介護福祉士試験について

介護福祉士試験について

人は誰しも老いるものです。また、今は健康な人も、突然の事故や病気で思うように身体が動かなくなってしまうこともあるでしょう。
誰かに心身の世話を委ねなければならなくなったとき、力になってくれる職業のひとつに介護福祉士があります。

今回はこの介護福祉士という職業および資格について紹介します。

適用する仕事

介護福祉士の資格を有する人が働く場所と言えば、多くの人は高齢者施設を想像するでしょう。もちろんそれも正解です。
しかし、「介護」は高齢者に限るものではありません。身体に障害がある人の通所・入所施設や、病院などで働く介護福祉士も大勢います。

そのほか、就労支援施設の支援員や産後ヘルパーなど活躍の場は広く、福祉分野全般に通用する資格であると言えます。

車いすから立ち上がる女性を介助する人

おおよその年収とキャリアパス

年収は所属する法人に大きく依存します。250万円から500万円程度が相場です。
最初は資格取得に求められる実務経験を積みながら時給で働く人も少なくありません。

もちろん、学校で資格を取得し国家試験をパスし、新卒で正社員として働く道もあります。
いずれにせよ、最初から高い収入を得ることは難しいのが現状です。

ほかの国家資格を取得したり、経験を重ねて施設長などの役職に就いたりすることで年収を上げることができるでしょう。

認可団体

公益財団法人社会福祉振興・試験センターのロゴ

介護福祉士は国家資格です。
社会福祉士及び介護福祉士法第10条第1項の規定に基づいて厚生労働大臣が指定した「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」が試験を実施しています。

社会福祉振興・試験センター公式サイトでは過去の試験問題とその答えが数年分公開されているため、本番と同じ形式で問題を解きたい方はこちらを参照しましょう。
また、過去に受験したことがある人はここから受験申し込みをすることができます。

受験条件

介護福祉士試験を受験するには満たすべき条件があります。
条件の満たし方はさまざまで、大きく分けると以下の3つのルートがあります。

養成施設から目指す


厚生労働省が指定する養成施設で必要な単位を取得し卒業するルートです。
高等学校の普通課程などを卒業後、介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業することで受験資格を得ることができます。

そのほか、保育士等養成施設や社会福祉系の大学を卒業後、同様に介護福祉士養成施設(1年以上)で学ぶルートもあります。
養成施設卒業後、その年の国家試験に合格できなかった場合も5年間の期限付きで介護福祉士として働くことができます。

その間に試験に合格するか、5年間介護関連業務に従事した場合は引き続き介護福祉士の資格を継続できます。

福祉系高校から目指す


教室 黒板
福祉系の高等学校
を卒業するルートです。平成21年度以降の入学者であれば、この条件のみで受験資格を得ることができます。
それ以前の入学者やその他特例高等学校の卒業者の場合は条件が異なるので、前述の公益財団法人社会福祉振興・試験センターで詳細を確認してください。

実務経験から目指す


実務経験を活かすルートです。
介護に関する実務経験を3年以上積み、実務者研修あるいは介護職員基礎研修(介護職員等初任者研修)および喀痰吸引等研修を修了することで受験資格を得ることができます。

なお、実務者研修の前身であるホームヘルパー1級ではこの条件を満たすことができません。改めて実務者研修を修了する必要があります。

経済連携協定(EPA)から目指す


EPAのアルファベットが書かれた積み木が並んでいる

インドネシア、フィリピンおよびベトナムから来日した介護福祉士候補者はこれに該当します。
いくつかの要件をすべて満たした施設で指定された研修を受けながら、3年以上の実務経験を積むことで受験資格を得ることができます。

合格率

例年の合格率は70%を少し超えるほどです。
令和3年度の受験者数は84,483人、うち合格者は59,975人、合格率は71.0%でした。

1年当たりの試験実施回数

例年、筆記試験は1月下旬、実技試験は3月上旬に行われます。これは各学校や養成施設等の卒業時期に合わせているためです。
チャンスは1年に1度なので、入念に準備したうえで試験に臨みましょう。

試験科目

試験は以下の科目で構成されています。

筆記試験
  1. 人間の尊厳と自立、介護の基本
  2. 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
  3. 社会の理解
  4. 生活支援技術
  5. 介護過程発達と老化の理解
  6. 認知症の理解
  7. 障害の理解
  8. こころとからだのしくみ
  9. 医療的ケア
  10. 総合問題(1から10までの知識・技術について横断的に問う問題を事例形式で出題)
実技試験
実技試験では、介護等に関する専門的技能が求められます。
養成施設卒業者や、平成21年度以降入学の福祉系高等学校卒業者はこれを免除されます。
実務経験をもとに資格取得を目指す人も、実務者研修あるいは介護職員基礎研修(介護職員等初任者研修)および喀痰吸引等研修を修了していれば実技試験が免除されます。
経済連携協定(EPA)ルートで資格取得を目指す人の多くは実技試験を受けることになります。
慣れない外国で働き、研修を受けながら免除の条件である実務者研修までもこなすことは難しいためです。

採点方式と合格基準

筆記試験は満点を125点とし、配点は1問につき1点です。
満点125点に対して75点以上の得点が求められます。さらに、出題される11科目すべてで得点する必要があります。

実技試験は満点を100点とし、60%程度の得点が求められます。なお、出題される問題の難易度によって合格点は調整されます。

ボーダーライン、合格基準

取得に必要な勉強などの費用

前述したように、受験資格を得るには指定された養成施設や高等学校などの卒業が選択肢のひとつとしてあります。
例として、養成施設は卒業までにおよそ100万円から200万円程度の費用がかかるとみるべきでしょう。

実務経験を軸として取得を目指すのであれば、実務者研修にはおよそ7万円から15万円、介護職員基礎研修には数万円から10万円、喀痰吸引等研修は2万円から5万円程度の受講費がかかります。

また、合格後には介護福祉士の登録免許税として9,000円、登録手数料として3,320円を支払う必要があります。
これは養成施設・実務経験どちらを軸とした場合も共通です。

受験料

2021年度の試験より受験料が値上げされ、15,300円から18,380円となりました。

受験申込方法

過去に受験したことのある人、つまり受験資格を満たしていると判断されたことがある人は社会福祉振興・試験センター公式サイトからインターネットで申し込むことができます。

個人で初めて申し込みをする人は、例年9月初旬頃までに「受験の手引」を取り寄せて郵送で申し込む必要があります。
養成施設やその他指定されている学校で取りまとめて申し込む場合もあります。

申込書

まとめ

介護福祉士は、介護に関する知識・技能を十分に有していることを認める国家資格です。
この資格を足掛かりにさらなる実務経験や研修を経て、介護領域の専門家として施設のトップを務めることも可能です。

また豊富な知識、経験で培った技術を生かして後進の育成に携わるのも重要な役割のひとつです。
日本の高齢化は今後もさらに進み、介護の領域では高い能力を持つ人材がよりいっそう求められることになるでしょう。

取得への道は決して平坦なものではありませんが、介護の世界で活躍したいと考える人にとって、チャレンジする価値のある資格であることは間違いありません。

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