ピアノの調律技能士について

ピアノの調律技能士について

ピアノを習ったことある方ならご存知の通り、ピアノは長い間使っていると音色が狂ってきますよね。
そうしたピアノの音の調節をするのが調律師という職業です。
ピアノの具合は調律師の方によって保たれているのです。
ではこの調律師はどんなふうにその職業になるのでしょうか。
今回はピアノの調律技能士について見ていきます。

適用する仕事

ピアノ調律技能士の方は、資格を取得すると主に下記のような就職先に勤めることができます。

主な就職先
  • ピアノメーカー
  • 楽器販売店
  • 調律センター
  • 中古ピアノ取扱店
  • ピアノ教室のメンテナンススタッフ

販売に備えて商品のピアノを点検・調律し、不備がないように保守するほか顧客の要請に応じて、ときには個人宅や学校などの施設に主張して調律を行うこともあります。
なかにはコンサートチューナーとして働く方もいます。

ピアノ調律技能士はこんなことが解決できます。

  • ピアノの調律や整調、整音を通じて、音色の最高の状態を整える
  • ピアノの構造への知識や音を聞き分ける力を活かして、演奏家の好みに合った調律にカスタマイズする

ピアノ調律技能士は音楽が好きで楽器の音色に敏感な人に向いています。
ピアノ経験者なら音程の微妙なズレが感覚的にわかるようになります。

また、耳が命の仕事ですから常に健康なコンディションを維持できる方が良いでしょう。
聴覚は心身の状態によって影響されるからです。
それに顧客との対話も大切な業務の1つですので、コミュニケーション能力も求められます。

おおよその年収とキャリアパス

ピアノの内部の鍵盤の構造がわかる写真ピアノの調律に対しての料金は1回およそ1万円~と決して安くはありませんが、調律師というのは会社勤めの場合であれば月給制ですので調律の数だけ収入が増えるわけではありません。

楽器店や調律師事務所、ピアノ工場に勤める場合は10年間同じところで働いていても年収は400万円以下らしいです。
また、昇給のチャンスもあまり無いようです。
ですが、会社勤めだと雇用形態に応じて福利厚生や各種手当が発生します。

しかし、業務委託やフリーランスで働いている場合はこうした手当ももらえません。
働いた分だけ収入が増えるフリーランスの場合でも、調律自体が集中力と体力を必要とするため1日3台までの調律が限界らしいです。

現在、日本ではおよそ3000人くらいの調律師がいるだろうと考えられています。
少子化の影響でピアノの生産・販売台数は減少傾向にありますが、ピアノは一度購入すると維持していくためにどうしてもメンテナンスが必要になるので、近い将来に調律師の仕事自体が無くなることは考えにくいです。

ピアノ調律は一種の職人芸であり、技量も差がつくのでスキルと熱意を兼ね備えた方だけが生き残っていくだろうと思います。
腕の良い調律師として有名になれば、各地のコンサートホールなどから依頼を受けて調律に出向く場合もありますよ。

認可団体

一般社団法人 日本ピアノ調律師協会のロゴマークピアノ調律技能士の資格を主催している団体は「一般社団法人 日本ピアノ調律師協会」というところです。

こちらの団体が設立されたのは、大正6年に福島琢郎という方がピアノ技術習得後米国留学を終え帰国した時にチューナーズ・ギルドの結成を提唱したことが始まりです。

また、大正13年に同じく米国から河野三郎という方が帰国し、米国のナショナル・チューナーズ・アソシエイシヨンの日本版結成を提唱し、それらの働きかけが基になって大正14年関西に「関西ピアノ技術者協会」、昭和5年関東に「ピアノ技術者協会」がそれぞれ誕生しました。

そして、翌昭和6年に東西が合流し、現在の「一般社団法人 日本ピアノ調律師協会」の前身である「全国ピアノ技術者協会」が結成されました。

受験条件

1級・2級・3級とあります。

3級

学科試験
  • 1年以上の実務経験を有する者
  • 大学、専門学校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校、養成機関を卒業または普通職業訓練を修了した者
  • 大学、専門高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校、養成機関に在学する者、または普通職業訓練をうけている者
実技試験
3級の学科試験の合格者

2級

学科試験
  • 2年以上の実務経験を有する者
  • 専門高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校、養成機関を卒業または普通職業訓練を修了後、1年以上の実務経験を有する者
  • 大学を卒業した者
  • 3級の技能検定に合格した者
実技試験
2級の学科試験に合格した者

1級

学科試験
  • 7年以上の実務経験を有する者
  • 専門高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校、養成機関を卒業または普通職業訓練を修了後、5年以上の実務経験を有する者
  • 大学を卒業した後に3年以上の実務経験を有する者
  • 2級の技能検定に合格し、なおかつその後2年以上の実務経験を有する者
実技試験
1級の学科試験に合格した者

合格率

  • 2018年 35.3%
  • 2019年 25.6%
【2018年合格者】
1級 52人
2級 56人
3級 67人
【2019年合格者】
1級 57人
2級 57人
3級 63人

1年当たりの試験実施回数

各級・各試験それぞれ1回ずつあります。
各級共に学科試験、実技試験、学科試験免除者のための実技試験それぞれあります。

試験科目

分厚い本と楽譜と茶色いミニチュアピアノ試験科目は細かいです。

3級

学科試験

  1. 音楽一般
  2. ピアノ概論(歴史、使用と保守管理、機構と材料)
  3. ピアノ調律
  4. ピアノ整調
  5. ピアノ修理
  6. ハイブリッドピアノのメンテナンス

実技科目

  1. ピアノ調律作業(アップライトピアノ)
  2. ピアノ整調作業(アップライトピアノ)
  3. ピアノ修理作業(調弦、コード類交換)

2級

学科試験

  1. 音楽一般(音楽の基礎、音の性質)
  2. ピアノ概論(歴史、使用と保守管理、機構と材料)
  3. ピアノ調律
  4. ピアノ整調
  5. ピアノ修理
  6. ハイブリッドピアノのメンテナンス

実技試験

  1. ピアノ調律作業(アップライトピアノ)
  2. ピアノ整調作業(グランドピアノ、アップライトピアノ)
  3. ピアノ修理作業(調弦、センターピン交換、コード類交換)

1級

学科試験

  1. 音楽一般(音楽の基礎、音の性質)
  2. ピアノ概論(歴史、使用と保守管理、機構と材料)
  3. ピアノ調律
  4. ピアノ整調
  5. ピアノ整音
  6. ピアノ修理
  7. ハイブリッドピアノのメンテナンス

実技試験

  1. ピアノ調律作業(グランドピアノ、アップライトピアノ)
  2. ピアノ整調作業(グランドピアノ、アップライトピアノ)
  3. ピアノ修理作業(調弦、センターピン交換、ダンパーワイヤー交換)

採点方式と合格基準

学科試験は問題数50問で出題されます。
(真偽問題25問、多肢択一問題25問)
マークシート方式です。

合格基準

各級とも

  • 学科試験は加点法で、満点の70%以上
  • 実技試験は減点法で、満点の70%以上

取得に必要な勉強などの費用

チョコレートのような茶色いミニチュアピアノピアノの調律技能士は受験条件に実務経験を伴うため、普段からピアノ調律にかかわる業務を行い、身に着けていくのが着実です。
学科試験だけでなく実技試験にも備えなくてはならないので、働きながらわからないことはすぐに聞いて学びましょう。

また、専門学校に通って勉強する方法もあります。
専門学校では2年間みっちり勉強することになります。
ですが、その学費の例でいうとある学校では初年度98万円、次年度93万円と高額です。

その他には当検定の公式サイトに過去問が掲載されてありますので、そうしたものを活用してみてください。

受験料

学科試験はいずれも各8,500円

実技試験は
1級 29,500円
2級 26,500円
3級 23,500円

なお、実技試験の2級・3級には減免措置が設けられています。

減免措置条件
  • 2級または3級の実技試験を受ける者で35歳未満の者
  • 出入国管理および難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の上覧の在留資格をもって在留する者以外の者

【2級】17,500円
【3級】14,500円

受験申込方法

受検を申し込みするにはいくつか提出書類がございます。
当検定の公式サイトの実施公示(応募要領)をご覧いただくか、認定協会にてお問い合わせください。

一般社団法人 日本ピアノ調律師協会 検定係り
住所 〒101-0021 東京都千代田区外神田2-18-21 楽器会館5階
Tel:03-3255-3897 Fax:03-3255-9246
E-Mail:g-kentei@jpta.org

まとめ

グランドピアノで演奏しているピアニストの手元ここまでピアノの調律技能士についての検定内容をお伝えしてきました。
ピアノは身近な楽器ですけど、その造りは繊細にできています。
その音色を整える仕事ですからたくさん覚えることがあります。

こちらの検定には実務経験が受験条件となります。
楽器店やピアノメーカーに勤めていただき、コツコツと勉強していくのが近道でしょう。

ピアノの調律師はいわば音の職人です。
自身が調律したピアノで演奏家が素晴らしい音楽を奏でるのは、やりがいの1つになるでしょう。

音楽方面に就きたいと思う方は、ぜひこの調律師という職業も候補に入れてみてはいかがでしょうか。