今回ご紹介するのは、その後のアクション映画に大きく影響を与えたといわれるアメリカ映画の大作「ザ・ロック」(1996年公開)です。
戦死した軍人に対する処置に不満を抱いた准将(エド・ハリス)が、化学兵器を積載したミサイルを盗み、かつての連邦刑務所であるアルカトラズ島、別名「ザ・ロック」に人質を取って立てこもります。
それに対して、FBIは若手の化学兵器専門家(ニコラス・ケイジ)と、アルカトラズから脱獄した経験を持つ囚人(ショーン・コネリー)を特殊部隊と一緒に送り込み、「ザ・ロック」の奪還を図ります。
3大俳優が繰り広げる痛快なアクション超大作です。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
伝説的英雄であるフランシス・X・ハメル准将は、アメリカ政府に憤りを抱えていました。彼の部隊は極秘任務において敵に囲まれてしまい、一切の救援もなく全滅。さらに、国はこれを隠蔽し、勲章や遺族への賠償金もありませんでした。
これを許すことができないハメル准将は仲間の海兵隊員グループを引き連れて侵入し、そこにある化学兵器のガスロケットを盗み出します。
そして、アルカトラズ刑務所「ザ・ロック」を占拠して旅行客を人質にとります。命を失った遺族への賠償金として1億ドルを要求し、受け入れない場合はサンフランシスコに毒ガスロケットを撃ち込むと脅迫します。
対策本部はかつて優秀な英国諜報員だった脱獄の名手であるジョン・メイソンと、化学や生物学に詳しいFBI化学兵器研究所に勤務するスタンリー・グッドスピードに白羽の矢を立てます。
しかし、グッドスピードは戦闘が専門ではない捜査官であり、メイソンはアルカトラズから唯一脱出した男でFBIに囚われた過去を持っていました。
この異色の男2人とシールズのメンバーが、鉄壁のアルカトラズに潜入を開始します。
しかし、待ち伏せしていた海兵隊員たちに包囲され降伏を迫られます、シールズ隊長のアンダーソン中佐はこれを拒否、銃撃戦の末シールズ隊員は全滅します。
生き残ったグットスピードとメイソンは、たった2人で海兵隊員と戦いながらVXガスの無効化に挑むことになります。
ロケットのある部屋に侵入した2人はロケットから誘導チップを外していきますが、そこにハメル准将たちがやって来て2人は逃亡劇を繰り広げます。
メイソンは残りのロケットをグッドスピードに任せ、時間を稼ぐために自らハメル准将の元へ行き、彼に計画を止めるよう説得します。しかし、聞く耳を持たないハメル准将は彼を捕らえ、間もなくグットスピードも捕まってしまいます。
そんな中、対策本部は人質の犠牲を承知で、島を完全に焼くことで事態を解決しようとしていました。
ハメル准将は定刻通りにロケットを発射する命令を出しますが、直前に進路を入力し直し、1基を海に落下させます。このことでハメル准将は部下からの信用を無くし、拘束されて指揮権を奪われそうになり、銃撃戦となります。
その現場を目撃した2人はハメル准将から残りのロケットの在り処を聞き出し、メイソンは解除に向かいますが、やがて准将は命を落とします。
そして、米大統領は事態の収束のため島の爆破を命じます。
グッドスピードは最後の1基の誘導チップを外し終えますが、その際に毒物を灯台に隠して1つだけ所持します。
敵と取っ組み合いになったグッドスピードは所持していた毒物を相手の口の中に入れ込んで倒しますが、毒を浴びてしまい、渡されていた解毒剤を胸に打ちます。そして、任務完了の合図を出すために発煙筒をあげ、それに気づいたことで島への攻撃が中止されます。
後日、グッドスピードは平和な街中で事件後に消息を絶ったメイソンと密かに会います。
メイソンはJFK暗殺の証拠などの国家機密を収めたフィルムをグッドスピードに手渡し、どこかへと消えて行きました。
キャスト(FBI側)
ジョン・パトリック・メイソン(ショーン・コネリー)
元イギリス情報局秘密情報部部員・兼SASの大尉で、アルカトラズ刑務所からの脱獄に成功した唯一の人物。
1960年代にアメリカの機密情報の収められたマイクロフィルムを奪取しイギリスに逃亡する直前にFBIに捕まり、イギリス政府も事実を隠蔽した為身分も国籍もない消された存在となっていました。
裁判もなしに刑務所に幽閉されてしまったため、その経緯に関わったウォマックとはその頃から互いに憎み合っています。ジェイド・アンジェルはメイソンの実の娘です。アルカトラズの人質救出作戦の際にはどさくさに紛れて逃走を図るなど初めは非協力的でしたが、グッドスピードに事実を伝えられ、ようやく協力するようになります。
演:ショーン・ンコネリー
友人の勧めで『南太平洋』の舞台に立ったのをきっかけに本格的に俳優を志し、“No Road Back”で映画デビュー。
「007/ドクター・ノオ」でボンド役を得てから人気が上昇します。以後、ボンド役を引退してからも数々の映画に出演。87年、「アンタッチャブル」でアカデミー助演男優賞を獲得しています。
99年にはナイトの称号を得ます。06年に俳優業引退を宣言。20年10月、体調不良の末に眠りながら息を引き取った事が発表されました。享年90歳。
スタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)
FBI特別捜査官。専門は化学兵器のスペシャリストで射撃は訓練校時代に経験した程度のため実戦では役に立ちません。
FBIでも折り紙付きの化学研究員で、その才能を見込まれてアルカトラズに持ち込まれたVXガス弾無力化の為にメイソンとシールズ部隊と同行してアルカトラズに向かうことになります。
ビートルマニアであり、作中でもレアなビートルズのLP(ミート・ザ・ビートルズ)を購入しているほか、エルトン・ジョンの曲に言及するシーンもあります。ベージュのボルボに乗っています。
演:ニコラス・ケイジ
15歳で俳優を志しサンフランシスコの演劇学校に入学。いくつかの舞台を経験した後、82年「初体験/リッジモント・ハイ」で映画デビュー。
性格俳優的なクセのある役を演じることが多く95年、「リービング・ラスベガス」でアカデミー主演男優賞を獲得します。
同年、女優のパトリシア・アークエットと結婚。近年の主演作のほとんどがアクション作品と、その芸域を確実に広げています。一方、私生活では21年に日本人女性と5度目の結婚をしています。
ジェームズ・ウォマックFBI長官
メイソンとは彼がアルカトラズに収監される頃からの関係があり、メイソンの存在を知っている数少ない人物です。
メイソンが署名した特赦状をあっさりと破り捨て、否が応でも彼を自由の身にさせないようにするほどであり、メイソンも釈放する気はないことを見抜いていました。
内心ではメイソンの実力を認めており、突入部隊がグッドスピードとメイソンだけとなってしまっても「メイソンならやってくれる」彼を信頼している部分が見られます。
演:ジョン・スペンサー
1983年に「ウォー・ゲーム」で映画デビューした後、松田優作の遺作となった「ブラック・レイン」を始め、「シー・オブ・ラブ」などに出演。
1990年、本人も「分水嶺となった役」と呼ぶ「推定無罪」で、ハリソン・フォード演じる主人公に協力する刑事役を演じ注目を浴びます。
個性的な性格俳優として、政府高官や警官、軍幹部などのやや堅い役柄を演じました。
チャールズ・アンダーソン中佐
シールズの指揮官で階級は中佐。国家への忠誠心が厚く、ハメル達の決起には猛反発しています。
ハメルの降伏命令を頑なに拒否しますが、頭上から狙われているという極度の緊張状態の中、落下してきたブロックに反応してしまい、シャワールームで海兵隊員たちとの銃撃戦の末、チーム全員と共に壮絶な最期を遂げます。
演:マイケル・ビーン
映画は「殺しのファンレター」が本格デビュー作。ジェームズ・キャメロンの大ヒット作「ターミネーター」で未来から送られてきた戦士カイルを演じて一躍注目を集めました。
その後キャメロンの作品には「エイリアン2」、「アビス」と続けて出演して多くのファンを魅了。その後もアクションを中心に出演作を重ねています。
キャスト(テロリスト側)
フランシス・X・ハメル准将
現在の階級は准将。ベトナム戦争で最高の指揮官と称えられ、名誉勲章を生きて受章した数少ない人物。劇中では人格者といわれています。
ベトナム戦争後、カンボジア内戦や湾岸戦争の他、公にされていない非合法の軍事作戦の指揮に当たるも、戦場で幾度となく部下を見殺しにする国家の姿勢に反発し、臨時査察と称して15基のVXガスミサイルを奪取し、部下を率いてザ・ロックを占拠。
しかし、部下のフライとダロウに反乱を起こされ、至近距離から銃撃されてしまいます。
最期は自身の行いを悔やみ、グッドスピードに残りのミサイルの場所を伝えて息を引き取ります。
演:エド・ハリス
77年「コーマ」の端役で映画デビュー。「ボーダーライン」、「ナイトライダーズ」で批評家に絶賛され、以降演技派としてその地位を確立します。
主演作にも恵まれ「アポロ13」ではアカデミー助演賞にノミネート。その一方、舞台活動も熱心で83年、サム・シェパード作の「フール・フォア・ラヴ」でオビー賞の主演賞を受賞。「欲望という名の電車」、「ハムレット」などに出演し、高い評価を受けます。
トム・バクスター少佐
ハメルの右腕的存在で部隊のナンバー2で階級は少佐。1968年のテト攻勢の頃からハメルの部下として動いています。
ハメルが発射したミサイルの軌道を意図的に逸らした際は彼に対し一度は激昂したものの、フライ達が反乱を起こした時もハメルへの忠誠心を崩さず、ハメルに銃口を向ける振りをしてダロウに発砲したが弾丸はダロウの左腕に当り、逆にダロウに撃たれて死亡します。
演:デヴィッド・モース
80年「サンフランシスコ物語」で映画デビュー。しかしその後はTVへの出演が中心となって出演作を重ねながらTVシリーズの演出も担当。90年の「逃亡者」で映画に戻り、「インディアン・ランナー」や「クロッシング・ガード」で強い印象を残します。
「ザ・ロック」以降も「交渉人」など話題作に続けて出演しています。
基本情報
製作総指揮 ウィリアム・スチュアート ショーン・コネリー ルイス・A・ストローラー
撮影 ジョン・シュワルツマン
編集 リチャード・フランシス=ブルース
製作会社 ハリウッド・ピクチャーズドン・シンプソン・ジェリー・ブラッカイマー・フィルム
配給 〔アメリカ〕 ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ 〔日本〕ブエナ ビスタ インターナショナル
公開 〔アメリカ〕 1996年6月7日 〔日本〕 1996年9月14日
上映時間 135分製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $75,000,000
興行収入 〔世界〕$335,062,621 〔アメリカ〕 $134,069,511
ザ・ロックの見どころ ①
名優ショーン・コネリーをはじめ、ハリウッドを代表するアクション俳優ニコラス・ケイジ、「アポロ13」のエド・ハリスなど豪華キャストを迎えたこの作品は、どのキャラクターからも目が離せません。
ニコラス・ケイジもハマり役ですし、エド・ハリスの渋い演技もいい味を出しています。
そして、大御所ショーン・コネリーは007の引退版かと思わせる演技です。
また、この映画の魅力は何と言ってもそのストーリーにあると思います。
特に、映画の舞台であるアメリカの人々にとっては身近な内容となっており、悪役のハメル准将の行動に共感する人も多いのではないでしょうか。
ハリウッドの名アクションスター、アーノルド・シュワルツェネッガーは当初この映画の主演の依頼を受け断ったそうですが、後に公開された作品を観てそのストーリーの素晴らしさから、出演を断ったことを後悔したという裏話もあるそうです。
非常にクオリティの高いアクション映画だと思います。
ザ・ロックの見どころ ②
グッドスピードとメイソンのアクション
グッドスピードとメイソンのアクションシーンが、「ザ・ロック」の見どころの1つです。
メイソンがホテルから脱走した時のグッドスピードとメイソンのカーアクションは、思わず画面に釘付けになってしまいます。
次に、グッドスピードとメイソンは、猛毒ミサイルをハメル准将から奪い返す為に協力します。その時のグッドスピードとメイソンの協力プレイも迫力あるアクションシーンが多いです。
最初に敵対視している時のアクションと、次第に協力して息の合ったコンビで魅せるアクション。どちらも見どころです。
脱走したメイソンとグッドスピードの機転
メイソンがグッドスピードたちに協力する条件として、ホテルで身支度を整える事でした。それに従ったアメリカ政府ですがある事件が起きます。
メイソンがホテルから脱走したのです。メイソンが向かった先はサンフランシスコに住む娘の所でした。
メイソンと娘のやりとりを陰で見ていたグッドスピードですが、メイソンを追うパトカーが到着します。メイソンの娘はメイソンが脱獄してきたとは思っていないので、この事態に驚いています。
その様子を感じ取ったグッドスピードはある機転を利かせました。その機転とは一体何なのか、予想しながら観てください。
残り3基の猛毒ミサイルはどこにあるのか?
猛毒ミサイルは全部で12基ありました。9基を処理したグッドスピードですが、残りの3基が見当たりません。
そんな時にハメル准将は人質にとった観光客を脅し、グッドスピードとメイソンに降参するように伝えます。
すると、メイソンは素直にハメル准将の元へ向かい、残り3基の猛毒ミサイルの処理をグッドスピードに託しました。
果たしてグッドスピードは、残り3基の猛毒ミサイルを見つけ処理する事ができるのか、それともハメル准将に捕まってしまうのか、この映画の最大の見どころです。
ザ・ロックをもっと楽しむために
ハメル准将の所属する部隊とは?
アメリカ海兵隊武装偵察部隊。(通称フォース・リーコン)はアメリカ海兵隊所属の特殊作戦能力保有部隊で最強エリート集団です。
海兵隊と海軍もそもそも違い、海兵隊は最前線で偵察や戦闘を行う特殊部隊です。ハメル准将はここの伝説的な英雄ですので、いかに優秀で愛国心に溢れた人物かが分ります。
彼は軍人としての誇りを失っていなかったので、乱暴な部下の扱いには困っていた様子です。
本当は、元々サンフランシスコにロケットを撃ち込む意志はなかったと考えていいと思われます。
ネイビーシールズとは?
ネイビーシールズは、正規軍による本格的な戦闘に先駆け、特殊部隊の精鋭たちが敵地へ侵入し、敵性勢力の調査、情報収集活動を行い、一方で破壊工作も展開します。
彼らもまた最強部隊の1つなのです。90%以上がシールズになるまでの訓練で脱落していく過酷さです。
超エリート集団のシールズが瞬殺されるほど、ハメルの指揮と作戦と部隊は強かったといえます。
心臓に注射を打って治るのか?
この映画だけでなく、「アフターアース」においても、主人公の男の子が神経毒に冒されてしまい、自らの心臓に注射キットを打ち込むシーンがあります。
この作品では、グッドスピードが最後の死闘で相手の口に毒入りガラス玉を入れ込んで割ることで自分にも毒がまわるわけですが、すぐに緊急用注射を心臓に打ち込むことで助かります。
しかし、実際にはこれは不可能なようです。
アトロピンという物質に解毒作用がありますが、おそらくこれが入っていたと仮定しても、心臓の左心室に打ち込む必要性や角度の問題など非常にシビアで、肺への対処などを考えても処置は不可能レベルだと思われます。
よってこの部分はフィクション要素が高いシーンとなります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は「ザ・ロック」をご紹介しました。
80年代、90年代の時代を象徴する映画ジャンル間違いなくアクション超大作です。
そして、この「ザ・ロック」は数あるアクション超大作の中でも群を抜いて素晴らしい作品であると思います。
ストーリーは実に単純です。世界各地でたくさんの命を国のために犠牲にしてきた軍人たちが、国から何の賠償もされずに怒り心頭に発し、武装蜂起して最強の化学兵器を軍施設から略奪してテロリストと化して政府を脅迫します。
ただ、目的は金であるはずなのに、彼らはテロリストとは到底思えない心から信頼してついていきたくなるような規律正しい軍人ぶりを見せます。
テロリストとなった理由が国から惨めな思いをさせられた軍人の名誉を回復したいという抽象的な意思で動いているので、金が欲しいという下世話な欲望は微塵も感じさせないのです。これはエド・ハリスの好演によるところが大きいと思います。
そして、自分勝手だけど優しさと力強さに溢れるショーン・コネリーと、必死でついていこうとするが、実践では全く頼りないエリートニコラス・ケイジが、親子のような名コンビとして描かれています。
特に、ショーン・コネリーの強いお父さんぶりは、この人は絶対に死なないし一緒にいれば絶対助けてくれるという安心感がすごいです。
この作品で多用されているカットの切り替わりの速さ、ところどころのスローモーション、ズームから俯瞰から四方八方からみせるカメラワークは、それらを次々と切り替えることにより映像に緊張や緊迫感という強力な説得力をもたらしています。
「ザ・ロック」は後のアクション映画に大きく影響を与えた名作だと思います。
脚本 デヴィッド・ウェイスバーグ ダグラス・S・クック マーク・ロスナー
原案 デヴィッド・ウェイスバーグ ダグラス・S・クック