皆さんは「ビオトープ管理士」という職業を聞いたことがありますか。
ビオトープというのは、公式ページの説明ではドイツ語で「生きものたち」を指すBioと「空間」を意味するTop(トープ)の2つの単語からとっています。
つまり、地域の野生の生きものたちが生息・生育する場所において、保全や再生を担うことを目的にする資格であり、その検定試験なのが「ビオトープ管理士」なのです。
主に自然に携わる仕事に就く人におすすめな資格です。
どんな資格なのか詳しく見ていきましょう。
Contents
適用する仕事
「ビオトープ管理士」というのは、簡単にいうと野生生物が生きる環境を守る自然の専門家ということです。
近年、日本では地域の自然生態系を守るビオトープ事業に力を入れています。
本来その地域に合ったさまざまな自然を復元・創出するために、行政や環境コンサルタントで活躍するのがこの資格の「適用する仕事」の範囲なのです。
「ビオトープ管理士」の勤務先としては、おもに地方自治体や官庁などの行政、土木会社や造園会社、建設会社などが挙げられます。
そうした民間企業で勤務していたり、ボランティア団体に所属していたり、または環境コンサルタントとして活躍しています。
ビオトープ管理士の仕事の流れとしては、まずは自然環境を確認するために現地調査を行います。
生物や植物などの自然環境がどのような状態であるかを把握するためです。
そうしてから次に環境作りを練っていきます。
ビオトープ作成の計画・設計です。
この作業は造園会社やエクステリアデザイナーなどと協力することもあります。
そうした計画を練ったら、次は施工に入ります。
造園や工事の現場で、実際にビオトープを施工するビオトープ管理士もいるかと思われます。
設計図に沿って造られているか、計画通りに施工が進められているかなどを確認しながら造っていきます。
おおよその年収とキャリアパス
ビオトープ管理士の平均年収は490万円から550万円といわれています。
けっこう高めですね。
しかし、中小規模の企業で働いているビオトープ管理士の方はこれより低い年収の可能性があります。
この資格は造園業や土木業で重宝される施工管理技士などとは異なり、民間資格であるため、資格を有しているからといって年収に大きな差が出るわけではありません。
資格で差が出るのではなく、そもそもビオトープ管理士の多くが造園企業や土木企業に雇用されて働いているため、年収もそれらの企業の給与体系に準じて得られます。
キャリアパスとしては、より有利な条件で転職したり、活躍のチャンスをつかむために「ビオトープ管理士」以外の他の国家資格を併せ持つことが考えられます。
例えば造園業であれば「造園施工管理技士」、土木業であれば「土木施工管理技士」などです。
こうした資格は造園工事や土木工事の際に携わる業務の幅が広がるため、より高く評価されやすくなります。
また、もっとスケールの高い道筋としては環境コンサルタントや環境活動家として活躍する方もいます。
認可団体
「公益財団法人 日本生態系協会」というところが主催しています。
事業内容:環境保護事業
〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-30-20 音羽ビル
電話:03-5954-7106
FAX:03-5951-0246
受験条件
1級・2級と分かれています。
2級はどなたでも受験することができます。
1級は下記に挙げる7つの条件のうち、いずれかの1つを満たしていることです。
- 4年制大学を卒業した後、通算で満7年以上の実務経験を有する者
- 大学院を卒業した後、通算で満5年以上の実務経験を有する者
- 短期大学、専門学校、高等専門学校のいずれかを卒業した後、通算で満9年以上の実務経験を有する者
- 高等学校を卒業した後、通算で満11年以上の実務経験を有する者
- 技術士(建設、農業、森林、水産、環境の5部門に限定)、1級土木施工管理技士、1級造園施工管理技士の資格のいずれかを取得した後、通算で4年以上の実務経験を有する者
- 2級ビオトープ計画管理士、2級ビオトープ施工管理士、2級土木施工管理技士、2級造園施工管理技士の資格のいずれかを取得した後、通算で7年以上の実務経験を有する者
- 上記の学歴・資格によらない(中学卒業など)場合は、通算で満14年以上の実務経験を有する者
合格率
2級 約60%
1級 約30%
1年当たりの試験実施回数
年に一度実施されます。
試験科目
試験に合格するのにこれだけの科目が出題されます。
2級
筆記試験のみ
- 共通科目(生態学/ビオトープ論/環境関連法)
- 専門課目(計画部門/施工部門)
- 小論文
1級
- 共通科目(生態学/ビオトープ論/環境関連法)
- 専門課目(計画部門/施工部門)
- 記述問題
- 小論文
採点方式と合格基準
問題形式は3種類ありますので、それぞれお伝えします。
採点方式
まず、2級の場合は択一問題の合格基準を全て満たした方について、小論文の内容を確認・評価します。
択一問題と小論文の全ての合格基準を満たせば合格となります。
1級の場合は、まず筆記試験の択一問題を採点し、その合格基準を全て満たした方について今度は記述問題を採点します。
記述問題でも合格基準を満たした方に、小論文の内容を確認・評価するとともに、別途口述試験に進みます。
合格基準
択一問題の場合は各科目それぞれにつき、正解が60%以上であることが合格基準になります。
つまり、解答しなければならない問いの数が10問なら6問以上、20問なら12問以上、5問なら3問以上の正解が必要になります。
1級のみに課せられる記述問題の合格基準は、解答がA~Dの4段階で評価されるので、全問についてAまたはBの評価を得ることが条件です。
そして、小論文(1級・2級)は「可」の評価を得ることが合格基準となります。
考え方や行動がビオトープ管理士として適切な場合は「可」の評価で合格となりますが、そうでない場合は「不可」と評価されます。
1級は800字以内、2級は400字以内で解答するものを原則とします。
取得に必要な勉強などの費用
勉強方法は試験科目で各6割以上正解しないと合格できませんので、浅く広く勉強しておくのがおすすめです。
公式テキストが販売されています。
- 発行元:日本生態系協会
- 商品名:ビオトープ管理士資格試験公式テキスト 2級対応改訂版
- 価格:¥3,080(税込)
2級ビオトープ計画管理士・施工管理士の資格取得のためのテキストです。
受験する際の唯一の公式テキストになります。
全試験科目の要点をわかりやすく解説しています。
そして、過去問は日本生態系協会の公式サイトからダウンロードしましょう。
会員登録すれば無料でダウンロードできます。
また、Webでセミナーも開かれています。
受験料
2級 7,200円
1級 11,300円(通常受験/他部門受験)、筆記試験合格者の再受験は5,100円
受験申込方法
「ビオトープ管理士」の公式サイトから「受験の手引き」をダウンロードし、お申し込みください。
まとめ
「ビオトープ管理士」は自然再生・保護を行い、人類の生存基盤となる生物圏を守り、持続可能な社会を築くお仕事をします。
近年、SDGsという考えも広がっていますね。
SDGsの17の目標のうち
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
そうした地球規模の目標に到達するために必要な資格でもあります。
スケールが大きい仕事に見えますが、土木会社や造園会社、建設会社などが勤務先となります。
この資格だけで就職や年収に影響されるわけではないですが、街や環境作りのための知識が付く資格試験となっています。
2級はどなたでも受験できるそうです。
ぜひ、そういった分野の企業でお仕事をなさっている方は、こちらの資格を考えてみてはいかがでしょうか。
地球環境を守るうえでも大変有用な資格になると思います!
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