ネットワークスペシャリスト試験は情報処理技術者試験の一種で「情報処理の促進に関する法律」をもとに経済産業省(経済産業大臣)が実施している一定以上の水準の知識・技能を認定する国家資格です。
情報処理技術者試験は4つのレベルに分類され12の試験区分で構成されています。例えば「ITパスポート試験」はレベル1、「基本情報技術者試験」はレベル2、「応用情報技術者試験」はレベル3、「ネットワークスペシャリスト試験」はレベル4というように段階が決まっています。
今回は「ネットワークスペシャリスト試験」について紹介します。
Contents
適応する仕事
主な就職先は情報システム開発企業や情報インフレ企業(ネットワーク構築を行う企業)などがあります。
ネットワークスペシャリストとはネットワークエンジニアやインフラエンジニアとも呼ばれ、ネットワークの設計・構築・運用・管理などが主な仕事です。
例えばLAN(複数の端末をケーブルを使用してネットワークを構築)やWAN(企業同士のネットワークを構築する)、VPN(インターネットで安全なネットワークを構築する)を設計して作り上げていき安全に使用するために管理・運用を行なうなどのネットワークの専門家として対応します。
こういった業務を行なうことで社内で同一のシステムが使えたり、各デバイスの情報やデータの共有が素早く行えるなど多くのメリットが得られるので現代のネットワーク・情報社会では必要不可欠な職業です。
おおよその年収とキャリアパス
ネットワークスペシャリストの資格を持っている人の求人の平均年収は、450万円~800万円ほどと言われています。
平均年収の幅が大きいのはスキルや経験、他に保有してる資格が多かったり関連性の高いものを取得していると年収は上がっていくようです。
IT関連の職種を見ていくと年収は高い方ですが、それだけ重要な仕事でもあります。
エンジニアのキャリアパス
ネットワークエンジニアは設計・構築・運用・保守・監視と大まかに5つに分かれて仕事をします。
なかでも監視は経験値が低い人でも就くことができ、設計や構築になると経験値や技術が問われます。
例えば、ネットワークエンジニアとして監視や保守などから経験を積んだ後に設計や構築へとスキルアップしていき経験や高度な知識と技術を身に着けた人が「ネットワークスペシャリスト」を目指しています。
ネットワークスペシャリストは一つの選択肢に過ぎませんが、エンジニアとしてより高い技術や知識を身に着けたい人は挑戦してみてください。
ネットワークスペシャリスト以外のキャリアパス
ネットワークスペシャリストはネットワークに特化した資格です。
他にもネットワークエンジニアからセキュリティ管理に特化するとセキュリティスペシャリストやホワイトハッカーなどになり、プロジェクト管理に特化するとプロジェクトマネージャーやITコンサルタントになることもできます。
認可団体
ネットワークスペシャリスト試験の認可団体は「経済産業省」で主催しているのは「情報処理推進機構」です。経済産業省は日本の行政機関のひとつで、情報推進機構は日本のITを技術や人材面で支えるために2004年に設立された独立行政法人です。
受験条件
年齢などの制限はなく誰でも受験可能です。
誰でも受験はできますが、公式サイトには「IT人材としての専門分野を持ちネットワークに関する技術を活用し、情報システムの企画・定義・開発・運用・保守において役割を果たすとともに、固有技術の専門家として情報セキュリティを含む情報システムの技術支援を行う者」というような記載があります。
合格率
2009年~2019年の合格率を平均すると14.4%でした。
資格のジャンルは違いますが、公認会計士や税理士と同じくらいの合格率と言われています。
1年当たりの試験実施回数
試験開催回数は1年に1回です。
令和元年までは10月(秋季)の開催でしたが、令和3年からは4月(春季)の開催となります。
試験科目
試験は午前と午後に分かれていて、午前が四肢一択で午後は記述式になっています。
試験科目
試験科目と出題範囲は下記の通りです。
- テクノロジ系
・コンピュータシステム
コンピュータ構成要素、システム構成要素
・技術要素
ネットワーク、セキュリティ
・開発技術
システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術
- ネットワークシステムの企画、要点定義、開発に関すること
- ネットワークシステムの運用、保守に関すること
- ネットワーク技術、関連法規、標準に関すること
- ネットワークサービス活用に関すること
- ネットワーク、アプリケーション技術に関すること
午前Ⅰの試験免除について
下記のいずれかに該当する場合は申請によって、その後の2年間は試験が免除されます。
- 応用情報技術者試験の合格者
- 下記のいずれかの高度情報処理技術者試験の合格者
・ITストラテジスト試験
・システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
・ネットワークスペシャリスト試験
・データベーススペシャリスト試験
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験
・システム監査技術者試験
・情報処理安全確保支援士 - 上記のいずれかの高度情報処理技術者試験の午前Ⅰの試験で基準点以上を得た者
採点方式と合格基準
採点は素点方式を用いています。
午後Ⅱの記述式のみ採点方法は異なり問題で求められている論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などを評価視点として内容を評価します。
※問題で示す指示に従わない場合は解答内容に関わらず減点になる場合があります。
合格基準は満点の60%を基準点として、それ以上の得点で合格となります。
午後ⅡのみA~Dで評価され、A評価のみ合格となります。
ただし、午前Ⅰで基準点に達しなかった場合は不合格とみなし、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの試験を受けることは出来ません。
午前Ⅱ、午後Ⅰも同様に基準点に達しなかった場合は次の試験を受ける事はできません。
取得に必要な勉強などの費用
ネットワークスペシャリスト試験の勉強するのにおすすめな参考書や問題集があります。
左門至峰による ネスペ教科書 改訂第2版
- 出版社名:ブイツーソリューション
- 商品名:左門至峰による ネスペ教科書 改訂第2版
- 価格:¥2,178(税込)
2018年に発売した大幅改訂された「ネスペ」の教科書です。
これまでの過去問を徹底的に研究して、試験に出るところをまとめてあります。
図やイラストを多く使用しているので、わかりやすいです。
ネスペの基礎力 プラス20点の午後対策
- 出版社名:技術評論社
- 商品名:ネスペの基礎力 プラス20点の午後対策
- 価格:¥2,816(税込)
午後試験解答の前提になるのは基礎知識なので、こちらの教科書で143問の知識確認問題で力をつけましょう。
ただの用語暗記ではない「実践力」も身につきますよ。
ネスペR1 ―本物のネットワークスペシャリストになるための最も詳しい過去問解説
- 出版社名:技術評論社
- 商品名:ネスペR1 ―本物のネットワークスペシャリストになるための最も詳しい過去問解説
- 価格:¥2,948(税込)
ネットワークスペシャリスト試験の「午後Ⅰ・午後Ⅱ」に的を絞って徹底的に分析して、取り組み方を解説した教科書になっています。
答えを導き出す思考プロセスや解答の組み立て方もよく分かるように作られています。
1問1答300問題も掲載しています。
受験料
筆記試験の場合は令和3年の秋季(10月頃)から7,500円に変わりました。
※CBT試験の場合は令和4年4月から上記の料金が適用されます。
受験申込方法
情報処理推進機構のサイトから「受験申込み」→基本情報技術者試験・情報セキュリティマネジメント試験の「こちら」をタップ→「試験実施」に申し込みができる試験が表示されているので、案内に沿って進めてください。
まとめ
今回は「ネットワークスペシャリスト試験」について紹介しました。
ITの世界は現在も成長しています。
ネットワークスペシャリストだけでなくIT業界に関わっている方は、新しい知識と技術のアップデートをし続けないといけません。
4段階のレベルで最高難易度のレベル4にあたる資格で多くの知識と経験が必要ですが、この資格があればより良い条件の企業に転職することも可能になるでしょう。
興味のある方やネットワークエンジニアの方は「ネットワークスペシャリスト」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
・基礎理論
離散数学、応用数学、情報理論、通信理論、データ構成、アルゴリズム、プログラム言語、マークアップ言語など
・コンピュータ構成要素
プロセッサ、バス、入出力装置、システムの構成、ミドルウェア、開発ツール、オープンソースソフトウェア、ハードウェア全般など
・技術要素
ヒューマンインターフェイス技術、マルチメディア技術、データベース設計、トランザクション処理、ネットワーク方式、通信プロトコル、情報セキュリティ、セキュリティ実装など
・開発技術
システム要件定理、システム方式設計、ソフトウェア方式設計、ソフトウェア構築、ソフトウェア保守、開発プロセス、知的財産適用管理など
・プロジェクトマネジメント
統合マネジメント、スコープマネジメント、タイムマネジメント、品質マネジメント、リスクマネジメントなど
・サービスマネジメント
サービス設計、サービスマネジメント構成、ファシリティマネジメント、システム監査、内部統制など
・システム戦略
情報システム戦略、業務プロセス、ソリューションビジネス、システム活用促進、システム化計画、要件定理、調達計画など
・経営戦略
経営戦略手法、マーケティング、経営管理システム、技術開発戦略の立案、ビジネスシステム、エンジニアリングシステム、産業機器など
・企業と法務
経営組織論、OR/IE、会計財務、知的財産権、セキュリティ関連法規、労働関連、ガイドライン、技術者倫理、標準化関連など