許可を受ける際の専任技術者は、1級の国家資格者や技術士の資格者または国土交通大臣の認定を受けた人に限られます
実務経験のみでは、専任技術者にはなれないので注意が必要です。

指定建設業は、特定建設業のうち政令で定める7業種の建設業のことをいいます。

指定建設業には、次の7事業があります。

指定建設業の1つである電気工事業に係る特定建設業において、営業所ごとに置く専任の技術者、また建設工事の現場に置くことが義務である監理技術者は、1級施工管理技士等の国家資格保有者でなければなりません。

建設現場には監理技術者か主任技術者の配置が必要ですが、電気工事施工管理技士は監理技術者・主任技術者として現場を担当することができます。
1級と2級が担当できる仕事の内容に大きな違いはありませんが、受け持つことが出来る仕事の規模が異なります。
2級の電気工事施工管理技士は総額4,500万円未満の現場に携わることができますが、1級の電気工事施工管理技士は総額4,500万円以上の大規模な工事の監督や施工計画、工事品質の管理を行うことができます。

この資格を取得すると、次のような電気工事の施工管理を行うことが出来ます。

発電設備工事

電力会社の大型発電設備や、自家発電をして施設の電力源としている設備が含まれます。
自家発電設備というものには、常用発電設備と非常用発電設備があります。

ここで常用発電設備は、自家発電した電力を設置している施設に使います。
非常用発電設備は、停電や火災などの非常事態で電源が止まってしまったときに備えて設置されるものです。
非常用発電設備は、不特定多数の人が出入りする延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物には、消防法で設置が義務となっています。

変電設備工事

電気工事施工管理技士1級 2
ここで変電とは、発電所から電気を受け取り、その電気を施設で利用できる電圧まで下げることをいいます。
その変電のための装置を、変電設備といいます。

通常は、発電所から電気を送るときは高圧で送るので、そのまま使用はできません。
その電気を、施設内のキュービクルという変電設備で電圧を下げなければならないので、設置するときに工事が必要です。
変電設備工事は、その工事のことをいいます。

送配電線工事

電気工事施工管理技士1級 3
発電所から電気を送るときの電線を、送電線といいます。
発電所から配電変電所までを送電線といい、配電変電所から、一般に電柱と呼ばれる柱上変圧器までの電線を配電線といいます。
それらの送電線と配電線の工事も、電気工事施工管理技士が管理をします。

照明設備工事

施設内の照明工事も、電気工事です。
ここで難しいのは、照明というものはレイアウトや美観なども大切なものなので、依頼書の要望に応じて作り上げる、技術以外の美的感覚なども必要になってきます。
キュービクルから送られてきた電気を分電盤に通して、各部屋に配線して照明器具へと繋げます。
設計図に適った配線がされているか、施工管理技士の確認が必要な仕事です。

構内電気設備工事

様々なスイッチやコンセントの配線、電話設備、誘導灯、非常用照明、館内放送設備、火災報知器などの防災設備も構内電気設備です。

信号設備工事

電気工事施工管理技士1級 4
これは、道路や電車に設置される信号設備の工事のことです。
それらは、鉄道電気設備専門の工事会社が担うことが多いです。
そういった会社の電気工事施工管理技士は、それらの仕事をすることが多いです。

電車線工事

電車の線路の上にある電線を、電車線といいます。
これは、変電所から送られた電気を、電車のパンタグラフを通して電車に送るための電線です。
パンタグラフとは、電車などの屋根についている、架線の電流を取り込むための装置です。

おおよその年収とキャリアパス

電気工事施工管理技士 1級 5
おおよその年収は、500万円から700万円ほどのところが見られます。

電気工事施工管理技士は、電気設備に関わる仕事に必要です。この資格の2級と1級の仕事内容に大きな違いはありませんが、扱うことのできる現場の規模が異なります。
規模だけではなく、1級では営業所における専任技術者、現場ごとに設置される監理技術者として仕事に従事することができます。

認可団体

電気工事施工管理技士の認可団体は、一般財団法人の建設業振興基金です。
建設業振興基金とは、建設産業界の近代化・合理化を推進し、建設産業の振興を図るために設立された機関です。

以前は国土交通省所管の財団法人でありましたが、公益法人制度改革に伴い一般財団法人へ移行しました。
国土交通大臣の指定する指定試験機関です。

国土交通省ロゴ

電気工事施工管理技術検定の他には、建築施工管理技術検定があります。

受験条件

第一次検定と第二次検定の受験条件は、次のようになっています。

第一次検定

試験実施年度内に満19歳以上となる者。

令和6年度から、施工管理技術検定の受験資格が改正されています。
それによって、第二次検定の受験条件は大きく変わっています。
令和10年度までは、制度が改正される前の受験資格を満たしている場合は、第二次検定を受験することが出来ます。

旧受験資格での受験申請や再受験申請をする場合
令和6年度から令和10年度までの間に第二次検定を受験してる場合は、令和11年度以降であっても、第二次検定へ再受験者として受験申請をすることが出来ます。ただし、第二次検定の出願辞退者は除きます。

第二次検定(新受験資格)

1級第一次検定合格者

1.1級電気工事第一次検定合格後に実務経験5年以上
2.1級電気工事第一次検定合格後に、特定実務経験が1年以上含まれた実務経験3年以上
3.1級電気工事第一次検定合格後に、監理技術者補佐としての実務経験1年以上

特定実務経験:指定建設業として行う建設工事において、監理技術者、主任技術者(どちらも実務経験対象となる建設工事の種類に対応した監理技術者資格者証を有する者でなければならない)の指導の下、または自らが監理技術者、主任技術者のどちらかで行った施工管理の実務経験を指す。

2級二次合格後の場合(旧2級施工管理技術検定実地試験合格者を含む)

1.実務経験5年以上
2.特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上

ここで特定実務経験とは、指定建設業として行う建設工事において、監理技術者資格者証を有する監理技術者、主任技術者の指導の下、または自ら監理技術者、主任技術者として行った経験のことをいう。

第二次検定(旧受験資格)

旧受験資格で第二次検定を受験するには、本検定の第一次検定または技術士に合格した上で、次の要件を満たす必要があります。

最終学歴 指定学科卒業の場合の卒業後の必要実務経験年数 指定学科以外を卒業の場合の卒業後の必要実務経験年数
大学、専門学校の高度専門士 3年以上 4年6ヵ月以上
短大、高専(5年制)、専門学校の専門士 5年以上 7年6ヵ月以上
高校、中等教育学校、専修学校の専門課程 10年以上 11年6ヵ月以上
その他 15年以上
電気主任技術者免状(第一種、第二種、第三種)の交付を受けた者 6年以上(交付後ではなくて通産で1年以上)
第一種電気工事士免状の交付を受けた者 必要実務経験なし
2級電気工事施工管理技術検定第二次検定(または旧実地試験)合格者 合格後5年以上

 

2級電気工事施工管理技士、第二次検定合格後の実務経験が5年未満の者

最終学歴 指定学科卒業の場合 指定学科以外を卒業の場合
短大、高専(5年制)、専門学校の専門士 2級二次合格による短縮なし 9年以上
高校、中等教育学校、専修学校の専門課程 9年以上 10年6ヵ月以上
その他 通算14年以上

旧受験資格と新受験資格では、実務経験の判定の仕方が異なります。詳しくは受験の手引きをご確認ください。

実務経験として認められる工事内容には、以下のものがあります。
・発電設備工事
・送配電線工事
・引込線工事
・変電設備工事
・構内電気設備(非常用電気設備を含む)工事
・照明設備工事
・電車線工事
・信号設備工事
・ネオン装置工事

合格率

電気工事施工管理技士 1級6

令和5年度

【検定区分:受験者数:合格者数:合格率】
第一次検定:16,265人:6,606人:40.6%
第二次検定:8,535人:4,527人:53.0%

令和4年度

【検定区分:受験者数:合格者数:合格率】
第一次検定:16,883人:6,458人:38.3%
第二次検定:7,685人:4,537人:59.0%

令和3年度

【検定区分:受験者数:合格者数:合格率】
第一次検定:15,001人:7,993人:53.3%
第二次検定:7,922人:4,655人:58.8%

1年当たりの試験実施回数

電気工事施工管理技士(1級)の試験実施回数は1回ずつです。
第一次検定が夏頃、第二次検定が秋頃に実施されます。

試験科目

まず、電気工事施工管理技術検定の対象となる技術は、次の通りです。
「電気工事の実施に当たり、その施行計画及び施工図の作成ならびに当該工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理を適確に行うために必要な技術」

2023年度の試験科目は次のようになっていました。

第一次検定

第一次検定はマークシート形式です。

電気工事施工管理技士 1級72023年度の問題は92問あって、解答する必要があるのが60問でした。必須問題と選択問題があります。
試験は午前と午後にわかれていて、午前の部は2時間30分の試験時間で57問出題。解答する必要があるのは31問でした。
午後の部は2時間の試験時間で35問出題。解答する必要があるのは29問でした。

検定科目:解答形式

  • 電気工学等:四肢択一
  • 施工管理法(知識):四肢択一
  • 施工管理法(能力):五肢択一
  • 法規:四肢択一

試験科目は次のようになっています。

電気工学等

四肢択一:知識問題

1.電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な電気工学、電気通信工学、土木工学、機械工学及び建築学に関する一般的な知識を有すること。
2.電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等に関する一般的な知識を有すること。
3.電気工事の施工の管理を適確に行うために、必要な設計図書に関する一般的な知識を有すること。

施工管理法

四肢択一:知識問題

1.監理技術者補佐として、電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する知識を有すること。

五肢択一:能力問題

2.監理技術者補佐として、電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な応用能力を有すること。

法規

四肢択一:知識問題

建設工事の施工の管理を適確に行うために、必要な法令に関する一般的な知識を有すること。

第二次検定

第二次検定は、マークシート形式と記述形式の両方があります。
2023年度は、記述形式の大問が3つ、マークシート形式の問題が大問で2つありました。
試験時間は3時間です。

施工管理法

1:知識問題:五肢択一(マークシート)

監理技術者として、電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な知識を有すること。

2:能力問題:記述

監理技術者として、設計図書で要求される発電設備や変電設備、送配電設備、構内電気設備等の性能を確保するために設計図書を正確に理解していて、電気設備の施工図を適正に作成し、及び必要な機材の選定、配置等を適切に行うことができる応用能力を有すること。

採点方式と合格基準

2022年度の一次検定と二次検定の採点方式・合格基準を次に示します。
一次試験の問題には、四肢択一と五肢択一があります。それらは正誤判定されます。
二次試験の記述式問題の採点方式は、不明です。

一次検定の合格基準

一次検定は、各問題は1点の60点満点でした。
92問出題のうち、解答する必要があるのは60問です。

合格基準は36問以上の正答です。得点では60%以上となります。
しかし、施工管理法の能力の問題は6問中3問以上の正答が必要です。

二次検定の合格基準

二次検定では、次の判断基準をもとに合否が決められます。
得点60%以上
ただし、問題数が5問で配点は非公表です。

取得に必要な勉強などの費用

参考書を3点紹介させていただきます。

1級電気工事施工管理技士 第一次検定基本テキスト 2024年版

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出版社名:建築資料研究社
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価格:3,300円(税込)

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1級電気工事施工管理 第一次検定問題解説集 2024年版

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出版社名:地域開発研究所
商品名:1級電気工事施工管理 第一次検定問題解説集 2024年版
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平成28年度から令和5年度の出題全問題が収録されています。
マークシートの問題も、すべての問題に「なぜ誤っているか」、「どうして正しいか」が詳しく書かれています。

1級電気工事施工管理技士 第二次検定試験対策集 2024年版

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出版社名:建築資料研究社
商品名:1級電気工事施工管理技士 第二次検定試験対策集 2024年版
価格:3,300円(税込)

過去の出題内容が分析されて、要点を押さえた実戦的な本です。
要点を押さえたテキスト編と、過去10年分の問題解説編で構成されています。

受験料

第一次検定:13,200円
第二次検定:13,200円
受験申込書(願書)1部:600円(税込)

第二次検定の受験料は、第一次検定の合格発表後に払込となります。

受験申込方法

受験するには、インターネットでの申込みか、書面申込が必要です。
第一次検定のみへの申請をする個人の受験者は、インターネットでの申込みが必要です。
また、平成15年から令和5年度に本試験を受験されたことがある場合、インターネットでの再受験申込ができます。

初めて第二次試験の受験、または一次と二次の同時申請する場合には、実務経験審査が必要です。
その際は、書面にて申請を行わなければなりません。願書を購入し、申請手続きをします。

顔写真を準備

電気工事施工管理技士 1級8
1.アップロードする顔写真の用意が必要です。デジタルカメラか、携帯電話のカメラで受験者本人を撮影してください。ここで、写真に背景があるなど、顔写真に不備があるために試験を受けられないケースが非常に多いです。

インターネット申込時に提出する顔写真は、合格証明書への印刷にも使われるため、証明写真と同等の、はっきりした顔写真を撮影して提出するのがいいです。画像が暗い物や、画質が悪い物が多いようです。

2.顔写真をパソコンなどに保存
撮影ができましたら、顔写真の画像を受験申込者本人のパソコンなどに保存してください。
ファイルはJPEG形式です。写真のファイルの拡張子は“.jpg” または “.jpeg”でなければなりません。

3.住民票コードの確認
申込には、本人確認のため住民票コードの入力が必要です。住民票コードとは、住民基本台帳に記録されている11桁の数字です。

パスポートの申請などに使われるものです。住民基本台帳、住基カードはお住いの市区町村で交付が受けられるICカードです。

インターネット申込の手順

電気工事施工管理技士 1級9
1.申込規約
申込規約を確認し、「同意する」をクリックします。

2.メールアドレス・基本情報入力
申込検定種別を確認し、申込者情報を入力します。

3.認証コード入力
メールアドレスに送付された認証コードを入力します。

4.顔写真選択
顔写真のアップロードを行います。JPEG形式の画像をアップロードします。
JPEG形式のファイル名の拡張子は“.jpg” または “.jpeg”です。

5.顔写真加工
アップロードした顔写真を、画像切取ツールで縦531ピクセル × 横413ピクセルの顔写真ファイル(JPEG形式)に加工します。このサイズは、パスポートサイズです。

6.顔写真確認
加工をした顔写真に、誤りがないか確認してください。

適切な顔写真とは、以下を満たすものになります。

・受験者本人のみが正面を向いて写っているもの
・無背景であるもの
・撮影後6ヶ月以内のもの
・脱帽、アクセサリー等は外した状態であること
・明るさやコントラストが適切で鮮明なもの

反対に、不適切な写真は、ピントが合っていなかったり、顔に影が写りこんでいるものです。
背景が写っていたり、顔の一部が隠れていたり、顔の割合が小さいものも不適切です。

本人確認が難しい顔写真であると判定された場合は、受験ができないので注意が必要です。通知がきて、適切な顔写真の再提出が必要になります。

まとめ

電気工事施工管理技士 1級11
1級電気工事施工管理技術検定に合格して取得できる資格である、1級電気工事施工管理技士について取り上げさせて頂きました。

特定建設業と呼ばれる、下請け会社に4,500万円以上の工事を発注する建設業の電気工事の主任者や監理技術者、または専任技術者には、2級ではなく、1級の電気工事施工管理技士が必要です。
規模の大きい工事を扱えるようになるので、2級を取得した人が、次に1級の取得を目指す場合が多いです。

 

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