今回は、「プラダを着た悪魔」(2006年)を手掛けたデイビッド・フランケル監督と、「ハリウッド界で一番パワフルな俳優」と呼ばれるウィル・スミスがタッグを組んだ作品「素晴らしきかな、人生」のご紹介です。
3人の男女との出会いを通し、娘を失った深い喪失感から立ち直っていく男をウィル・スミスが演じます。
主人公の前に現れる男女をヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイ、ジェイコブ・ラティモアという世代の異なる実力派が演じるヒューマンストーリーです。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
社長のハワードは、まさに成功者で部下からも慕われ外部からも業績を認められていました。
彼は「愛・時間・死の3つの概念が人を結んでいる。すべてはそこから始まる」というのが口癖だったのです。
しかし、会社のパーティーが開かれた3年後のハワードには、かつての面影はありませんでした。
彼の最愛の娘が亡くなり、ハワードはまるで存在していないかのように振舞っていたのです。
オフィスへ来ては、ドミノを組み立てて崩し帰っていく日々。
ホイットと仕事仲間であるクレア、サイモンはそんな彼を心配しますが、会社の危機を救うべく、探偵を雇います。
探偵はハワードがポストに3通の手紙を投函したところを目撃し、その手紙を手に入れてホイットらに見せます。その手紙はそれぞれ、「愛」「時間」「死」に宛てたものでした。
ホイットは船旅会社のキャッチコピーに“殻を脱げば人生は変わる”という言葉を考えていました。しかし、オーディションに来ていた女性に、“殻を抜いで人生を変えよう”の方が心に響くと指摘されます。
ホイットは女性の言葉に納得し、キャッチフレーズを変えることにします。その女性ともっと話したいと思い、彼女の後を追いかけると、小さな劇場にたどり着きます。
そこではエイミーがブリジットやラフィと共に舞台稽古をしていました。
彼女たちの芝居や認知症の母親に影響を受けたホイットは、ハワードを救うためにエイミーを「愛」、ラフィを「時間」、ブリジットを「死」として彼の前に出現させ、それぞれの役を演じてもらおうと考えます。
「愛」「時間」「死」に扮した3人が現れて混乱したハワードは、マデリンという女性が主催する「小さな翼の会」と呼ばれる、子供を亡くした親たちの集会を訪れます。
そこでハワードはマデリンから亡くなった娘の名前を聞かれますが、答えることが出来ません。
一方、ブリジットはサイモンが重い病気を患っていること、ラフィはクレアが子どもを生みたいが時間がないことに焦っていること、そして、エイミーはホイットが社内不倫をして妻や娘と冷め切った関係が続いていることを知ります。
ブリジットはサイモンに、家族と話し合うよう説得し、エイミーもちゃんと父親らしく子供に向き合うよう助言をします。
マデリンはハワードに、自分の娘が病気のために6歳で亡くなったこと、別れた夫から「もし他人同士に戻れたら」と書かれた手紙を渡されたこと、そして今でも夫を愛していることを打ち明けます。
自分が正直に話したのだから、ハワードも何か相談があるのだろうと言います。
ハワードは素直に「愛」〟「時間」〟「死〟と名乗る幻影が見えることを告げました。
すると、マデリンは自分の娘の最期の時のことを話します。
病院で娘が瀕死の時、病室の外に出たマデリンは、隣の席の初老女性に「見逃さないで。幸せのオマケがあるから」と言われたそうです。
直後に娘・オリビアを亡くしたマデリンは、そんなわけがないと思っていました。
ところが娘の死後1年が経過した頃、自分自身に変化が現れたそうです。
何をみても不意に涙があふれる瞬間があるそうです。それは「すべてのものと深いつながりを持っていると気付いたから」涙があふれるのだそうです。
その話をした後、マデリンはハワードに「その〝死〟たちと向き合ってあげて。きちんと人生に関わって」と言いました。
ある日、ハワードの前にまたも3人の役者が現れますが、彼は怒りに震え、3人それぞれに胸の内を明かします。
サリーが録画していた映像が審議会で流されます。しかし、その映像のラフィ達の姿は消されており、ハワードが何もない場所で怒っているように加工されていました。
ハワードはホイット達の様子から、仕組まれたことだと知ります。クレアが涙ながらに謝罪しますが、ハワードはそれを止め、長年会社に尽くしてきたことへの感謝を述べます。
そして、サイモンには病歴を知っていることを話して、家族の生活を守ることを約束し、最後にホイットには、娘に遠慮せずに堂々と父親をやれと背中を押してやります。
ハワードは会社を存続させるため売却の書類と、娘の信託財産に社の所有権を入れていたため死亡証明書にサインをします。
用済みとなったブリジットたちはホイットたちから謝礼をもらいますが、それぞれ問題を抱える彼らに最後のアドバイスをするのでした。
クリスマス・イヴ。
ハワードは思い切って、セラピーの女性マデリンのもとを訪れました。
玄関を開けるマデリンの目じりには、涙が浮かんでいます。ちょうど部屋で亡くなった娘オリビアのビデオを見ていたそうです。
ハワードを部屋に通したマデリンは「父とダンスするビデオの続きを見てもいいかしら」と言いました。そしてハワードの死んだ娘の名を聞きます。
ハワードは娘の名を言いました。娘の名はオリビアでした。実はハワードとマデリンは元夫婦だったのです。
マデリンが再生するホームビデオには、娘と笑いながら踊るハワードの姿がありました。さらにハワードが作ったドミノを倒すオリビアの姿が映っています。
娘の名をハワードが言うことで、ハワードは娘の死を受け入れました。ハワードとマデリンは抱きしめあいます。
翌日。ハワードとマデリンは、連れだってセントラル・パークを歩いていました。復縁の気配は濃厚です。
ハワードが行く手の橋を見上げると、そこにはエイミー、ブリジット、ラフィの姿がありました。
ところがマデリンが見上げても、橋の上には誰もいません。
彼ら3人は、本当に〝愛〟〝死〟〝時間〟の化身だったのでした。
マデリンに何も見えていないことを確認したハワードは、ひとり静かに微笑むとマデリンを引き寄せました。
キャスト(広告代理店)
ハワード・インレット(ウィル・スミス)
優秀な広告マン・ハワードは娘の死で仕事が全く手につかず、彼の会社は倒産の危機に瀕しています。
感情の起伏が薄くなったハワードは、毎日ぼうっとしています。たまに思い出したように自転車に乗り、犬も飼っていないのにドッグパークで、赤の他人の犬を眺めたりするくらいです。
演:ウィル・スミス
92年「ハートブレイク・タウン」でスクリーン・デビュー。
95年の「バッドボーイズ」での派手なアクションとコミカルな演技の絶妙なブレンドが評判を呼び、映画ファンの間にもその名前が着実に浸透していきます。
そして96年、メガヒット作品「インデペンデンス・デイ」に主演、一気にハリウッドを代表する黒人アクターの1人となります。
01年にはボクシングの英雄モハメド・アリの伝記映画「アリ」に主演、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞のそれぞれで主演男優賞にノミネートされます。
その後も主演作で確実にヒットを飛ばし、ハリウッドでの地位を不動のものとしています。
ホイット・ヤードシャム(エドワード・ノートン)
ハワードとコンビを組む、ハワードの一番の友人で、広告代理店のヤードシャム・インレット社の共同経営者です。
不倫がばれてしまい、妻と離婚しています。それがきっかけで娘との関係が悪化し、会話も満足にできていません。(悩みは「愛」です)。
演:エドワード・ノートン
96年の「真実の行方」での大規模なオーディションに選ばれ映画デビュー。
しかも、その役でアカデミー賞助演賞候補に上がり一躍注目されます。(LA批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞を受賞)
その後「アメリカン・ヒストリーX」でもアカデミーにノミネート。「ファイト・クラブ」ではブラッド・ピットを食わんばかりの存在感で熱演。00年の「僕たちのアナ・バナナ」では監督も手がけています
クレア(ケイト・ウィンスレット)
広告代理店のヤードシャム・インレット社の幹部社員で、ハワードの友人です。子どもが持てないことに焦っています。
精子バンクに登録してパンフをいつもチェックしていますが、長年会社に尽くしてきたせいで、子どもを産むのが難しい年齢になってしまっています。(悩みは「時間」です)
演:ケイト・ウィンスレット
13歳の頃からCMやTV番組、舞台にと精力的に活躍。94年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した「乙女の祈り」で映画デビューし注目を集めます。
翌年には「いつか晴れた日に」でアカデミー助演女優賞にノミネート。その後、「タイタニック」でも主演女優賞候補になり、着実に演技力を高めています。
98年、「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」の助監督と結婚、一児の母となりますが01年に離婚しています。
サイモン(マイケル・ペーニャ)
アラブ系の中年男性。広告代理店のヤードシャム・インレット社の幹部社員で、ハワードの友人です。
妻との間に息子が1人いますが多発性骨髄腫を再発し余命いくばくもない状態です。(悩みは「死」)です。
演:マイケル・ペーニャ
1994年から多くのテレビやインデペンデント作品に出演してきましたが、転機となったのは2004年のポール・ハギスの「クラッシュ」とクリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」です。
「素晴らしきかな、人生」のほかにも「ワールド・トレード・センター」(06)、「エンド・オブ・ウォッチ」(12)、「オデッセイ」「アントマン」(15)、「運び屋」(18)など多くの作品に出演しています。
キャスト(劇団員ほか)
エイミー(キーラ・ナイトレイ)
たまたまハワードたちの会社の面接に顔を出したとき、ホイットの考えたキャッチコピーをすぐさまうまく言い換えます。
彼女が気になったホイットは、彼女の後を追いかけると彼女は劇団員でした。彼に頼まれ「愛」を演じます。人の気持ちを慮る心の優しい女性です。つきびとはホイットです。
演:キーラ・ナイトレイ
99年、ハリウッド超大作「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」で、ナタリー・ポートマン演じるアミダラ王女の影武者役に大抜擢されます。
これをきっかけにハリウッドでの知名度も上がります。そして2002年に出演した「ベッカムに恋して」が全米で公開され、独立系としては異例のロングラン大ヒットを記録します。
続けて公開されたハリウッド大作「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」ではメインキャストの一角を占め、同作の記録的大ヒットに貢献、名実ともにハリウッド・トップ・スターの仲間入りを果たします。
ブリジット(ヘレン・ミレン)
「死」を担当する初老の女性です。エイミー達のリーダー的存在で、女優として高いプライドを持っています。
ハワードが書いた手紙を持って、ドックパークのベンチに座っていた彼に会いに行きます。ハワードはからかわないでくれと怒りますが、ブリジットは演じ続けます。つきびとはサイモンです。
演:ヘレン・ミレン
69年「としごろ」で映画デビュー。「エクスカリバー」や「2010年」、「ホワイトナイツ/白夜」など話題作に出演しています。
06年、スティーヴン・フリアーズ監督の「クィーン」でダイアナ元皇太子妃の事故死を巡って窮地に陥るエリザベス女王を圧倒的なリアリティと存在感で演じきり大絶賛を浴びます。
同年の主演女優賞はヘレン・ミレンがほぼ独占する快挙で、アカデミー賞も受賞。
ラフィ(ジェイコブ・ラティモア)
エイミーたちと同じ劇団員です。ホイット達に頼まれ、「時間」を演じることになります。
明るく陽気な黒人青年ですが、ハワードに会った時は、「自分(時間)を無駄遣いするな」と怒る演技を見せます。つきびとはクレアです。
演:ジェイコブ・ラティモア
1996年アメリカミルウォーキー出身。素晴らしきかな、人生のほかに、メンズ・ランナー(15)、デトロイト(18)などの出演作があります。
マデリン(ナオミ・ハリス)
ハワードの元妻。ハワードのことを離婚した後も愛し続けています。
遺族の会合のセラピーを主催していますが、ハワードはそのセラピーに参加できずにいました。セラピーに参加することは、娘の死を受け入れることになるからです。
演:ナオミ・ハリス
2002年の「28日後」以降、ハリウッド・メジャー作品に次々とキャスティングされ「マイアミ・バイス」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどに出演。
「007」シリーズではマネーペニー、「マンデラ 自由への長い道」ではネルソン・マンデラの妻ウィニーという重要な役どころを演じました。
麻薬中毒の母親を熱演した16年の「ムーンライト」では多くの映画賞で高評価を獲得し、アカデミー賞助演女優賞にも初ノミネートされています。
基本情報
「素晴らしきかな、人生」の見どころ
それぞれが抱える問題
映画「素晴らしきかな、人生」は、登場人物が抱えている問題にとても重みがあります。
娘を失ったハワードとマデリン。
母親になる為のタイムリミットが迫ったと感じているクレアと、娘に嫌われているホイット。
持病の病気に悩み、家族を遺していく不安を抱えるサイモン。
愛と死と時間というそれぞれが抱えている問題と立ち向かう登場人物たちの姿は、とても共感しやすく心に響くストーリーになっています。
ハワードの変化
この作品では、ストーリーが進むにつれて主人公のハワードが変化していきました。
悲しみに対処できず、怒りを抱えているシーンなどはとてもリアルで、人を突き放す姿なども見どころになっています。
目に涙を浮かべ,怒っているシーンなどは見ている側もとても胸が締め付けられるシーンでした。
3人の正体
役者の3人は、サイモンやクレアやホイットやハワードのことを何でも知っていました。
ハワードを救う目的で始めたことでしたが、結果的にサイモンとクレア、ホイットも役者の3人に救われることになります。
復縁したハワードとマデリン
ハワードが行く手の橋を見上げると、そこにはエイミー、ブリジット、ラフィの姿がありましたが、マデリンが見上げても橋の上には誰も見えません。
彼女たちは本当の「愛」であり「時間」であり「死」だったのではないでしょうか?
豪華キャストの共演
ウィル・スミス
常にハリウッドのトップを走り続けている名優ウィル・スミスが今回は悲しみからなかなか抜け出すことのできない主人公ハワードを演じます。
エドワード・ノートン
卓越した演技力で幅広い役をこなすエドワード・ノートンが演じるのは、ハワードの広告代理店の共同経営者で、親友のホイットです。
キーラ・ナイトレイ
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでおなじみの彼女は、今回ハワードの回復を助ける3人の1人、エイミー役で出演します。
ケイト・ウィンスレット
7度のアカデミー賞ノミネート経験を持つ実力派女優ケイト・ウィンスレットは、ハワードの同僚で「時間」に悩む女性クレアを演じます。
ヘレン・ミレン
多くの作品に出演し、数々の映画賞している大女優が、劇団員のリーダー役としてハワードを助ける3人の1人、ブリジット役で出演します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
“人生ドン底の男を救ったのは、3人の奇妙な男女だった”というキャッチコピーがつけられた「素晴らしきかな、人生」は、感動的なヒューマンストーリーでした。
愛と死と時間が話していたセリフは、多くの人に共感できる内容になっていますね。
最愛の娘を亡くし、落胆に浸っていたハワードの前に現れた人々との出会いによって、彼の人生が変わりはじめます。
彼らの助けによって引き上げられていくハワードの様子に、とても勇気がもらえるのではないでしょうか?
とても心温まる愛に溢れたストーリーで、キャラクターもとても素敵な人々が集まっています。落ち込んだときに観ると、とても勇気がもらえるような映画です。
私がもっとも印象に残ったのは“時間”の言葉です。
「時間なんて、人間が勝手に決めた概念さ」
なにをはじめるのにも遅いも早いもない。今がどうだとか、過去がどうだとか、そんなものどうだっていい。大事なことに気づかせてくれた映画でした。
監督 デイビッド・フランケル
脚本 アラン・ローブ(英語版)
製作 バード・ドロス マイケル・シュガー(英語版) アラン・ローブ 他
製作総指揮 トビー・エメリッヒ リチャード・ブレナー マイケル・ディスコ 他
音楽 セオドア・シャピロ
撮影 マリス・アルベルチ(英語版)
編集 アンドリュー・マーカス
製作会社 ニュー・ライン・シネマ ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ 他
制作会社(英語版) アノニマス・コンテンツ パームスター・メディア ライクリー・ストーリー
配給 ワーナー・ブラザース
公開 〔アメリカ〕 2016年12月16日 〔日本〕 2017年2月25日
上映時間 97分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $36,000,000
興行収入 〔世界〕 $88,216,021 〔アメリカ〕 $31,016,021 〔日本〕 3億1000万円