今回ご紹介するのは、2008年に制作されたコメディ映画「イエスマン “YES”は人生のパスワード」です。
アメリカとイギリスの合同制作で作られたこの作品はペイトン・リードが監督をつとめ、2005年にイギリス人の俳優でありコメディアンでもあるダニー・ウォレスが書いた「Yes Man」という本が原作です。
「ノー」が口癖の人生に後ろ向きな男カールは、生き方を変えるために参加したセミナーで、「どんな事に対しても「イエス」と答えることが、意味のある人生を送るための唯一のルール」と教えられます。
それから「イエス」を連発するようになったカールの運気は上がっていくのですが・・・。
「マスク」、「トゥルーマン・ショー」のジム・キャリーが主演するコメディドラマです。
この作品はジム・キャリーの代表作ですが、アメリカでは映画に対して賛否両論の意見がでており、「好きな人は好き、嫌いな人は嫌い」と意見がはっきり分かれる映画ともいわれています。
今回はそんな本作のあらすじや、見どころ、レビューなどをご紹介します。
Contents
あらすじ
銀行員のカールはいつもプライベートでも仕事でも答えは「NO」と言い、友人との付き合いやさまざまな勧誘・職場の個人融資の審査などあらゆることを断る生活を送っていました。
電話が鳴っても出ない、友人からの誘いも面倒なので断る、話しかけたい相手には愛想笑いでやり過ごす。
ローン申請用紙には「却下」のハンコを押し続ける冷酷さなので、3年前に妻ステファニーには出て行かれてしまいました。
仕事では上司ノーマンから昇進話がダメになったと伝えられ、親友のピーターの婚約パーティーもすっぽかし、このままでは友情すら危なくなってきました。
「このままでは孤独な人生を歩むことになる」という親友からの忠告に一念発起したカールはとあるセミナーに出かけます。
それは「YES MAN」のセミナーでした。
大勢の参加者がホールに集まる中、ステージに現れた代表のテレンスは「イエスの誓い」について説きはじめます。
カールはセミナーに参加したその日から、何事にもイエスで答える「イエス運動」をしながら生活することになります。
外に出た直後、ホームレスから車に乗せて欲しいとい言われたカールは「イエス」と答えます。しかし、携帯を貸したおかげで電池切れになり、所持金も全部あげてしまいます。
ホームレスを公園まで送っていったカールは帰りに車がガス欠になり、数キロ離れたガソリンスタンドまで歩く羽目になりました。
イエスの誓い」をしたことに後悔しながら、ガソリンスタンドでガソリンを入れていたとき、カールの前にスクーターに乗った美女アリソンが現れます。
アリソンはカールをスクーターに乗せて家まで送ってくれて、別れ際にキスまでしてくれました。カールが離婚してからはじめてときめいた出来事でした。
「その後、銀行員のカールはどんな融資のお願いにも「イエス」と答え、次々と融資をして人々から感謝されます。カールはピーターにこれまでの自分の言動を謝り、イエスマンになったことを伝えます。
ある日、カールは同じアパートに住むお年寄りの婦人ディリーに頼まれて彼女の部屋のリビングに棚を取り付けてあげました。
彼女のお礼にイエスといえなかったカールは、直後にアパートの階段から転げ落ちて、近所の獰猛なドーベルマンに襲われかけます。
これが誓いに背いた罰だと思った彼は、これ以降選択肢には必ず「イエス」と答えるようになり、その後の人生は急展開を迎えます。
数日後カールは、偶然行ったライブハウスで歌を歌っているアリソンと再会するのでした。
カールは彼女の仕事であるジョギングフォトに参加したり、2人で野外コンサートホールに忍び込んで2人だけの時間を過ごしどんどん親しくなっていきます。
刺激的な生活が好きというアリソンは、さまざまなことを陽気に行なっているカールの姿に惹かれ2人は恋人になります。
ある日2人は飛行機のチケットを予約せず、空いている便に乗るという旅行に出かけました。さまざまなところを旅行中、アリソンから一緒に住むことを提案されます。
いつもであればイエスと言うところでしたが、カールは少し考えてしまいました。
そして、帰りの空港にやってきた時に事件は起きます。カールはテロリストであることを疑われて警察に捕まってしまいます。
今までの「イエス」に基づいた行動や、搭乗直前にチケットを買ったこと、イラン人花嫁紹介サイトの利用などがすべて裏目に出てしまったのです。
弁護士の友人が説明してくれて、なんとか冤罪を晴らすことができましたが、今までの行動すべてが「イエスの誓い」のせいだったと知ったアリソンは怒り「信用できない」と別れを告げられてしまいます。
ある日、カールは元妻のステファニーからの電話で呼び出され、体を求められます。アリソンへの気持ちがあった彼は断りました。すると、エレベーターが停まったり、車が駐禁に捕まっていたりと散々な目にあってしまうのでした。
NOと言うと必ず災難が降りかかってくるこの状態をどうにかしてほしく、その後テレンスの車に乗り込み無理やり話をしていたところ、一緒に交通事故にもあってしまいます。
しばらくして、病院で目覚めたカール。テレンスから何もかもやみくもにYESと言えば良い訳ではないことを聞かされます。自分の胸に問いそして判断するべきだったのです。
そして、アリソンへきちんと話をしようと決心しました。
アリソンの前に現れたカール。きちんと自分の気持ちを正直に伝えたところ、アリソンは理解してくれました。
そして無事恋人同士に戻ることができたのでした。
キャスト
カール・アレン(ジム・キャリー)
銀行の融資係。元妻のステファニーとたった半年の結婚生活で離婚しています。
それから3年が経過しますが、ステファニーへの未練を抱き、親友ピーターからの電話にもなるべく出ず、DVDで映画ばかり見る生活を送っています。
ピーターから「このままでは孤独死する」と言われ、知り合いのニックに誘われて「イエスマン」となるセミナーに参加。「ノー」と断ったら悪いことが起こるという暗示にかけられます。
何でも「イエス」と答えるようになってから、アリソンという女性と知り合いになり、やがて互いに好意を抱くようになります。
アリソン(ズーイー・デシャネル)
フォトグラファーとして個展を開く活躍をし、朝6時からランニング・フォトのインストラクターもしています。
また、趣味でバンドのボーカルもしています。
元彼が理由も言わずに家を出ていったことが心の傷となっています。
ガソリンスタンドで偶然知り合ったカールが困っているのを見て、スクーターで車まで送ってあげます。
その後、ライブハウスを訪れたカールと再会。ランニング・フォトにも参加してくれた彼と次第に親しくなっていきます。
ノーマン(リス・ダービー)
カールが働く銀行の支店長です。相手を独自のニックネームで呼ぶのが好きで、カールのことは「カー」と呼び、カールが自分を「ノーム」と呼んでくれることに喜びます。
また、自宅でのコスプレホームパーティーを開くのが趣味で、「ハリー・ポッター」や「300〈スリーハンドレッド〉」のパーティーをしています。会員制スーパー「コストコ」の会員であることが自慢です。
カールを昇進させるため上層部を説き伏せようしますが、自分の職が危うくなったために取り下げてしまいます。
しかし、休日出勤を快く引き受け、「ハリー・ポッター」のコスプレホームパーティにも参加してくれたカールを何とか昇進させます。
ピーター(ブラッドリー・クーパー)
カールの古くからの友人で弁護士をやっています。2年交際していたルーシーとの婚約パーティーをすっぽかしたカールに激怒。愛想を尽かし、「おまえなんか孤独死する」と告げて去っていきます。
「イエスマン」となったカールからの謝罪を受け入れ、ルーシーのブライダルシャワーの幹事が決まらないことを知ると、断れないことを承知でカールに頼みます。
その後、ネブラスカ州のリンカーンでFBIからスパイと疑われたカールを救います。
テレンス・バンドリー(テレンス・スタンプ)
「イエスマン」となることを奨励する団体のリーダーです。セミナーに登壇し、「イエス」と答えることで人生が幸せに導かれると人々を導きます。
半信半疑のカールを見つけた時には走って駆け寄り、「人生を楽しまないから女性に愛想を尽かされる」と指摘。「イエス」と答える誓いをさせ、「ノー」と答えると災いが起こるとカールに暗示をかけます。
しばらくたったある夜、セミナーのあとに車で帰ろうとした時、誓いを解いてもらおうと車に乗り込んでいたカールに驚いて事故を起こしてしまいます。
収容された病院で、「災いなど起こらない」「イエスと答えることはきっかけに過ぎない」と語り、カールに真髄を気づかせます。
ニック(ジョン・マイケル・ヒギンズ)
カールの知り合いで、久しぶりに再会したカールに「イエスマン」となって人生が変わったことを語り、セミナーに来るように誘います。
「イエスマン」となってからは、キリマンジャロを登り、ラオスでコウモリを食べ、牛をバズーカで撃つなどして世界中を回ったと言います。
セミナーに訪れたカールの隣の席に座り、初めてセミナーに来た人を探すテレンスにカールのことを教えます。
ルーニー(ダニー・マスターソン)
ルーニーはカールとピーターの友人で、口ひげがトレードマークです。カールが「イエスマン」となったことを知り、朝までのドンチャン騒ぎにつき合わせます。
さらに、「留守中のカールの部屋を使わせてもらう」、「借りた車をぶつける」、「洗濯を頼む(ノリは使わないように命じる)」と、カールを都合良く使います。
基本情報
製作 ジム・キャリー ・ デヴィッド・ハイマン ・ リチャード・D・ザナック
製作総指揮 マーティー・ユーイング ・ ダナ・ゴールドバーグ ・ ブルース・バーマン
出演者 ジム・キャリー ・テレンス・スタンプ ・ズーイー・デシャネル
撮影 ロバート・D・イェーマン
編集 クレイグ・アルパート
製作会社 ワーナー・ブラザース ・ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ 他
配給 ワーナー・ブラザース
公開 〔アメリカ〕2008年12月19日 〔日本〕 2009年3月20日
上映時間 104分
製作国 アメリカ合衆国・イギリス
言語 英語
製作 $70,000,000
興行収入 $223,241,637
イエスマンとは?
映画の内容とは少し外れますが、通常イエスマンとはどういった人をいうのでしょうか?
イエスマンとは、目上の人から頼まれた事や意見に対して「はい」「いいですねえ」といった肯定的な返答しかしない人のことで、主にサラリーマンなど企業人に使われる言葉です。
ワンマン経営者の周りに多いとされ、一見扱い易い良い人材に見えますが、とりあえず肯定しておけばいいという日和見的な判断や、対象とする人物の気分を良くしてその庇護にあやかろうと企むゴマすりである場合があるようです。
縦社会の風土が未だに根強い日本においてイエスマンは珍しくなく、むしろイエスマンでなければ出世が遅くなったり、厄介者として組織から弾かれてしまうこともあります。
しかし、現代では自分の意見を持たない者として低く評価する企業が多くなってきています
ちなみに元々は、戦後占領下の政府当局者で国政の細部までいちいち指示を受けないと行動が出来ない人を意味する政治用語だったそうです。
イエスマンの見どころ
天才コメディ俳優 ジム・キャリー
柔らかい体と特徴的な顔をフル活用し、コメディ俳優として大物俳優の仲間入りをしたジム・キャリー。
日本では特に「マスク」や「ライアーライアー」が有名ですね。
当初は演技がオーバーで単調、下品という評価もありましたが「トゥルーマン・ショー」では生まれた頃から24時間一部始終をリアリティ番組に出演させられている男という難しい役を見事演じ切りゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞します。
ハリウッド俳優らしく離婚を2度経験しています。これに懲りて「たとえ理想の女性が現れても自分からプロポーズすることはないだろう」というほど結婚には興味がないらしいです。
近年は別れた25歳差の恋人が自殺。遺族からジムが与えたドラッグが自殺の原因だと訴訟を起こされ、更に付き合っていた頃は不倫関係にあったことが発覚し話題になりました。
このスキャンダルは、ジム・キャリーの大きなイメージダウンにつながった事は言うまでもありませんが、多くの名作を世に残してくれた彼です。いつかまた迫真の演技で私たちを笑かせてくれる日がくるはずです。
イエスマンは実話から生まれた?
原作はロンドン在住のダニー・ウォレスさんが実際に体験した記録が元になっています。
彼は22歳のとき、英国のBBC放送の最年少プロデューサーに抜擢されましたが、面倒臭がり屋なウォレスは、映画のカール同様「No Man」でした。
しかし、彼は世界一周旅行をきっかけに「Yes Man」となりました。彼は半年の間、Noと言ってきたことを全てYesと答える実験をしたのです。
スパムメールにも、Yesと答え、車買わない?の誘いにもYes。聞いたことのない平和運動に誘われれば参加しました。
もちろん、全てにYesと答えることは大変勇気がいる事ですし、言わなきゃ良かったと思ってしまう苦労も多いはずです。
しかし、Yesと言うことで”何かが変わる”ことを期待したウォレスさんはYesと言い続けました。彼の著書ではもう少し多く「Yes」と言ってみようと記載されています。
「イエスマン」の名言
①「もしお前が人生を変えないなら、孤独な男で終わることになるぞ」
親友ピーターの婚約パーティーをすっぽかした夜、ピーターが家にやってきてカールに“最後通告”をします。
ピーターが自分の人生を改めて考え直し、このままではいけないと重い腰を上げるきっかけとなる言葉です。
②「人生は見学できないんだよ」
イエスセミナーの代表テレンスの言葉です。「今日は見学だけですから」というカールへ自分の人生は自分だけが主人公であるというメッセージです。
人生はいつだって本番。1秒たりとも無駄にはできないといということですね。
③「この世は遊び場よ。子供の頃は知っていたのにみんな途中で忘れちゃう」
ホームレスの男を公園に送った帰りに出会ったアリソンの言葉です。
子どもの頃はあんなに楽しむことに必死だったはずなのに、いつから人生は辛いものだと思うようになったのでしょうか。
私はこの言葉が最も印象に残りました。いい言葉です。
④「何ごとに対してもオープンになってみたら人生が変わってきた!」
セミナーに参加したその日から、何事にもイエスで答える「イエス運動」をしながら生活することになります。
まわりからのどんな要望にも次々とイエスということで、アリソンとの出会いや、職場での昇進・・・と面白いほど人生が好転していきます。
以上、イエスマンから名言・名セリフをいくつかご紹介しました。
笑いの多い作品ですが、心に響く名言がこのほかにもたくさんでできます。
注目してみてください。
「イエスマン」のレビュー
レビューをご紹介します。
自分の実生活と重ねてみて確かに消極的だったことで逃したものもたくさんあるんだろうなぁと思う。極端なポジティブさで笑いを取りつつ最後にはNOと言うことの大切さにも触れているところに好感が持てる。
私が男性だからかも知れませんが、男性向けコメディと思えた。ただ、人生楽しむためにはネガティブよりポジティブですね。迷った時はイエスかな?「楽しい人生を送りましょう」って余韻を頂きました。もう一度みたい。
まとめ
いかがでしたか? 今回は「イエスマン “YES”は人生のパスワード」をご紹介しました。
気軽なコメディかと思いきや、ヒューマンドラマとしても恋愛映画としても見られる映画。イエスマンは最終的には「生き方のヒント」を考えさせられる素敵な内容です。
特に、人生に行き詰っていると感じている人や落ち込んだりしている人に観て頂きたい映画です。
この映画で心からイエスと言うことに気が付くためにイエスを言いまくって生活するということをジム・キャリー演じるカールが実践しているわけですが、これは本当に試してみる価値がありそうです。(勇気がある方はぜひ)
断りがちなさまざまな誘いに応えることで可能性や視野が広がるのは間違いないですし、何が自分にとって大切なものなのかを気付くことも間違いなく増えるでしょう。
イエスマンを観て「ちょっとやってみようかな」と思った後の人生は、想像するだけでなんとなく楽しみな気分になったりします。
笑って楽しめて、前向きになれて。
大切なことを教えてくれるおすすめの映画です。