今回は2016年公開のアメリカ映画「スノーデン」のご紹介です。
2013年6月、1人の人間によってある情報が暴露されます。政府による民間人への無差別監視。その仕事を任されていた彼は事の重大さに黙っていられなくなりました。
そして、自らの危険を顧みず公表。政府は世間の猛反発を買います。政府はその男を追うことになります。男の名前はスノーデン、正義の為に国に尽くした29歳のアメリカ人です。
2013年に実際に起きた暴露事件の映画化で、監督は「プラトーン」でゴールデン・グローブ賞等の受賞歴を持つオリバー・ストーンが務めました。
今回は「スノーデン」のあらすじ、キャスト、見どころなどをご紹介します。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
2013年某日、2人の記者が香港のとあるホテルで一人の男と待ち合わせをしていました。男の名前はエドワード・スノーデン。後にアメリカだけでなく世界に驚愕の事実を知らしめることになります。
エドワードの滞在する部屋に入った2人はすぐに彼に携帯を没収されます。その携帯は電波を遮断するために電子レンジの中に入れられます。2人はエドワードの話を聞くためここへ来ました。彼から依頼があったのです。
彼の依頼とはエドワードがこれまで体験したアメリカ政府、NSA、CIAの機密情報の暴露。力のあるマスコミによる世界への情報発信でした。
彼の持つ情報は大きくこの事実がばれると確実に捕まってしまうものでしが、エドワードには何としてもこの情報を世界へと発信しなければという信念がありました。たとえ自分の身が危険に冒されようとも。
国の為に尽くす、その想いで軍隊に所属していたエドワード。
しかし、その想いとは裏腹に毎日のトレーニングについていくのが必死でした。ある日、その毎日のトレーニングの重みでついにケガを負ってしまい除隊を余儀なくされてしまいます。
そんな彼が新たな仕事として見つけたのはCIAです。
国のため、この信念を絶えず持ち続けていた彼とってはこの仕事には大きな意義がありました。CIAの職員となりコンピューター関係の職についた彼はすぐにその力を見せつけます。そして、あるシステムを作り出します。
同じ時期エドワードは一人の女性リンゼイと付き合いをはじめます。リンゼイとはそれからも長いつき合いとなります。
しかし、エドワードの仕事は正義の名の元とはいえ、お世辞にも気持ちのいいものとはいえませんでした。それはある時彼の同僚により知らされます。CIAには民間人の情報を簡単に盗み見るシステムが開発されていたのです。
それがエドワードの心に大きな影を作っていきました。誰にも相談できない機密情報、それに加え民間人の盗撮、盗聴。彼の心に少しずつ政府への闇が広がっていきます。
異動が決まり日本での勤務が始まった頃彼の心は限界を迎えていました。日本へついてきていたリンゼイとはケンカをしてしまいます。
その後、彼女は自分の故郷へと帰ってしまいました。そのしばらく後、彼も追いかけ2人はまた共に生活することになります。
それでもやはりエドワードの仕事は変わらず正義の名の元に常に誰かの盗撮、盗聴を続けていました。それも「いつか起こるであろうテロから国を守るため」そう考えることに努めました。
エドワードも故郷アメリカへと戻りしばらく経った時、またしても彼に異動の命令が出ました。
行き先はハワイ。その事実にリンゼイはせっかく手に入れた安定した生活を失うことに大きな不安を抱きます。しかしその話の途中、エドワードは突如倒れてしまいます。
病院での検査の結果エドワードはてんかんだと告げられます。医者からは薬とストレスの軽減を言い渡されます。エドワードのストレスの軽減に一番なのはハワイへの移住でした。
リンゼイは彼のため移住を決意、エドワードは新しい土地で新しい任務に就きます。ハワイでの基地でエドワードはある映像を目にします。
戦地での空爆の様子をとらえた映像。それを行うシステムは以前エドワードが作ったシステムを引用したものでした。自分の作ったものが意図しない使われ方をしている、彼の心にまた一つ疑惑がよぎった瞬間でした。
そして、ある日彼は決意します。
この国の盗撮、盗聴、その他の諜報活動を世界に知らしめなくてはならない。もはやテロとは関係がない、正義の名の元それだけでは言い逃れは出来ない。エドワードは基地のパソコンから情報をコピーし持ち出します。そしてある人物に連絡を取りました。
今まで話したくても話せなかった自分の仕事の内容も、リンゼイにその時初めて話しました。
そして、リンゼイにも被害が及んでいることを伝えます。エドワードは彼女にしばらくの間実家へ戻ることを提案しますが、彼女はエドワードを待つためここに残ると決意します。
エドワードは彼女を残しその後香港へとたどり着きます。2人の記者と出会います。
そして、2013年6月、世界に衝撃的なニュースが轟きます。
「アメリカ政府による民間人への盗聴及び盗撮」ニュースはその後世間を賑わせすぐにエドワードの滞在するホテルも特定。彼は逃げるようにホテルから旅立ちました。
エドワードが無事にそのホテルから逃れられたのはひとえに記者達の協力、彼に賛同する者たちのおかげでした。
それが1人の男の運命を変えた世界の事実です。
彼はその後香港を離れロシアに亡命、現在はモスクワに滞在しているといわれています。
エドワードの恋人リンゼイもまた彼の元へと駆けつけました。
キャスト
エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
本編の主人公。アメリカ国家安全保障曲(NSA)の機密情報を暴露した元CIA職員でNSA外部契約社員。
コンピューター、特にインターネットの分野の専門家で、国民の個人情報や通信の秘密に関する機密情報を告発。
アメリカ政府がひそかに作り上げた国際的な監視プログラムの存在を暴露します。
演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット
「Mysterious Skin」「BRICK ブリック」などの映画作品で主役に抜擢。
そして、09年の「(500)日のサマー」ではエキセントリックなヒロインに翻弄される主人公の青年を好演し、ゴールデン・グローブ、インディペンデント・スピリット賞にノミネートされています。
同年には舞台でもトニー賞でノミネートされるなど、実力派俳優として活躍しています。
リンゼイ・ミルズ(シェイリーン・ウッドリー)
SNSで知り合ったスノーデンの恋人です。リベラルなリンゼイに対して「国を批判する気はない」と保守的なスノーデンは言いますが、2人の時間は幸せです。
スノーデンの転勤に合わせ、スイス、日本、ハワイでの生活を経験していくことになりますが・・・。
演:シェイリーン・ウッドリー
1999年にテレビ映画『Replacing Dad』でデビュー。2005年に『A Place Called Home』でヤング・アーティスト賞にノミネートされます。
2008年よりテレビシリーズ『アメリカン・ティーンエイジャー 〜エイミーの秘密〜』で主演を務めています。
2011年、アレクサンダー・ペイン監督の『ファミリー・ツリー』によりナショナル・ボード・オブ・レビュー助演女優賞を受賞しています。
ローラ・ポイトラス(メリッサ・レオ)
スノーデンから香港のホテルで告発を受けるドキュメンタリー作家です。
演:メリッサ・レオ
「デイブとジュディ~二人の離婚記念日~」(85)で映画デビュー。その後も映画・TVへコンスタントに出演。
家族のため犯罪に手を染める母親を熱演した08年の「フローズン・リバー」でオスカー主演女優賞初ノミネートを果たします。
そして、マーク・ウォールバーグやクリスチャン・ベイルらと共演した10年の「ザ・ファイター」でオスカー助演女優賞に輝いています。
グレン・グリーンウォルド(ザカリー・クイント)
スノーデンから香港のホテルで告発を受けるイギリスガーディアン紙の記者。
演:ザカリー・クイント
主にテレビシリーズで活躍し、『24 -TWENTY FOUR-』のアダム・カウフマン役や、『HEROES/ヒーローズ』のサイラー(英語版)役でブレイクします。
2009年公開の『スター・トレック』では若き日のスポック役を演じます。
また、『宇宙大作戦』で同役を演じていたレナード・ニモイと共演、また『スター・トレック』と関連の深いオンラインゲーム『Star Trek Online』でも共演しています。
トレバー・ジェイムズ(スコット・イーストウッド)
スノーデンにNSAのエックスキーコアの存在を教えます。その存在にスノーデンは大きなショックを受けます。
演:スコット・イーストウッド
父親は俳優で映画監督のクリント・イーストウッド。
父の手掛けた『グラン・トリノ』や『インビクタス/負けざる者たち』に出演しています。
2010年4月公開の『トランス・ワールド』で初主演を務めます。2014年公開の『フューリー』では主要キャストに抜擢され、2015年にはテイラー・スウィフトのミュージックビデオに出演。
同年公開の『ロンゲスト・ライド』ではブリット・ロバートソンと共に主演を務めます。
基本情報
スノーデン事件とは?
NSAの情報収集活動を相次いで暴露
インターネット企業のデータベースから電子メールや画像などの情報を集めていたりしたといいます。
いわゆる「スノーデン事件」とは、米国家安全保障局(NSA)がテロ対策として極秘に大量の個人情報を収集していたことを、元NSA外部契約社員のエドワード・スノーデン容疑者(30)が暴露した事件です。
米中央情報局(CIA)の元職員でもあるスノーデン容疑者は、香港滞在中の2013年6月上旬、英米紙に対してNSAの情報収集活動を相次いで暴露しました。
米通信会社から市民数百万人の通話記録を入手したり、自分の意思で顔と名前を公表したスノーデン容疑者 (photo by Laura Poitras / Praxis Films)後者の情報収集プログラムはPRISM(プリズム)と呼ばれ、グーグルやアップル、フェイスブック、ヤフーなど大手ネット企業が持つデータにアクセスしていました。
オバマ米大統領は、これらの情報収集活動は合法的であり、テロ対策として有効だと反論。米当局は6月14日、スノーデン容疑者をスパイ容疑などで訴追し、その後パスポートも無効にしたため、彼は自由な出入国ができなくなりました。
米政府が容疑者の引き渡しを求める中、本人は6月23日に香港からモスクワに飛行機で移動。国際空港内の乗り継ぎ区域で滞在を続け、7月12日に人権活動家らと初めて面会しました。
7月16日、スノーデン容疑者はロシアに一時亡命を申請しました。これまでにベネズエラとボリビア、ニカラグアの中南米3カ国が容疑者の亡命受け入れを表明しています。いずれも反米政権の国です。
8月1日、ロシアが1年間の亡命を認めたため、容疑者は正式にロシアに入国し、タクシーに乗って空港を出たそうです。
スノーデン事件は世界中に波紋を広げています。
米国ではテロ対策とプライバシー侵害をめぐる議論が沸き起こりました。中国・香港が容疑者を出国させたことで、以前からサイバー攻撃をめぐって批判し合っている米中関係に悪影響が出ています。
また、米政府が欧州や日本などの友好国に対しても盗聴活動をしていたとスノーデン容疑者が暴露し、欧州各国が反発しています。
日本とスノーデン
「スノーデン事件」は日本も他人事ではありません。
2015年7月31日のAFPの記事によると「内部告発サイト『ウィキリークス』は31日、NSAが少なくとも2006年9月に発足した第1次安倍内閣のころから、三菱商事などの大企業や政府高官、省庁、政府顧問らに対する盗聴活動をしていたとする盗聴対象のリストを公表した」とあります。
スノーデンは2009年から2年間ほど実際に横田基地で勤務しており、劇中でも日本での滞在シーンも描かれています。
日本に対する諜報活動とは逆に、「NSAが日本の諜報活動支援に、『XKeyscore』などの諜報プログラムを提供した」という文書が、スノーデンが公表した文書に含まれています。
2017年6月2日の衆議院において、その事実関係を問う質問がされていますが、政府は「御指摘の真偽不明の文書等に基づいた質問にお答えすることは差し控えたい」という答弁をしています。
*「日本に情報監視システムを提供したというスノーデン発言に関する質問主意書」(衆議院HPから)
最近のニュース「米連邦高裁、スノーデンが暴露したNSAの大量監視に違法判決」(2020年9月3日 Newsweek)にもあるようにNSAはスノーデンによって流出された文書は本物と認めているようです。事件はまだ続いています。
スノーデンが内部告発する狙い
スノーデンの狙いとは?
この作品の最大の見どころはスノーデンが内部告発する狙いです。
何故彼は自身が国家を追われることを承知の上でこんなリスクを冒すのでしょうか?
劇中に描かれている彼の言動・行動から掘り下げていきましょう。
1.プライバシー侵害への怒り
1番にあったのはNSAらが監視プログラムという形でプライバシーを侵害していたことへの怒りだと思われます。
今では大手の個人データを管理するシステムが出来るようになりました。しかし、それは同時に個人情報を世界レベルで侵害していることになるのです。
それにも関わらず自分たちのやっていることは合法であると主張しているのが許せなかったのでしょう。
表向き善意を装いながらその実態は立場の弱い人々から奪い取ろうとする詐欺師と変わりません。監視プログラムがやっていることの欺瞞をスノーデンは世に表明したかったのではないでしょうか。
2.政府への反感
2つ目にスノーデンにはCIA・NSAに所属していたときに味わったアメリカ合衆国政府への反感があったと思われます。
彼が9.11以来愛国心に目覚めたのは有名な話ですが、その愛すべき国家が裏で汚いことをしていたのです。特に、アラブ系の銀行家を見つけるという任務や日本の横田基地に就任した時の日本監視がそうでしょう。
スノーデンはカメラを向けられる恐怖や膨大な個人のデータを監視する怖さから精神を疲弊させました。そして、決定打は電話のSIMハッキングを利用した仲介攻撃という卑劣なやり口です。
ここで彼は腐敗した国家というどうしようもない残酷な現実を知ってしまい、深い絶望に陥ったのではないでしょうか。
3.自由なき国家の破壊
こうして見ていくと、スノーデンの真の狙いは自由なき社会を破壊することにあるようです。政治に関してスノーデンは一貫してリバタリアンの立場を取り続けていました。
それは政府が民間に介入しないことを信条とするものでした。ところがオバマ大統領以降の政権はそれに相反するやり方を推奨・実行しています。
そうして作り上げられたシステムを彼は丸ごと破壊しようとしたのではないでしょうか。
何かを変える場合はまず根幹のシステムから変える必要があるという彼の考え方です。
まとめ
今回は「スノーデン」のご紹介でした。いかがでしたか?
「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が可決・成立しました。これにより「日本が監視社会になる」と危惧する声も一部からは聞かれます。
そんな日本人にも聞き捨てならない衝撃的な告発が2013年にありました。
その告発をしたのが“エドワード・スノーデン”という若者です。
アメリカ国家安全保障局NSAで働いていた彼の語った内容は要するに「アメリカ政府は米国民や他の国々の人々をインターネットを介して監視するための大規模なシステムを保有している」というものでした。
もちろん日本も監視されています。つまり、「監視社会になる」どころか「もう監視社会になっていた」のです。
界中を大騒ぎさせた一連のスノーデン事件ですが、それでも知らない人もいるかもしれませんし、聞いたことがある人でも詳しくは理解していない人もいるでしょう。
そもそも「エドワード・スノーデン」って結局何者なの?と思っている人も多いはずです。
そこでピッタリなのがこの事件をドラマチックに描いた本作「スノーデン」です。
エドワード・スノーデンの半生と告発に至るまでの経緯をジョセフ・ゴードン=レヴィット主演で再現した社会派ドラマ。これを観れば何の知識がなくともスノーデン事件を大まかに掴むことはできると思います。
緊迫感とスノーデンの葛藤や苦悩がリアルに描かれていて、決して楽に観られる映画ではありませんが、見応え十分な作品となっています。
オリバー・ストーンは、これまでも幾度となくアメリカの暗部を曝け出す作品を制作してきた政治派映画監督で有名です。
そのオリバー・ストーン監督が「スノーデン事件」をどう描くのか?
期待してご覧ください。
脚本 キーラン・フィッツジェラルド オリバー・ストーン
原作 ルーク・ハーディング『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実』
製作 モリッツ・ボーマン エリック・コペロフ フィリップ・シュルツ=ダイル
製作総指揮 マックス・アルヴェレズ マイケル・バシック ダグラス・ハンセン 他
出演者 ジョセフ・ゴードン=レヴィット シャイリーン・ウッドリー
音楽 クレイグ・アームストロング アダム・ピーターズ
撮影 アンソニー・ドッド・マントル
編集 アレックス・マルケス リー・パーシー
製作会社 エンドゲーム・エンターテインメント ワイルド・バンチ 他
配給 オープン・ロード・フィルムズ 〔日本〕 ショウゲート
公開 〔アメリカ〕 2016年9月16日 〔日本〕 2017年1月27日
上映時間 134分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $40,000,000
興行収入 〔アメリカ・カナダ〕 $21,587,519 〔日本〕 1億7400万円