8話『逆光、オススメです。』
前回のファミレスで新菜と海夢、沙寿叶と心寿の4人が会う場面の続きから始まります。
心寿が今まで撮った沙寿叶の写真を海夢たちに見せます。
乾姉妹はその会話から、お互いがお互いを大好きで、信用し合ってコスプレの活動をしていることがわかります。
本題であるカメラの説明に移り、レンズの種類についてや、スマホで撮るのとはどう違うのかなど、わかりやすく説明していく心寿。
最初のおどおどした態度とは裏腹に好きなことについて話す心寿はとても楽しそうです。
「イメージ通りに撮れたり、ふとしたいい表情が撮れると本当に嬉しくて、もっと上手に可愛く撮りたいって思うんです」そう言う心寿に海夢が「心寿ちゃんはコスしないの?」と尋ねますが、意味深な間の後思い切り否定します。
カメラを借りて何枚か写真を撮る海夢は「お金貯めて絶対買う」と決心をしますが、新菜がその値段を調べてみるとピンキリではあるものの、とても高価なものであることがわかります。新菜は驚き、躊躇いますが、海夢は「お金が貯まるまではスマホで撮る」と諦めません。
4人は借りるスタジオのロケハンに行くことになりました。
ロケハン当日。そこは廃病院スタジオ。
廃墟にくるのは初めてと言いながらもどんどん中へと入って行く心寿と海夢、なかなか入口から動けずにいる沙寿叶とそれを気にする新菜の二人ずつの行動になります。
電気がつかない廃墟の室内だと、写真が暗くなりすぎることを気にする海夢に、心寿は「ストロボがあるので平気」と答えます。
加えて逆光にすると肌の質感も綺麗に見えて、また、顔が暗くなってしまわないようにレフ板を使うことで明るくすることができると解説します。
「ウィッグが透けてキラキラするし、艶も綺麗に出るので、逆光、おすすめです。」
雨が降り出し、雷が鳴りだします。
沙寿叶は階段の踊り場にうずくまってしまいます。新菜が心配して声を掛けますが、沙寿叶は強がります。
「ブラックリリィのコスができるのに、ちゃんと中を確認しておかないと、いい写真が撮れない」と言いつつも体は震えてしまっています。
「でも、無理してますよね。何か理由があるんですか?」と新菜が聞くと、沙寿叶は自身の将来の夢について語りだします。
強くてキラキラしてかっこよくてフリフリのかわいい服を着た魔法少女になりたいと幼いながらに願ったものの、成長するにつれそれは架空のものだと理解し、努力しても願っても一生叶わないと夢を諦めていた沙寿叶。しかし、中学生の時に衣装が売ってることを知り、初めてコスプレをします。「クオリティは酷いものだった、それでもただ本当に嬉しかった」「コスプレをすることで夢を叶えたい。」
「そんなに大切な衣装なのにどうして俺に頼んだんですか?」と新菜が聞くと、「海夢の写真を見た時嫉妬した」「うまく説明できないけど、理屈じゃない。一目惚れしたのよ。あなたの作った衣装に。」と答えます。それを聞いて新菜は、自身が祖父の作った雛人形に一目惚れした時の事を思い出します。それから、爺ちゃんみたいに一目惚れさせる人形が作りたい、と夢を抱いたことも。そして、作品こそコスプレの衣装で人形ではないものの、言われて一番うれしい言葉を言われ、新菜はよろよろと沙寿叶に近づいてその手をとり、「ありがとうございます。」とお礼を言います。
エスカレーター式女子校に通っていて、同年代の異性に手を握られるのが初めてだったため、動揺し、いよいよ倒れてしまいました。
場面は変わり、期末テスト終わりの学校。
「海こうぜ。今から!」と海夢は新菜を誘います。
そして本当に海に行く二人。海夢の行動力に驚きつつも、買ったハンバーガーを手に並んで浜辺を歩く新菜。海開きはまだなので他に人はいません。
レジャーシートを敷いて座って食べたり、海に足だけ入ってみたり海を満喫します。
「子供の頃から人形ばかりで他に目もくれなかったので、行ったことがない場所が多くて」と話す新菜は、テレビなどで見たことはあったものの、実際に海に来るのは初めて。
想像より何倍もきれいな海を見て触れて、祖父にいろんなものを見ろと言われたことの意味を知ります。
「いいですね、海。綺麗です。」と言う新菜の横顔を見つめる海夢。そして勇気を出して「じゃあ、あたしといろんなとこ行こうよ!!あたしと、ふ、二人で!!」と誘います。新菜は海夢の恋心には気づかず、純粋に「いいんですか?よろしくお願いします。嬉しいです。」と返し、二人は夏休みも会う約束をします。
レジャーシートに戻り、火照った頬を扇ぎながら、夏の間も会えることを喜ぶ海夢。ふと新菜の方見て、何気なくスマホのカメラでシャッターを切ります。心寿が冒頭で言っていた、「ふとしたいい表情が撮れると嬉しい」気持ちがわかった海夢なのでした。
8話はそこで終わります。
みどころ
最初は緊張していた心寿が沙寿叶の事になると饒舌に話し、お姉ちゃんの事が大好きな様子がほほえましいです。
最後の海のシーンは、一期の中でも特に好きなシーンです。キラキラした海を背景に、これ以上ないような笑顔を見せる二人を見るとザ・青春という感じがして「尊い…」という感情以外湧きません。おこがましくも二人がうまくいく今後を願ってしまいます。
9話『写真を見たら色々あったからです』
乾姉妹と『フラワープリンセス烈!!』の合わせが決まり、新菜と海夢が買い出しから帰ってきたところから始まります。
早速、新菜の部屋で衣装づくりに取り掛かり、海夢も小物づくりを手伝います。
「自分も役に立ってる感が嬉しい」と言う海夢に「ちゃんと役に立ててたんだ」と嬉しくなる新菜。
ブラックロベリアのハイレグはインポートの水着で再現することに。
手作りと既製品をうまく使い分けながら制作をします。
最初のころに比べて、二人での行動が自然になってきていて、新菜もだいぶ海夢に慣れてきています。
突然スカートをめくって着て来たハイレグを披露する海夢の行動にあたふたする新菜もお決まりみたいになってきました。
そして完成した衣装を新菜の家に呼んで沙寿叶に見せます。
早速袖を通した沙寿叶は目をキラキラと輝かせて嬉しそうです。
スカートの広がりを再現するためには沙寿叶の私物の硬めのチュチュを使用することになりました。
衣装について話し合う二人の会話がかっこいいと思い、「あたしもわかってる風のこと言いたい!」と感想を聞かれて試みますが、「やばい!」「鬼やばい!」「マジのガチでやばい!」しか出てこないのが海夢らしいです。
海夢はウィッグと化粧までします。
そこで沙寿叶は海夢のファンデーションの色についてアドバイスします。
髪の色が明るいキャラだから普段よりワントーン明るいものが良く、下地とファンデーションの間にブルーのコントロールカラーを挟むとより透明感がでるそう。
リフトアップテープを使い、目の形も変えます。
そして完成したコスプレの完成度はさすがのもの。
切れ長の目に、カラコンを使ってオッドアイにし、普段のギャルメイクではなく美人風のメイクをした海夢はかなりブラックロベリアの雰囲気に近づいています。
本人も「あたしってブラックロベリアだっけ!?」となる程で、嬉しさを昇華させるため海夢は無言で新菜をぽかぽか叩きます。
沙寿叶も素直に衣装を褒めます。
そして撮影当日。あいにく天気は雨になってしまいました。
例の廃病院スタジオで衣装に着替え、撮影準備をしている心寿と新菜を待つ海夢と沙寿叶。
一緒に写真撮ったり、その写真をSNSにアップしてその反応を見たりして待ちますが、なかなか二人はやって来ません。
「すみません、お待たせしました。」と声がした方を向いて二人は固まります。
そこでロケハンの日の回想が入ります。
別れ際、心寿と二人になった時に新菜は「本当はコスプレしたいんじゃないですか」と聞きます。それを聞いて黙る心寿に「勘違いでした」と訂正し、帰ろうとしますが、
「してみたいです!本当は。」
と心寿が呼び止めます。
すごく好きなキャラがいてやってみたいし、沙寿叶を見て羨ましいと思いながらも沙寿叶みたいに可愛くないし細くないし、自分がやったら変になって沙寿叶に嫌われてしまうかもしれないとコスプレしたい気持ちを押し殺そうとしますが、新菜は「少しでもやりたい気持ちがあるならやりましょう」と背中を押します。
その心寿が好きなキャラクターはフラワープリンセス烈!!に出てくる颯馬おにいちゃん。姉の沙寿叶に似ていて大好きと語ります。
そうして心寿は合わせの日に海夢達と一緒にコスプレをすることが決まり、海夢達に内緒で準備することになりました。
一回目の秘密の準備。心寿を新菜の部屋に呼びます。
中学生なのでバイトができず、衣装にお金がかけられないという制限がありますが、颯馬おにいちゃんの制服は新菜の学校の制服にそっくりなため、それを代用することになりました。
どうやって男性らしい体に見せるかが課題になり、二人は考えます。
まずはサラシを使って凹凸をなくす方法を思いつきます。
早速試すことになり、新菜は部屋の外で待ちます。
「キャラに近づけるために顔も体も変えるってすごいことだけど好きなものになりたい気持ちが強いからこそできることだな」と、海夢や心寿を思い出し考えます。
サラシをつけてみた心寿をみると、ないよりはマシですがそれでも体の丸みを隠しきれません。
ネットで調べて「Bホルダー」というアイテムがあることを知ります。写真をみると見事に胸が平らになっています。値段も高くなかったので、それを買うことにしました。
2回目の秘密の準備の時にはウィッグもメイク道具も用意でき、1万円以内で収めることができました。
節約のためウィッグも新菜がカットすることに。
緊張してなかなかハサミがいれられない新菜を心寿は意外に思います。
「あんなにすごい衣装つくっちゃうから、器用でできないことなんてない人だと思ってました。」
それを聞いて、新菜は「俺、同じクラスに憧れてる人がいるんです」と話しだします。名前こそ出しませんが海夢の事です。
自分とは正反対の人で、悩んだりしないのかと思ったけどその人にもやりたくてもできないこと、うまくいかないこと、失敗することもあるを知り、
「胸の内は目に見えないのでわからないだけで、誰にでも色々あるんですよ」と言います。
それを聞いて心寿は沙寿叶のことを思い浮かべます。
そして回想が終わり、場面はスタジオに戻ります。
「あのね、私もコスしてみたんだけど」と自信なさげに言います。
沙寿叶と海夢は心寿に駆け寄り、口々に感動を言います。二人とも大喜びです。
「本当に素敵。素敵よ、心寿。似合ってるわ。」と沙寿叶に言われ、新菜の方を振り返ります。「良かったですね」と優しく言ってもらい、うるっとします。
三人で自撮りをしていましたが、スタジオが1時間15000円のことを思い出し、慌てて撮影を始めるのでした。
9話はそこで終わります。
みどころ
着せ恋で初の男装に挑戦する新菜と心寿の試行錯誤が面白いです。
好きなキャラになりきるために、コスプレイヤーの方がどんな工夫やアイテムを使っているのか知ることができます。
また、自分の願望を抑え込んでしまう心寿に対して、新菜の方から声を掛けたところは、新菜の成長を感じます。
青春ラブコメでありながらコスプレについていろいろ知ることができるこの作品の面白さを実感できる回だと思います。
乾沙寿叶(いぬい さじゅな)
高校2年生。かなり小柄な体格で童顔のため、年相応にみられることはほぼありません。
周りにかみつくような強気の態度が多いですが、認めた相手には素直に受け答えします。特に妹にはデレデレこそしないものの、かなり甘いです。
感情の向くままにふるまい、行動するタイプで、怒る、泣くなど感情表現が豊かで見ていて楽しいキャラクターです。
コスプレも少女のキャラクターを多くしていて、SNSでは定評があります。周りの評価は気にせず、自分の好きを極めていて、こだわりも強いです。
「~だわ」「~しなさい」などの、気位の高いお嬢様のような特徴的な話し方をします。
乾心寿(いぬい しんじゅ)
沙寿叶の妹で中学生。姉とは対照的でかなり背が高く、発育も良すぎるほど良いです。
性格も正反対で、初対面の相手には緊張しておどおどし、基本的に腰が低いです。好きなことについて話す時には、どもることなく話します。
感情や願望を押し込んでしまうところがあるようで、新菜に似ているところがあります。
姉のことを一番にかわいいと思っており、写真撮影にもかなりこだわっていて、専門知識も豊かです。