映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、2018年に公開されたクイーンのボーカルフレディ・マーキュリーの半生を描いた伝記の映画です。
同バンドのメンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮を手がけ、彼らの代表曲である「ボヘミアン・ラプソディ」のほか、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「ハマー・トゥ・フォール 」などを20世紀最大のチャリティコンサートライブ・エイドで披露します。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
クイーン結成
1970年のロンドン。ペルシャ系インド人の青年フレディは、空港で荷物の積み下ろしをする仕事をしていました。仕事仲間からパキ野郎と呼ばれると、フレディは気分を害しながら否定するのでした。
夜フレディがライブハウスへ出かけようとすると、父親から夜遊びばかりしていることを指摘されます。
フレディはライブハウスで観たスマイルというバンドのパフォーマンスを気に入り、演奏終了後彼らを探します。
その場に居合わせたメアリー・オースティンという美しい女性から彼らの居場所を聞いたフレディは彼女に一目惚れしてしまいます。
そして、スマイルのメンバーを探し、裏口にいたのはギタリストのブライアン・メイと、ドラマーのロジャー・テイラーでした。
2人に挨拶をすると、たった今スマイルのボーカル兼ベースのティム・スタッフェルが脱退したことを知り、自らをボーカルとして売り込みます。
フレディの並外れた歌唱力に驚いたブライアンとロジャーは彼と組むことを決め、次のライブからは新しいベーシストとしてジョン・ディーコンも参加。フレディがクイーンと命名し、新しいバンドが始動します。
クイーンの成功
ブティックで働いているメアリーと再会したフレディは彼女と徐々に親密な関係になっていきます。
その一方でクイーンは音楽の既成概念を打ち破ろうと実験的な試みを重ね、アルバム制作をするため、曲作りに没頭します。
やがて、彼らの評判は音楽業界関係者の耳にも届くこととなります。
エルトン・ジョンのマネージャーを務めたこともあるジョン・リードが彼らのデモテープを聴き、クイーンの可能性に惚れ込みます。リードは彼らのマネージャーとなるのです。
イギリスのテレビであるBBCへの出演を果たして披露したキラー・クイーンはあっという間に話題になり、瞬く間に「クイーン」という名前が知れ渡ります。
次第に多忙を極めていく中でもフレディはメアリーへの気持ちを忘れていませんでした。一夜を共にしたある日の翌朝、フレディは指輪を渡してメアリーにプロポーズ。永遠の愛を誓うこととなります。
クイーンの苦悩と葛藤
またある日、フレディはピアノでボヘミアン・ラプソディという曲を弾き語りしていました。「ママ、僕は人を殺してしまった」と歌うと、フレディは演奏をやめて神妙な面持ちになります。
その後、ブライアンがボヘミアン・ラプソディのギターソロのレコーディングをします。フレディがオペラパートの前にギターで盛り上げてほしいとオーダーすると、ブライアンはロックンロール魂に火をつけるのでした。
続いてロジャーが「ガリレオ~」の部分のコーラスを行いますが、フレディは中々納得しません。
ロジャーは自慢のハイトーンボイスで何度も録音を重ね、ついに一曲で6分以上の大作となるボヘミアン・ラプソディを完成させるのでした。
さっそくレイに自信作のボヘミアン・ラプソディを聴かせますが、「曲が長すぎてラジオで流せない」と顔をしかめるのでした。
しかしフレディは、知人のラジオDJであるケニー・エヴェレットの番組に単独出演します。そして未発表のボヘミアン・ラプソディを、ゲリラ的にラジオで流すのでした。
当初は楽曲の長さや難解な歌詞から、評論家やメディアに酷評されますが、のちに大人気の楽曲となり、クイーンは世界的に有名になっていきます。
その間フレディはポールとの関係をどんどん深めていき、彼の心は揺らいでいました。
ある夜、久しぶりにメアリーの元に帰ってきたフレディは、彼女にとっておきのライブ映像を見せます。
フレディはラブ・オブ・マイ・ライフのサビ(「君は僕の全てだ~」)を観客が歌ってくれたときの喜びをメアリーに語りますが、彼女は暗い表情を浮かべます。
メアリーは何か隠していることはないかとフレディに尋ねます。フレディが自分はバイセクシャルかもしれないと恐る恐る打ち明けると、メアリーは「あなたはゲイよ」と即答するのでした。
80年代に入りフレディは、ポールと一緒にゲイのコミュニティに入り浸っていました。
そしてその頃、まだ原因がわからなかったエイズが、同性愛者の間で流行していました。
フレディは、400万ドルでソロ・デビューの話がきていることをメンバーに明かします。バンドを解散するつもりではないが、アルバムを出したらツアーという流れに飽きたと不満を口にします。
その後、ソロ・デビューを果たしたフレディは、2枚目のアルバム制作に躍起になっていました。
ポールは楽曲をほめてくれますが、フレディは「クソだ」と評して納得できない様子を見せます。
フレディは薬物に依存しながらひたすら楽曲を作り、夜はポールが連れてくるゲイたちとパーティーをする日々を送っていました。
家族との絆
その頃、アフリカ難民救済を目的とした20世紀最大のチャリティコンサート「ライブ・エイド」にクイーンを出演させる話が持ち上がります。
2枚目のソロ・アルバムを制作していたフレディの体調は急激に悪化。咳き込んで血を吐いたフレディはエイズを患っていることが判明します。
ソロ活動をしたことでクイーンの仲間たちと共に音楽を奏でることが、どれほど自分にとって大切なことであったかを痛感させられたフレディはクイーンのメンバーに詫びを入れ、自身がエイズであることも告白します。
メンバーと和解し、再び4人に戻ったクイーンは練習を再開させます。HIV感染していることを知らされたメンバーはフレディの喉の調子が上がらないことを心配します。
しかし、フレディは「ライブ・エイド」本番までに必ず完成させると約束します。
復活したクイーンは1985年7月13日、ライブ・エイドが行われるウェンブリー・スタジアムのステージに立ち、伝説となります。
キャスト
フレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)
ロンドンでブライアン・メイ、ロジャー・テイラーのバンドにボーカルとして参加。ジョン・ディーコンも加わり、自らの発案でバンド名を「クイーン」とします。
バンドは成功し、全米ツアーも実施。レコード会社の反対を押し切って「ボヘミアン・ラプソディ」をシングルとして発売し、大ヒットとなり、世界ツアーも成功させる一方で、恋人メアリーとの関係は終わります。
バンドの成功は続きますが私生活は荒れ、400万ドルの契約金でソロとしてレコードを出すことになり、バンドのメンバーとの関係に大きなヒビが入ります。
ソロ・アルバムの出来に納得できず、バンドのメンバーの重要性を認識した彼は、メンバーに謝罪。大規模なチャリティコンサートライブ・エイドに出演します。
フレディは、そこで大観衆を熱狂に巻き込みます。その後、1991年にエイズによる肺炎で死去したことが説明されます。
演:ラミ・マレック
エジプト王アクメンラーを演じた「ナイト ミュージアム」シリーズでその名が広く知られるようになります。
その後、闇を抱える天才ハッカーに扮したTVシリーズ「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」でエミー賞主演男優賞を受賞して大ブレイク。
「ボヘミアン・ラプソディ」ではフレディ・マーキュリーを熱演、オスカー主演男優賞に輝きました。
メアリー・オースティン(ルーシー・ボイントン)
ライブ会場でフレディと出会い、恋人関係になります。やがてフレディから結婚のプロポーズをされ、婚約指輪をもらいます。
バンドが成功してツアーを出たフレディの様子がおかしいことに気づき、ある日フレディからバイセクシュアルと告白されると、ゲイであると指摘します。
フレディと別れようとしますが、そばにいてくれるように頼まれ、友人としてフレディの住む大きな屋敷の隣に住むようになります。
演:ルーシー・ボイントン
2006年に公開された映画「ミス・ポター」(主演:レネー・ゼルウィガー)で、少女時代のビアトリクス・ポターを演じてデビュー。
2007年には、BBCのテレビ映画「バレエ・シューズ」では、主要人物の1人ポージー・フォッシル役を演じ、エマ・ワトソンと共演します。
2016年公開の映画「シング・ストリート 未来へのうた」で、ミステリアスなヒロインのラフィーナ役を演じています。
ブライアン・メイ(グウィリム・リー)
ロジャー・テイラー、ティム・スタッフェルとバンド「スマイル」を組んでいましたが、ティムが脱退。新しくフレディ・マーキュリーがボーカルに、ジョン・ディーコンがベースに加わり「クイーン」となります。
全米ツアーをするなど成功を収め、観客に足踏みと手拍子で参加してもらう曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のアイデアを思いつき、大ヒット曲となります。
フレディがソロ・デビューする話を聞いてショックを受ける一方で、フレディには「自分が思っているよりおまえには俺たちが必要」と語ります。
演:グウィリム・リー
10代の頃に劇団に参加。2010年にドンマー・ウエアハウス作品「リア王」でエドガーを演じたことで イアン・チャールソン賞(英語版)を受賞します。
2013年のクリスマスからはテレビドラマ『バーナビー警部』の第16シーズンでチャーリー・ネルソン役を務めます。
ロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)
ボーカルのティム・スタッフェルの脱退でバンド「スマイル」は、新メンバーを加えた「クイーン」となります。
クイーンは全米ツアーをするなど大きな成功を収めます。ソロ・デビューすることになったフレディとの間に亀裂が走りますが、その後フレディの謝罪によって和解します。
フレディからエイズに感染していることを聞かされてショックを受けますが、ともに「ライブ・エイド」を成功させます。
演:ベン・ハーディ
ブライアン・シンガー監督によるスーパーヒーロー映画「X-MEN: アポカリプス」で映画デビュー。役柄は翼を持つミュータントのアークエンジェルでした。
また、歴史恋愛映画「メアリーの総て」でジョン・ウィリアム・ポリドーリ役を務め、エル・ファニングやダグラス・ブースと共演しています。
ジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)
フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーのバンド「クイーン」に参加し、大成功を収めます。
これまでとは異なるディスコ路線の曲「地獄へ道づれ」を制作し、ロジャーが否定的な意見を出しますが、ベースを弾き出すとみんなが引き込まれる様子が描かれています。
寡黙な性格ですが、フレディがソロ・デビューをすると聞いた時には、「金で家族を買え」と辛辣な言葉を言い放ちます。
演:ジョー・マッゼロ
90年に幼児虐待をテーマにしたTVM「語られざる行為」で注目され、「推定無罪」で映画デビュー。
そして「ラジオ・フライヤー」と、ここまでの3作品全てが幼児虐待を受ける役を演じています。その後「ジュラシック・パーク」、「永遠の愛に生きて」、「激流」と、軒並み大監督や実力派俳優との共演を果たしています。
基本情報
監督 ブライアン・シンガー
脚本 アンソニー・マクカーテン(英語版)
原案 アンソニー・マクカーテン ・ ピーター・モーガン
製作 ブライアン・メイ ロジャー・テイラー グレアム・キング ジム・ビーチ 他
総指揮 アーノン・ミルチャン デニス・オサリヴァン ジェーン・ローゼンタール 他
音楽 ジョン・オットマン
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
編集 ジョン・オットマン
製作会社 20世紀フォックス ・ ニュー・リージェンシーGKフィルムズ ・ クイーン・フィルムズ
配給 20世紀フォックス
公開 〔イギリス〕2018年10月24日 〔アメリカ〕2018年11月2日 〔日本〕2018年11月9日
上映時間 134分
製作国 イギリス ・ アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $52,000,000
興行収入 〔世界〕$903,655,259 〔日本〕131億1,026万円
受賞歴
第76回ゴールデングローブ賞
作品賞
主演男優賞 ラミ・マレック第72回英国アカデミー賞
主演男優賞 ラミ・マレック
音響賞第91回アカデミー賞
主演男優賞 ラミ・マレック
編集賞
録音賞
音響編集賞
伝説的ロックバンド「クイーン」
クイーン(英語: Queen)は、イギリス・ロンドン出身のロックバンドです。
1970年代前半のハードロック・ブームの中でデビュー。その後スタイルを変化させながら世界中で成功を手にし、「世界で最も成功したバンド」の1つといわれています。
アルバムとシングルのセールスで世界第5位の3億枚を超え、「世界で最も売れたアーティスト」にも名を連ねています。
また、全英チャートに1422週チャートインし続け、「世界で最も英国チャートにランクインし続けたアルバム」として、ギネスにも認定されています。
2001年にロックの殿堂入り。ウォール・ストリート・ジャーナルの「史上最も人気のある100のロックバンド」では第3位。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」では第52位にランクインしています。
2001年にマイケル・ジャクソン、エアロスミスらと共にロックの殿堂入りを果たしています。
1991年にボーカルのフレディ・マーキュリーが死去してからも、活動は断続的に続いています。
2020年現在、ギターのブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーの2人は、ボーカルにアダム・ランバートを迎えて「クイーン+アダム・ランバート」として活動しています。
21分間のライブ映像
この作品のラストで観客の心を完全に持っていくのが、アラフォー以上の世代なら当時リアルタイムで観たはずの伝説のライブイベント「ライブ・エイド」でのステージです。
特に、あふれんばかりに詰めかけた群衆の姿は、当時のオリジナル映像と見比べても全く違和感がないほど再現されています。
この大観衆を前に、当時あれだけのパフォーマンスを見せたクイーンとフレディ・マーキュリー。
映画での圧巻の「ライブ・エイド」のシーンを観て、改めてYouTubeで当時の映像を見返したという方も多かったのではないでしょうか?
どのアーティストにも公平に決められた20分間という出演時間の中、これほど見事に観客を巻き込んで、なおかつ自分たちの歴史と魅力をも叩き込んだ圧巻のステージ。
ラストに用意した今回の構成は、まさにフレディの存在を観客の胸の中に永遠に焼き付けてくれるものとなっています。
当時のテレビ映像は会場の大観衆を画面に入れるためか、ステージ背後からや若干上からの構図が多かったのに比べて、映画では客席から観客が見上げているかのようなローアングルでのカットが非常に多くなっています。
これによって映画のライブシーンは、当時の会場でフレディを見上げているかのような臨場感が味わうことができるようになっています。
「ライブ・エイド」を知らない世代にこそ、ぜひ観て頂きたいこの迫力のライブシーンです。
フレディ・マーキュリーの言葉
●「それなら新しいボーカルが必要だな」
ブライアン・メイがギターを、ロジャー・テイラーがドラムを担当していたバンド「スマイル」のボーカルが脱退してしまいます。
「スマイル」を見に来ていたフレディは、この先どうしようかを話し合っていたブライアンとロジャーの前に現れ、アカペラで見事な歌声を披露。ブライアンとロジャーのバンドのボーカルに決まります。
●「俺たちははぐれ者。そして世のはぐれ者たちのために演奏する」
クイーンの曲を聞いて興味を引かれた、エルトン・ジョンも担当している大物A&Rのジョン・リードと面会したクイーンのメンバーたち。
ジョン・リードの質問にフレディがこう答えます。このあと、クイーンの曲は世界中の人々の心をつかむことになります。
●「俺たちは家族だ。家族ってもんはケンカするもんだ。四六時中」
多額の契約金をもらい、ソロ・アルバムを制作したフレディ。だがアルバムの出来は納得のいくものではありませんでした。
そんなフレディは、マネージメントを担当するジム・ビーチに、メンバーと会う場をセッティングするように頼みます。
●「それなら空に穴を空けてやろう」
ライブ・エイドのリハーサルで、フレディはメンバーに自分がエイズにかかっていることを明かします。
そして、残りの時間をパフォーマーとしてまっとうすることを宣言。メンバーの気持ちは1つになります。そして、ウェンブリー・スタジアムでのライブは伝説となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「ボヘミアン・ラプソディ」をご紹介しました。
クイーンのメンバーを演じた4人の再現力が素晴らしく、特にブライアン・メイは本人が登場したかのように瓜二つです。
フレディを演じたラミ・マレックも顔立ちはもとより話し方や表情、ステージでの動きがフレディ・マーキュリーで、説得力抜群でした。
事実とは異なる部分や、時系列なども変更されているのですが、その分エンターテインメント性が高まっています。
「ライブ・エイド」のシーンが始まる瞬間の高揚感が最高潮にまで達するようにセッティングされているので、ファンの方なら涙腺を刺激されること必至だと思います。
劇中では誰もが耳にしたことのある数々の名曲が流れるので、クイーン世代はもちろん、当時を知らなくても十分楽しめる作品だと思います。