皆様こんにちは。今日は「パン製造技能士」についてお伝えします。
国家資格で、厚生労働省が認定しており、パン作りの高度な技術を有していることが対外的に証明されます。
今回は、パン作りの造詣(ぞうけい)を深めるパン製造技能士を解説していきます。
Contents
適用する仕事
適用する仕事は2つに分かれます。
ホテル、レストランのベーカリーショップ
ホテル、レストランでは、規模の大きい店舗となると、一日のうちに焼き上げなければならないパンの種類は百種類にまで及びます。
曜日や記念日などによって焼くパンの種類が増えたり変わったりするためだと推測されます。
店舗の環境によっては、気候に時間配分が左右されることもあります。
効率を維持しつつ臨機応変に行動するには、長い経験を積む必要があります。
街のベーカリー(パン屋さん)
イギリスパンのスライス、おしゃれな陳列やラッピングといった、パン製造技能士の知識が直接役立てられるような、いかにもパン屋さんらしい理想的な業務だけでなく、予約受付対応、混雑する時間帯の速やかなレジ業務、商品の補充、店内の清掃と衛生管理、値段と品質に関する専門知識を用いたクレーム処理、厚生労働省の奨励するHACCP支援法を取り入れたパン製品の検査といった、店を経営するうえで必要である現実的な業務もこなさなければなりません。
また、商品のこだわりを説明したり、パンの黒い斑点に不安を抱いたお客さまを安心させるための商品知識解説したりするなど、プロフェッショナルであるパン製造技能士にとっては当たり前のように気にならないことであっても、「お客さまに説明する必要がある場合においてのコミュニケーション能力」も求められます。
そのほか、小麦粉、バター、チョコレート、ナッツ、ドライフルーツといったパンの材料の仕入れ、在庫管理と資金繰り、バンドワゴン効果を見据えたヒット商品の提案と開発など、やることは山積みです。
また、小麦粉や砂糖の袋はとても重たいです。
普段から運動してない方にとって資材の運搬は意外と重労働になるでしょう。
それから、酵母は気温変化に敏感です。
季節に左右されず正しい発酵がなされるよう室温を一定に保つ必要があるため、開業する際の立地を選定するためのデータに加えましょう。
その他の製パンについて
製パンにおいては、ベーカーズパーセントを用いた製パン時における材料の分量算出、経験と直感が要求されるミキシング、一次発酵とベンチタイムでのフィンガーテスト、見た目の美しさだけでなく手際の良さも求められる成形、二次発酵での発酵ピーク見極めといった、パン製造技能士の実力がいよいよ試されます。
また、パンの焼成、成形、二次発酵、焼成に要する時間から逆算して数種類のパンを同時に作ったり、人気の焼き立てパンを求めるお客さまを見越した仕込みスケジュールを考えたりする必要もあります。
火傷も多いです。袖をまくった状態でオーブンからパンを出し入れするためです。
オーブン担当者は熱気からくる暑さに袖をまくるため、腕をよく火傷します。
また、二次発酵するのにホイロ(タンスのような発酵機)を採用している店舗だと、天板を取り出すとき、下段のパン生地に袖口が当たって生地が変形してしまう恐れがあり、この場合もやはり袖をまくります。
両手を塞いで天板をオーブンに運ぶとき、火傷してしまう場合があります。イメージとは程遠い過酷な職場であるでしょう。
毎日、同じ種類のパンを同じように焼成するために、気をつけることと決めておくことが、これだけたくさんあります。
パン製造技能士の試験では、実務経験を要求される階級が存在します。
製パンの世界は、日々たゆまぬ研鑽(けんさん)が大切なわけですね。
おおよその年収とキャリアパス
求人として例を挙げると
- 「時給900円 ベーカリー販売・製造スタッフ アルバイト・パート」
- 「月給18万 低糖質ベーカリー店舗スタッフ 正社員」
- 「年収300万 パン製造技能士の通信講座講師 業務委託」
- 「月給21万 パティスリーでの洋菓子製造 正社員」
パン製造技能士のインストラクターも見受けられます。
また、パティスリー(洋菓子店)でも、パン製造技能士取得者を歓迎しているようです。
レストランベーカリーのキャリアパス
店長が、運よく、ホールのエキスパートを育てたいと考えていた場合のとき、ホール専任で技術を学べば、ホールのエキスパートになれるかもしれません。
ホテルベーカリーのキャリアパス
新卒採用が多いです。
第二新卒や高卒も未経験として歓迎されるみたいです。パン作り一つひとつの工程を丁寧に教わります。
製粉会社のキャリアパス
高卒以上から歓迎されます。未経験歓迎もあります。
機械の操作方法と出荷の方法を学びます。基本的に転勤はないそうです。
パン製造技能士を生かしたベーカリー開店に至るまでのキャリアパス
さて、いくつか道程があります。
- 「工場などパン製造業に従事→勉強、修行独立という形で自分のベーカリーを開店」
- 「ベーカリーに就職→勉強、修行→独立という形で新しく自分のベーカリーを開店」
- 「異業種転職という形で独立し、自分のベーカリーを開店」
パン製造業から独立する場合、研鑽する時間を見つける必要があります。
ベーカリーに就職した場合、じかにノウハウが学べます。
異業種転職の場合、実務経験に乏しいため、かなり難しいです。
独立開業するには、パン製造技能士に併せて「食品衛生責任者」の資格も取得する必要があります。
一般的に、志してから独立するまで3~5年かかるといわれています。
パンの消費量は、昨今、米の消費量を上回っています。
しかし、コンビニパンのラインナップが充実してきた影響といわれており、新規開店した町のベーカリーは逆風にさらされているといえるでしょう。
生き残るためには、美味しさはもちろん、より独創性の高い差別化が求められます。
また、雑誌やポータルサイトなどで取り上げられるとグッドです。
SNSにアップしたくなるような見た目のパンを考案するのもよいでしょう。
認可団体
パン製造技能士を主催している団体は中央職業能力開発協会(JAVADA)です。
受験条件
特級、一級、二級の三つがあります。
特級は、一級合格のち、実務経験が5年以上必要です。
一級は、7年以上の実務経験、または、二級合格のち、実務経験が2年以上必要です。
二級は、2年以上の実務経験が必要です。
合格率
公表されていません。
1年当たりの試験実施回数
原則、一年に前期と後期、二回実施されます。
試験科目
特級
特級は、学科と実技があります。
学科は、五肢択一式で、全50題です。
試験範囲は、作業管理、工程管理、品質管理、原価管理、作業指導、安全衛生管理、設備管理です。
一級
一級は、学科と実技があります。
学科は、真偽法と四肢択一式が採用されています。合わせて50題です。
学科の試験範囲は、食品とパンに関する一般知識、材料、法規、安全、衛生管理といったパン製造法に関する知識です。
一級実技では、イギリスパンを「4本」作ります。
「一級実技のみ」、水の配合割合を手がかりにベーカーズパーセントを算出します。
二級
二級学科は、一級と同じ科目で、合わせて50題の真偽法と四肢択一式が採用されています。
二級学科と一級学科の具体的な範囲までは公表されてません。
二級実技では、イギリスパンを「3本」作ります。
一級と二級の実技で共通する科目があります。
強力粉と中力粉の見分け、各材料の秤量、ストレート法によるミキシング、発酵、焼成が共通科目です。
採点方式と合格基準
全級一律、100点満点中、学科試験は65点以上、実技試験は60点以上獲得で合格となります。
具体的な採点方式は公表されていません。
取得に必要な勉強などの費用
パン製造技能士の取得に必要な本をご紹介します。
初めてでも驚くほど美味しい 日本一やさしい本格パン作りの教科書 レーズン酵母編
- 出版社:秀和システム
- 商品名:初めてでも驚くほど美味しい 日本一やさしい本格パン作りの教科書 レーズン酵母編
- 価 格:1,870円(税込)
フランス・パリにて1896年に創立された調理師・製菓養成施設のLe Cordon Bleu(ル・コルドン・ブルー)で、diploma(ディプロマ)の称号を取得され、自家製酵母パン教室オランジュリーを東京都北区に構えた、著者の松尾美香氏が、本格的なパンの作り方をやさしく解説します。
自身の開設したユーチューブチャンネル「日本一やさしいパン作りチャンネル」は、登録者数1万人超を記録しました。
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
- 出版社:柴田書店
- 商品名:パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
- 価 格:2,200円(税込)
米国製パン研究所製パン科学学科とカンザス州立大学農学部穀物学科で学び、1986年、辻製菓専門学校に入職後、非常勤講師としても従事した著者の吉野精一氏が、ミキシング、発酵、成形、焼成プロセスの、より細かな細分化を、生地内部の化学反応も交えて解説します。
製パン科学と穀物科学の二つの視点から製パンに切り込んでいるといえるでしょう。
ざっくりだから、手軽でかんたん。 世界一作りやすい本格おうちパン
- 出版社:KADOKAWA
- ざっくりだから、手軽でかんたん。 世界一作りやすい本格おうちパン
- 価格:1,540円(税込)
365日毎日新しいパンを閃いて焼いているほど自家製パンに打ち込んでいると自身のブログで発言する著者の鈴木あつこ氏は、2015年4月に「あつあつパン教室」を自宅開業、また、同名のユーチューブチャンネルも開設しています。
シュガーレーズンパン、オニオンリュスティック、フルーツデニッシュなど25種以上のレシピが収録されています。
受験料
全国の都道府県職業能力
全級一律です。
学科試験3,100円(税込)
実技試験18,200円(税込)
受験申込方法
全国の都道府県職業能力開発協会から申込書が取り寄せられます。
希望する地域の都道府県職業能力開発協会に問い合わせましょう。
また、地域によっては、35歳未満の方の二級実技試験手数料が9,200円(税込)に割引されている場合があります。
詳しくは各都道府県職業能力開発協会公式サイトを一読ください。
まとめ
美味しいパンをお客さまに届けましょう。
皆様も、パン製造技能士取得を検討してみてはいかがでしょうか。
関連する記事はこちら
レストランサービス技能士について