世界中でゴスペルブームを引き起こした名作「天使にラブ・ソングを」

世界中でゴスペルブームを引き起こした名作「天使にラブ・ソングを」

今回ご紹介する映画「天使にラブ・ソングを」は「ダーティー・ダンシング」のエミール・アルドリーノ監督の作広げられるコメディー映画です。

アメリカで大ヒットしてロングラン上映され、世界中でゴスペルブームを引き起こしました。日本でも大ヒット。何度も地上波のテレビで放送される定番の映画となっています。

今でもその人気は高く、映画をあまり見ない人でも名前ぐらいは知っているのではないでしょうか?

主役は「ゴースト~ニューヨークの幻」のウーピー・ゴールドバーグ、そして、修道院長役は「ハリーポッター」シリーズでおなじみのマクゴナガル先生のマギー・スミスが演じています。

それでは、映画「天使にラブ・ソングを」のあらすじや見どころなど、詳しく見ていきましょう。

 

あらすじ(ネタバレあり)

ネバダ州のクラブで売れない歌手として働いていたデロリス。ある日、愛人関係にあるヴィンスに対して、なかなか妻と別れないことから痺れを切らし、別れを告げようと彼のもとへ向かいます。

すると、そこでヴィンスが殺人を犯している現場を目撃します。急いでその場を離れたものの、その日以来デロリスは命を狙われる羽目になってしまいます。

ヴィンスは周囲一帯に縄張りをもつギャングでした。デロリスが命を狙われる可能性があると思ったサウザー警部は、ヴィンスが逮捕されるまでの間、一番安全だと思われる場所カトリック系の聖キャサリン修道院へデロリスを連れて行き匿わせます。天使に刑事

シスターになったデロリスですが、元々クラブで歌っている歌手。修道院の質素な暮らしに馴染めません。
デロリスは仕事を覚えていきますが、最初は掃除担当になります。そんな中、デロリスを心配してメアリー・ロバートが部屋に来てくれました。

自分の心に正直に生きることを2人は語ります。その後、デロリスは修道院を抜け出してクラブに行きます。そこに、メアリー・ロバートとメアリー・パトリックが来てしまい、3人で修道院の誓いを破ってしまうのでした。

デロリスは院長から聖歌隊の指揮を任されます。
聖歌隊はボロボロでした。そこで、デロリスはパート分けをして歌の指導を行い、毎日練習するようになりました。

ミサでの歌は徐々に上達し、綺麗なメロディーを奏でられるようになりました。また、アレンジを加えたことで修道院に来ないような人々にも響き、今までミサに来ない人も修道院を訪れるようになりました。

修道院の外に出て街の奉仕活動をはじめたシスターたち。デロリスはすっかりシスターたちと仲良くなっていました。

そして、街の清掃や街人たちと交流し始めるシスターたちは街の人気者になります。

聖歌隊がテレビで紹介されたことで、ゴスペルを聞きに来た人々であふれかえす大聖堂。
その人気はローマ法王の元まで届き、アメリカ訪問時に聖歌隊の歌を聞きにミサに来てくれるという話になります。

しかし、平穏な日々も束の間、警察内部の情報が漏れたことでローマ法王を迎えたミサの前日にデロリスがさらわれます。

誘拐の現場に居合わせたために巻き添えでさらわれ、デロリスの機転で逃げ出したシスター・ロバートの報告でデロリスの素性に対する疑いが持ち上がります。

修道院長の口から彼女の本当の素性を知らされた修道院のシスターたちは動揺しますが、シスター・ロバートは「たとえ本物の尼僧でなくとも自分たちを教え導き、歌うことの楽しさや素晴らしさを教えたデロリスを救いた」と訴えます。

そして、デロリスを救うため、一丸となってヴィンスのアジトであるリノのムーンライトラウンジへ乗り込んでいきます。

その頃、ヴィンスの部下二人はデロリスの殺害を頼まれたものの、シスターの姿をしているデロリスをなかなか殺すことが出来ずにいました。

デロリスはその隙を見計らって逃げ出したところ、無事に修道院長率いるシスターたちと合流を果たします。

しかし、ついにヴィンスが直々にデロリスを殺そうと銃を構えたその時、サウザー警部が現れ、ヴィンスと部下二人を取り押さえて逮捕、シスターたちは皆無事に救出されました。

デロリスは修道院のみんなに謝りますが、院長は「ありがとう」と言い、みんなで修道院へ戻ります。

いよいよミサ当日。ローマ法王が見守る中、大聖堂は人々で超満員。

そして、シスターたちの集大成「I will follow him」聖歌隊のリズミカルでパワフルな歌声が響き渡ります。

大聖堂は拍手喝采。ローマ法王も大きな拍手を送られます。
コンサートを大成功に終わります。

キャスト

シスター・メアリー・クラレンス(ウーピー・ゴールドバーグ)

本作の主人公。愛人ヴィンスが部下を殺害させる現場を目撃し、ヴィンスに命を狙われるようになったことから、警察のサウザー警部補のアイデアで、サンフランシスコの修道院に身を隠すことになります。

修道女の黒い服や規律の厳しい生活を強制され、ストレスをためていきますが、修道院長から歌の下手な聖歌隊への加入を命じられたことをきっかけに、閉塞感の漂う修道院に改革の嵐を巻き起こしていきます。

少々ひねくれてはいますが、明るく茶目っ気があり、根は優しくて面倒見がよいデロリスは、徐々に修道院のシスターの信頼を得ていきます。

修道院長の方針に反するものの、地域との交流を活発に行いはじめ、テレビが取材に来るほどの話題を呼ぶようになります。

しかし、ヴィンスによって居場所を知られてしまい、ヴィンスの部下であるウィリーとジョーイによって車に押し込まれ、リノのカジノに連れ戻されます。

すきをついて逃げ出し、カジノまで助けに来た修道女たちと再会します。ヴィンスに追いつめられるものの、間一髪でヴィンスは逮捕されます。

ヴィンス・ラ・ロッカ(ハーヴェイ・カイテル)

デロリスの夫。離婚には消極的でデロリスに愛想を尽かされます。

麻薬やマネーロンダリングのビジネスに手を出しており、警察に目をつけられています。手下のジョーイとウィリーに殺しなどの仕事をさせています。

裏切り者の運転手を手下に撃ち殺させた現場をデロリスに目撃されたため、デロリスに懸賞金をかけ、25万ドルで生死は問わないという手配書を配ります。

最終的にデロリスを追い詰めるものの、駆けつけてきたサウザー警部補に肩を撃たれ、怯んだ隙をつかれて逮捕されます。

サウザー警部補(ビル・ナン)

裏社会の大物であるヴィンス・ラ・ロッカを追っている警察の警部補です。ヴィンスが命じた殺人を目撃して警察に駆け込んだデロリスを聖キャサリン修道院に匿います。

内通者によってヴィンスがデロリスの居場所を知ったことが分かり、デロリスを修道院から連れ出しに向かいますが、デロリスはリノにあるヴィンスのカジノに連れ去られてしまいます。

ヴィンスがデロリスに銃を向けたところに現れ、ヴィンスの肩を撃ちその場でヴィンスを逮捕。デロリスを助けます。

キャスト(修道院)

修道院長(マギー・スミス)

サンフランシスコにある聖キャサリン修道院の修道院長。厳格で規律を重んじる反面、地域住民との接触を危険と考えています。

一方で、修道院の資金難に苦しんでおり、当初はカジノのシンガーであるデロリスを匿うことに否定的でしたが、警察から1万ドルの寄付を受けられることから同意します。デロリスとは会った時から自分とは合わないと感じていました。

デロリスに聖歌隊に入るように命じ、下手だった聖歌隊がミサで見事な歌を披露すると満足げな表情を浮かべるものの、続いて手拍子しながら派手なパフォーマンスを始めると顔をしかめます。

デロリスがヴィンスの部下にさらわれた時には、デロリスを助けるために修道女たちとともにリノのカジノに向かいます。

デロリスのことを「ただの女だ」と言うヴィンスに対し、「彼女は聖キャサリン修道院のシスター・メアリー・クラレンスです。寛容と高潔と愛の体現者です。お約束します。彼女は修道女です」とヴィンスに言い返します。

メアリー・パトリック(キャシー・ナジミー)

聖キャサリン修道院の修道女。ふくよかな体格とハイトーンの歌声がトレードマークです。明るい性格で音楽やダンスが大好き。聖歌隊に所属しており、ひたすら声を張り上げる姿を見せます。

新しくやって来たデロリスに興味津々で、彼女が抜け出してバーに行った時も後をつけていき、ジュークボックスの曲に合わせてバーの女性客とダンスを踊る姿を見せます。

メアリー・ロバートやメアリー・ラザラスともにデロリスと親しくなり、こっそりと4人でアイスクリームを食べたりします。

聖歌隊に入ったデロリスから声を張り上げるだけではなく、他の歌声と調和させながら歌うことを教わります。

デロリスが連れ去られたことを知り、他の修道女とともにリノに向かいます。

メアリー・ロバート(ウェンディ・マッケナ)

聖キャサリン修道院最年少のシスター。修道院になじめずにいるデロリスに目覚まし時計を貸してあげるなど、優しい女性です。

「自分にしかできないことをしたい」と語る一方で、自分に自信を持てずに悩んでもいます。

聖歌隊に入ったデロリスの指導によって大きな声で歌えるようになり、ミサではソロパートも担当するようになります。

デロリスが誘拐された時に一緒に車に押し込まれますが、デロリスの機転で車から降ろされると、警部補や
修道院のメンバーにデロリスが連れ去られたことを話し、他の修道女とともにリノに向かいます。

メアリー・ラザラス(メアリー・ウィックス)

聖キャサリン修道院では聖歌隊の指揮者を務めています。かつては、カナダのバンクーバーにある修道院にいました。森にある修道院で電気もなく、冬は裸足で過ごしたことから、聖キャサリン修道院のことを「ヒルトン・ホテルのよう」といいます。

修道院長の命令で聖歌隊に入ったデロリスを、修道院長が指揮者に指名したと思い込み、当初はデロリスに対して良い感情を持っていませんでした。

しかし、隊を立て直したデロリスに好意を抱くようになり、メアリー・パトリックやメアリー・ロバートともに仲の良い関係になっていきます。

オハラ司教(ジョゼフ・メイハー)

オハラは聖キャサリン修道院の司教です。ミサの参加者が少ないことをいつも嘆いていましたが、デロリスが参加した聖歌隊の歌声によって教会に足を運ぶ人が現れたことをとても喜んでいます。

派手なパフォーマンスに否定的な修道院長とは反対に聖歌隊を褒め、修道院長も新しくなった聖歌隊を認めざるを得なくなります。

聖歌隊や地域住民との交流についてローマ法王に手紙を書いたところ、法王が訪問することになり興奮する姿を見せます。

基本情報

基本情報
監督       エミール・アルドリーノ
脚本       ジョセフ・ハワード
製作       テリー・シュワルツ
製作総指揮    スコット・ルーディン
出演者      ウーピー・ゴールドバーグ ・ マギー・スミス ・ ハーヴェイ・カイテル
音楽          マーク・シャイマン
撮影          アダム・グリーンベルグ
編集          コリーン・ハルシー  ・ リチャード・ハルシー(英語版)
製作会社                 タッチストーン・ピクチャーズ  タッチウッド・パシフィック・パートナーズ
配給          ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ〔アメリカ・ジャパン〕
公開          〔アメリカ〕 1992年5月29日 〔日本〕1993年4月17日
上映時間                  100分
製作国                      アメリカ合衆国
言語        英語
興行収入      $139,605,150〔アメリカ・カナダ〕        $231,605,150〔世界〕

主演 ウーピー・ゴールドバーグ

主演のウーピー・ゴールドバーグは、ニューヨークのチェルシー出身です。

ニューヨーク大学を卒業後、カリフォルニアでスタンダップ・コメディの修行を積み、映画「カラーパープル」でオスカー主演女優賞にノミネートされ、一躍スター女優となりました。

陽気で軽快な個性を武器にコメディーとシリアスの両面を演じて活躍する一方、隠密トークショーを開催するなどトークへのこだわりもあったようです。

2007年には女優業から引退すると発表しますが、2010年トイストーリー3に声優として復帰しその後も活動を続けています。

1990年の「ゴースト ニューヨークの幻」でアカデミー助演女優賞を受賞。そのほか、ドラマ界ではエミー賞、音楽界ではグラミー賞、演劇界ではトニー賞に輝いています。

ショービジネスを代表する4つの賞を制覇した数少ない人物で、ウーピーのほかには、オードリー・ヘップバーンやスコット・ルーディン、ジョン・レジェンドらがいます。

その演技と音楽の才能は、ソウルフルな「音楽コメディー」のこの作品で存分に発揮されています。天使にシスター

劇中の音楽に注目

「音楽映画」なので、もちろん劇中の美しい賛美歌ゴスペルにも注目です。

讃美歌・ゴスペル

①「Hail Holy Queen」・・・「Oh マリア~」が頭に残る一曲。清らかで静かな美しい出だしに始まり、途中からノリの良いゴスペル調になる、聖母マリアを称える歌で英語とラテン語で歌われます。

デロリスが一番初めに指導した曲、ミサで披露した際、下手くそだった聖歌隊の歌声が大変身し皆を驚かせ、街の若者たちも聞こえて来る歌声に惹かれ聖堂に集まって来ます。

②「My god (My guy)」・・・軽快でポップスさが一番濃く出ていて、曲の出だしが劇風なのが面白い、こちらはアメリカの歌手メアリー・ウェルズの「My guy」をアレンジしMy Godに変えて、聖母マリアの事を歌っている。

③「I will follow him」・・・伝統的な讃美歌風の美しい出だしで始まり、厳かな雰囲気が途中から一転、力強いピアノ演奏にリズミカルなゴスペルに変わり、ハスキーでパワフルなメアリー・ロバートの声が響き渡ります。

見学に来ていたローマ法王も思わず手拍子してしまう、ノリの良く、聖歌隊たちの集大成ともいえる素晴らしい歌です。

また挿入歌には、フォンテラ・バス「Rescue Me」やエッタ・ジェームズ「Roll With Me Henry」、ディー・ディー・シャープ「Gravy」など、50~60年代の名曲が多数登場します。

天使にラブ・ソングを 「名言集」

  • 神があなたをここに連れてきたのよ。考えなさい」(修道院長)
    修道院での生活を余儀なくされるデロリス。しかし、これまでとは全く異なる厳格で窮屈な生活に耐えられなくなっていきます。
    そんなデロリスに、規律に厳しい修道院長が伝えた言葉です。

納得のいかないデロリスですが、こうやって感情をぶつけられる修道院長とのやり取りがあったおかげで、修道院にとどまることが出来たのかもしれません。

  • 「目立つために生まれてきたような人ですわ」(修道院長)
    警察からデロリスをかくまうよう依頼された修道院長。派手な服装・髪型で訪れたデロリスをひと目見て、「隠せるような人ではありません。目立つために生まれてきたような人ですわ」と言います。

しかし、デロリスをかくまうことで警察から1万ドルもの寄付受けられるという背景もあり、受け入れざるを得なくなります。

聖歌隊の歌をきっかけにデロリスはTV取材を受けるほど有名な存在になってしまい、そのセリフは現実のものとなります。

  • 「変えられるわ。楽しみましょうよ」(デロリス)
    聖歌隊の指揮を任されることになったデロリス。ナイトクラブで歌手をしていたデロリスは聖歌隊の歌を聞いて愕然とします。

決して人前で聞かせられるようなものではなかったのです。そこからデロリスの特訓は始まり、ある日のミサで聖歌隊はパフォーマンスを合わせた歌を披露します。これを見た修道院長は、今すぐやめるようデロリスに進言します。

それに対し「教会には行くのはみんな好きじゃない。なんで?それはつまらないからよ。」とデロリスは反論します。そして、このセリフを発します。

修道院が抱える問題と既存のあり方、楽しさは決して悪ではない、というデロリスの価値観が伝わるセリフです。

  • 「薄情ゆえに地獄へ落とされませぬように(シスターたち)
    デロリスがリノのカジノに連れ去られてしまったことを知った修道女たちは、デロリスを助けに向かおうとします。

ヘリ会社にやって来た修道女たちでしたが、リノまでは1,500ドルかかると操縦者からいわれます。

お金のない修道女たちは、「薄情な男を救いたまえ」「髪が抜けてしまいませんように」などかなりのブラックジョークで脅迫します。

最初はダメだの一点張りだった操縦者が、最後は自らお願いするように了承するシーンは、かなり笑えます。

天使に合唱

  • 「寛容と高潔と愛の体現者です」(修道院長)
    ヴィンスに捕らわれたデロリス。ヴィンスはデロリスのことを「ただの女だ」と言いますが、この言葉を聞いた修道院長が、ヴィンスにこう反論します。

これまでデロリスと相容れることのなかった修道院長ですが、デロリスが来たことによって修道院が町の中心となり、町の人々や修道女たちがイキイキとしている姿に「本当のあるべき姿」を見つめ直します。

そして、デロリスのことを褒め称え「デロリスは修道女である」と認めます。犬猿の仲だった2人の間にはいつの間にか深い絆ができていたことを感じさせられるセリフです。

まとめ

今回は「天使にラブ・ソングを」をご紹介しました。

「天使にラブ・ソングを」というタイトルですが、原題は「Sister Act」です。
さまざまな翻訳ができますが、修道女としてふるまうデロリスからイメージすると「修道女のふり」といったところでしょうか。

しかし、「天使にラブ・ソングを」というタイトルでぐっと魅力的な作品になります。このタイトルが日本でも大ヒット理由の1つでは?と思ってしまいます。

1992年に公開され大ヒットしたこの映画は、何年経っても支持の高い人気作品です。
あまり映画を観ない人でも分かりやすく、テンポのいいストーリー展開が人気のひとつですが、何といってもその魅力は歌の素晴らしさです。

聖歌隊が淡々と歌い、お世辞にも上手いとは言えなかったものが見る見る上達し、さらには、ゴスペルにまでアレンジして披露されるシーンは、一緒に歌い出したくなるほど楽しさが伝わってきます。

そしてデロリスが来た事で俗世と関わる事のなかったシスターたちが、街の人々と交流をはじめ、地域貢献をしている場面はなんとも健気で可愛らしく惹かれてしまいます。

ただ軽快なだけでなく、「新しい出会いや音楽の力で自分の世界も変えることができる」そんなメッセージが感じられて、とても前向きな気持ちにさせてくれる映画です。

「天使にラブ・ソングを」今後も、長く語り継がれる作品の1つだと思います。