体調が悪くなり、最悪嘔吐するときは非常に苦しいものです。
トイレやビニール袋の中に嘔吐するのならまだしも、地面や部屋などに嘔吐したときは周囲を汚して困ってしまうこともあると思います。
嘔吐の原因は食べ過ぎ・飲み過ぎの場合もありますが、中には深刻な病が隠れている場合や、さまざまなウイルスが関連している可能性があります。
家族や身近な人が突然嘔吐してしまったときのための、安全な処理の仕方をご紹介していきます。
Contents
1mの高さから落ちた嘔吐物は半径2mも飛散する?
嘔吐はどのような原因で起こるか、嘔吐したらどうなるかを見ていきましょう。
嘔吐を伴う疾患
急性胃炎
胃の粘膜がただれて突然キリキリとみぞおちが痛み、消化器系の症状を伴う疾患です。
食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレス、ウイルス、ピロリ菌感染、食中毒、アレルギーなどが原因として挙げられます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌や非ステロイド性鎮痛剤、ストレスなどが原因で起こるとされる疾患です。
強い胃酸と消化酵素によって胃や十二指腸の粘膜が局所的に欠損し、吐き気・嘔吐・食欲不振を伴います。
急性腹膜炎
内臓を包んでいる腹膜が細菌に感染して炎症が起きる疾患です。
腹膜炎の代表的な症状は腹痛ですが、吐き気や嘔吐、発熱、呼吸障害などが起こることもあります。
迅速に処置を行わないと生命にも関わる場合もあるようです。
虫垂炎
盲腸炎とも呼ばれ、その名の通り盲腸の先についている虫垂に炎症が起きる疾患です。
突然みぞおちやへその部分が痛み、やがて右下腹部へと痛みは移動していきます。
腹痛とともに吐き気・嘔吐・発熱を伴うことがあります。
ウイルス感染症
自分や身近な人が嘔吐した際に、一番気をつけたいのがウイルスです。
嘔吐を引き起こすものに、ノロウイルスや新型コロナウイルスなどがあります。
ノロウイルスは人の小腸粘膜で増殖し、主に11月から3月にかけて流行します。
少量(10~100個)のウイルスでも発症するほど感染力が高いのが特徴です。
体内にウイルスが入ると、24~48時間程度で激しい腹痛や下痢、吐き気や嘔吐が発生します。
今のご時世だと新型コロナウイルス感染症も気になりますね。
新型コロナも下痢や嘔吐の症状が出ることがあるので、厳重に注意したいところです。
嘔吐した場合の飛散範囲は?
このような実験があります。
白色の紙の上に材質の違う50cm四方の床材を敷き、着色した擬似嘔吐物50gを1mの高さから静かに床材の中心部に落とします。
使用した床の材質と疑似嘔吐物の拡散範囲は次のとおりでした。
【床の材質】
- 塩化ビニル床
- 裏ゴム張りカーペット(毛足の長さ2mm)
- 裏布張り長毛カーペット(毛足の長さ10mm)
- 裏布張りループ状カーペット(毛足の長さ5mm)
【拡散範囲】
- 塩化ビニル床 … 半径2.3m
- 各種カーペット … 半径1.6~1.8m
目に見えにくい部分も含め、嘔吐物は半径2m、直径にして約4mも飛び散るのです。
その中にウイルスが混ざっている場合、同じように飛び散っていると考えると恐ろしいものです。
ウイルス感染による嘔吐の場合、周囲への感染リスクも発生します。
適切な処置方法を覚えておくことは、自分の身を守る感染対策にも繋がりますよ。
使い捨てエプロン、手袋を用意した方がいい?重曹、熱湯って使える?
嘔吐物を処理する際は、しっかりと準備を行う必要があります。
こんな道具が必要!
- マスク
- 使い捨てビニール手袋
- ペーパータオルや新聞紙
- 密封できる廃棄用袋2枚
- 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム原液)
嘔吐物にはウイルスが含まれている可能性もあるので、処理中は必ず手袋を着用しましょう。
また、空気中にもウイルスは浮遊しているため、マスクや使い捨てエプロンなども着用しましょう。
処理関係者は保護具を着用したのち、すばやく処理しましょう。
関係者以外は近づかず、処理中・処理後は換気を忘れないでください。
重曹や熱湯は必要?
基本的に嘔吐物はウイルスを含んでいるおそれがあるため消毒も行います。
このとき必要になるのが塩素系漂白剤です。
しかし、嘔吐した場所によっては脱臭も行わないとその後が不便ですよね。
脱臭に使用するのが重曹や熱湯です。
次亜塩素酸ナトリウムって使える?嘔吐物回収は外側から内側?
嘔吐物の処理には次亜塩素酸ナトリウムが適しています。
塩素系漂白剤の主成分である消毒剤の一種で、ノロウイルスやインフルエンザウイルスにも有効とされる消毒効果があるためです。
基本的に次亜塩素酸ナトリウムを使用する際は0.1%以上に希釈します。
希釈した溶液を、次亜塩素酸ナトリウム液と呼びます。
次亜塩素酸ナトリウムの原液として、市販の塩素系漂白剤も使用できます。
次亜塩素酸ナトリウムの原液の濃度が6%の場合、水1Lに対して原液約17mlを混ぜることで溶液が作れます。
嘔吐物の処理の仕方
嘔吐物の処理は保護具(マスク、手袋など)を身に着けて行いましょう。
処理中および処理後は必ず換気をしてください。
- 廃棄用袋の口をあらかじめ広げておく
- 嘔吐物や汚物をペーパータオルや新聞紙で覆う
- 2で覆った上から次亜塩素酸ナトリウム液をかける
- ペーパータオルなどで外側から内側へと、拭き取った面を内に折り込みながら静かにきれいに拭き取る
このとき、膝は付かないように拭き取りましょう。 - 拭き取りに使用したペーパータオルなどを廃棄用袋に入れる
- 次亜塩素酸ナトリウム液を浸したペーパータオルなどで、嘔吐物が付着した床や壁を、外から内に浸すように拭き取って広めに消毒する
- 拭き取ったペーパータオルなどはその都度廃棄用袋に入れる
- 汚れた靴底を次亜塩素酸ナトリウム液に浸したペーパータオルなどで拭き取り、ペーパータオルは破棄する
- 袋の中に次亜塩素酸ナトリウムを入れて袋の口をしっかり縛る
- 口を縛った廃棄用袋をもう1枚の袋を入れる
- 手袋・マスクなどを肌の表面に触れないように外して袋に捨て、袋の口を縛る
処理を終えたら、念入りに手洗い・うがいを行いましょう。
重曹を使った処理の仕方
カーペットやソファ、布団などに嘔吐した際に次亜塩素酸ナトリウム液を使ってしまうと、家具が色褪せたり傷んだりしてしまう可能性があります。
ウイルス性が疑われない場合は重曹を使った処理もできます。
このときもマスク・手袋を着用して、ペーパータオルなどで嘔吐物をきれいに処理しましょう。
ペーパータオルや新聞紙がなければトイレットペーパーでも代用可能です。
トイレに流すときは詰まらせないように注意します。
嘔吐物をある程度処理したら重曹水を使って臭い取りを行います。
- 水500mlに対し重曹小さじ1杯を入れて重曹水を作り、スプレーボトルに入れる
- 嘔吐物が付着した部分がしっかり濡れるようにスプレーしていく
- スプレーしながらペーパータオルなどで水分を吸い取り、吸い取ったものはその都度ビニール袋に破棄する
- 部屋に充満した臭いが取れるまで繰り返す
ウイルスなどが原因だと疑われる場合は、必ず次亜塩素酸ナトリウム液を使います。
処理後に次亜塩素酸ナトリウム液を染み込ませ、10分ほど消毒するのも忘れないようにしましょう。
車で嘔吐した場合の処理
車で嘔吐した場合も重曹を使って掃除ができます。
この場合は重曹をぬるめのお湯に溶かして使います。
必要なものを準備したら、次の順序で処理していきましょう。
- 40℃前後のお湯3L
- 重曹150g
- バケツ
- ゴム手袋
- 雑巾4~5枚
重曹水を作る
ゴム手袋を装着し、40℃前後のお湯1Lに対して50g(大さじ3杯強)の重曹を入れて溶かします。
車内の掃除には3Lほど使うのでお湯3Lと重曹150gを混ぜて使用します。
嘔吐物を取る
重曹水で絞った雑巾で残った嘔吐物を取り除きます。
強くこすると嘔吐物がシートに染み込んでしまうので注意しましょう。
嘔吐物をぬぐった雑巾は作った重曹水のバケツで洗わず、流水で洗います。
できれば使いまわしは避け、別の雑巾で複数回拭き取るようにしましょう。
シートを拭く
重曹水で雑巾をゆるめに絞って、重曹水を染み込ませるようにシートに押し付けていきます。
胃液や食べ物の液は酸性なので、アルカリ性の重曹水で中和することができます。
濡らし過ぎるとシートが乾きにくくなるので注意しましょう。
乾拭きしてから乾燥させる
乾いた雑巾で汚れたシート部分に圧をかけながら水分を取っていきます。
オムツやペット用シート、生理用品で代用しても構いません。
臭いが消えても半日以上、窓を開けて乾燥させましょう。
窓を締め切ってしまうと生乾き臭が発生するおそれがあります。
嘔吐物処理おすすめグッズ、洗剤
ここまで見てきたとおり、嘔吐物処理には多くの道具と手間がかかります。
ここでは処理作業の負担が軽くなるグッズをご紹介します。
嘔吐物処理キット サンワスピードクリーンEX
- メーカー名:三和製作所
- 商 品 名:嘔吐物処理キット サンワスピードクリーンEX
- 価 格:¥6,270(税込)
これは嘔吐物処理に必要な道具が8点も入っているキットです。
マスク・使い捨てエプロン・ロンググローブ・靴カバーといった防具一式も3組入っています。
- サンワスピードプロテクト 3組
- サンワスピードフリーズ 300g
- 抗菌ソフトペーパータオル
- 次亜塩酸水 400ml
- チェアバケツ(9L)
- 次亜塩素酸ソーダ 500mL
- スポイト(10ml)
- ディスポチリトリ 3枚
ゲロポン-V(除菌剤入り)
- メーカー名:ホワイトプロダクト
- 商 品 名:ゲロポン-V(除菌剤入り)
- 価 格:¥1,980(税込)
ポリ手袋・ペーパータオル・ヘラ・ポリ袋・マスク・嘔吐物凝固剤・アルコール製剤がセットになった嘔吐物処理用キットです。
除菌剤は天然由来で安全性も高く、箱は組み替えてチリトリとして使えます。
携帯おう吐袋 ハイポット
- メーカー名:ケンユー
- 商 品 名:携帯おう吐袋 ハイポット
- 価 格:¥462(税込)
水分を固めて臭いを消してくれる巾着タイプのエチケット袋です。
袋に弁が付いていて頬に密着させやすいため、嘔吐したときにこぼれにくい構造になっています。
旅行やドライブに持っていくのにもオススメです。
まとめ
今回は嘔吐物を安全に処理する方法を詳しく見ていきました。
嘔吐する瞬間を見てしまったり、自分が吐いてしまったりしたときは気が動転するでしょう。
基本的にはウイルス対策となる次亜塩素酸ナトリウムを備えておくことが一番です。
また、嘔吐物を処理する際にはいろいろな道具が必要だということも分かりましたね。
嘔吐物を処理するのに便利なキットやグッズが販売されているので、家や車内に備えておくのもオススメです。
特に小さなお子様連れの方や、介護中の方は重宝するでしょう。
嘔吐物にはウイルスが含まれていることもあり、その場合は感染を広げてしまう可能性があります。
安全な処理の仕方を覚えて、万が一のときに備えておきましょう。
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