皆様はDTPというのをご存じでしょうか?
DeskTop Publishing(デスクトップ・パブリッシング)を略したもので、日本語では「卓上出版」を意味し、書籍や新聞などの編集に際して行う割り付けなどの作業をパソコン上で行い、プリンターで出力することです。
そして、実はこのDTPには「DTP検定」という資格があります。
今回はDTP検定について、どのようなものなのかご紹介していきます。
Contents
適応する仕事
DTPの仕事とは実際にどのようなものがあるのでしょうか。
大きく分けるとDTPデザイナーとDTPオペレーターの2つに分類されます。
両職種の大きな違いは、デザイン作業をするかどうかという点にあります。
DTPデザイナーは自身がデザインを制作しますが、DTPオペレーターはデザイナーがデザインした原案をもとに作業するため、基本的にデザイン作業は行いません。
ただし、仕事内容は所属する会社によっても異なります。
DTPオペレーターの仕事だとしても、デザイン作業を求められる場合もあります。
どちらも用途に応じて、以下のようなDTPソフトを使用します。
Adobe Illustrator | アドビ・イラストレーター |
Adobe Photoshop | アドビ・フォトショップ |
Adobe InDesign | アドビ・インデザイン |
QuarkXPress | クォーク・エクスプレス |
上記2つはグラフィックソフトで、イラストやグラフ、図などを描くにはIllustrator、写真やイラスト等の画像データを加工するにはPhotoshopを使用します。
下記2つは組版(印刷の一工程であって、文字や図版などの要素を配置し紙面を構成すること)に適した編集ソフトです。
DTPデザイナー
文章や写真、イラストなどをのレイアウトを考え、DTPソフトを使ってデザインをおこないます。
クライアントの要望や媒体のコンセプトに合う紙面をデザインしていきます。
現在ではパソコンを用いたデジタルの作業が中心になっているため、グラフィックデザイナーやDTPオペレーターとの線引きは曖昧で、仕事内容が重なる部分も大きくなっています。
DTPオペレーター
デザイナーが作成したデータをもとに、修正や加工をして印刷できるデータの作成をおこないます。
データの作成はDTPソフトを使用します。
そのため、基本的にDTPオペレーターはDTPデザイナーに比べてデザインの要素は少ないですが、明確な区切りはないため両方の仕事をこなす方が多いようです。
おおよその年収とキャリアパス
ここからは将来性についてお伝えします。
年収
会社に所属している場合、DTP関連職の平均年収はおよそ320万円です。
クリエイティブ業界全体の平均年収がおよそ380万円ですので、DTP関連職の年収は少し低めです。
また、近年は業界全体が低年収傾向にあり、長く働き続けたとしても大幅な収入アップは期待しにくいといわれています。
フリーランスの場合はクライアントや仕事量にもよりますが、仕事の獲得に悩む方から会社に所属していた時の数倍稼ぐ方まで千差万別なようです。
キャリアパス
DTP関連職はクリエイティブ系職種の入門的な位置付けでもあり、知識やスキルを身につければフリーランスとして独立したり、様々な職種にキャリアアップすることが可能です。
例えばデザインやコーディングを学び、グラフィックデザイナーやWebデザイナーに転職する方もいます。
認可団体
公益社団法人全日本能率連盟の登録資格であり、教育現場や各種企業から幅広く支持されている検定です。
1999年に開始し、すでに累計受験者は2万人を超え、合格者は約5,000人を超えています。
ペーパーテスト方式で行なわれた第14回までは社団法人日本経営協会が主催してきましたが、2006年7月よりCBT(Computer Based Test)方式の導入により株式会社オラリオが運営を引き継ぎました。
株式会社オラリオと株式会社ワークスコーポレーションとの合併で継続し、さらに2007年4月からは株式会社ワークスコーポレーションが運営していました。
そして現在は、2009年10月に株式会社ワークスコーポレーションを買収し、2015年1月に吸収合併した株式会社ボーンデジタルが運営しています。
受験条件
経験や年齢、学歴など受験に関する条件は一切設けられていません。
誰でも受験可能ですが、会場までの移動や試験時間といった時間も要し受験料もかかりますので、勉強して合格できるように自信をつけてから受験するようにしましょう。
合格率
DTP検定は「ディレクション」と「ビジネス」の2種類(詳細は後述の試験科目を参照)があります。
最近(2017~2019年度)の合格率はそれぞれ以下のとおりです。
ディレクション | |
2017年度 | 59%(合格者数178名/受験者数300名) |
2018年度 | 69%(合格者数308名/受験者数446名) |
2019年度 | 59%(合格者数177名/受験者数302名) |
ビジネス | |
2017年度 | 57%(合格者数86名/受験者数152名) |
2018年度 | 80%(合格者数94名/受験者数118名) |
2019年度 | 90%(合格者数128名/受験者数143名) |
ディレクションの合格率は横ばいですが、ビジネスは年々上昇している傾向があります。
1年当たりの試験実施回数
1999年に開始後は8月と2月の年2回、全国一斉方式で実施されてきましたが、2006年7月より随時試験になりました。
随時試験とは、受験者が試験日を選択して希望の日時で受験することができるものです。
その代表的なものが、パソコンの画面を見ながらマウスクリックで解答するCBT方式です。
受験日時が限られるという制約をなくし、受験者の利便性を向上させるため、DTP検定はCBT方式となりました。
試験科目
DTP検定には、企画・編集職や広報職向けの「ディレクション」と、社内外向けの資料を作る営業職や事務職をはじめ、全てのビジネスマンに向けた「ビジネス」の2種類があります。
ディレクション
編集者、広報宣伝担当者など印刷物制作の責任者対象の試験で、印刷物制作の全行程を総合的に管理・監督するディレクターとしての能力を評価する検定です。
WindowsとMacintoshの違いや各種アプリケーションソフトの特徴などを理解し、トラブルなく出力・印刷・加工できる状態に仕上げる対応力が求められます。
ビジネス
文書作成を必要とするすべてのビジネスマン対象の試験で、Windowsをプラットフォームとし、ワープロソフト・Wordを中心に検定します。
機能の知識はもちろん、配色やレイアウトの技能も要求されます。
60問/60分
- レイアウトデータ作成
- 写真画像データ作成依頼・修正
- 図版画像データ作成依頼・修正
採点方式と合格基準
ディレクション、ビジネスとも正答率70%以上で合格となります。
採点方式や配点は公開されていません。
取得に必要な勉強などの費用
これからDTPオペレーターやDTPデザイナーを目指したい高校生など若い年代の方は、芸術・美術系の大学に進学する、グラフィック系・デザイン系の専門学校に進学するという手段がありますが、学費は数百万円かかってしまいます。
そうでない方やその他の手段としては、DTPを学べるスクールに通ったり学習教材を購入して勉強することになるでしょう。
スクールに通う場合、講師から直接レクチャーが受けられるため合格への近道となりますが、費用は数万円~10万円程かかります。
最も安価な手段は学習教材を購入し独学で勉強することになりますが、地道な努力が必要となります。
DTP検定の種類毎に編集された「公式ガイドブック」は、独学の方を想定した構成で、各分野の基礎知識とテクニックを習得することができます。
また試験対策として、解答・解説付きの過去問題集を併用すれば、より効果的な学習が可能です。
ガイドブックは全国の書店やパソコンショップで発売されているほか、オンラインショップでも購入できます。
DTP検定公式ガイドブックには以下の4点があります。
上記2点はディレクション用、下記2点はビジネス用です。
印刷メディアディレクション(改訂版)
- 出版社名:(株)ボーンデジタル
- 書籍名:印刷メディアディレクション(改訂版)
- 価格:¥3,850(税込)
DTP検定ディレクション問題集(2017年改訂問題対応)
- 出版社名:(株)ボーンデジタル
- 書籍名:DTP検定ディレクション問題集(2017年改訂問題対応)
- 定価:¥1,760(税込)
Wordではじめるレイアウトデザイン
- 出版社名:(株)ボーンデジタル
- 書籍名:Wordではじめるレイアウトデザイン
- 価格:¥2,420(税込)
DTP検定III種ビジネスDTP公式問題集
- 出版社名:(株)ワークスコーポレーション
- 書籍名:DTP検定III種ビジネスDTP公式問題集
- 価格:¥1,760(税込)
※ただし、発行日は2014年3月です。
受験料
受験料はディレクション、ビジネスともに11,000円(税込)です。
受験申込方法
受験申込方法は個人で申し込む場合と、団体受験の場合でそれぞれ異なります。
個人受験
試験システムおよび会場を提供しているJ-Testingの予約専用ページにて、希望する試験の予約をします。
試験科目・会場・試験日時・支払い方法などを決定して申し込みます。
希望する会場の空席情報を参照し、都合に合わせた日程で予約できます。
試験会場は全国のJ-Testing指定会場が対象となります。
試験日の3ヶ月前から1営業日前の17時まで申し込みが可能です。
変更およびキャンセルは試験日の3営業日前17時まで可能です。
団体受験
10人以上の団体(会社および教育機関など)で、同一会場で一斉に受験をおこなう場合は団体受験となります。
会社の会議室や学校のPCルームなどで、インターネットに接続可能なPCを使用して受験が可能です。
受験予約をする場合は、会社や学校を会場とする出張試験の申し込みが可能です。
申し込み方法はDTP検定事務局への電話または、DTP検定ホームページのお問い合わせフォームから、団体名・受験種別・受験人数・受験予定日を明記の上、問い合わせしてください。
DTP検定事務局電話番号:03-5215-8665(土日祝日除く10:00~18:00)
まとめ
いかがでしたか。
DTP関連職の仕事やDTP検定について、おわかりいただけたかと思います。
Web媒体が普及した現在でも、紙媒体は根強い人気があります。
自分で印刷用のデータをつくり、インターネットで印刷を注文できるサービスが増えてきたように、今後もDTPは必要とされ続けると思われます。
興味を持たれた方はDTPの知識とスキルを身につけて、DTP関連職として良い作品をどんどん制作していくのもやりがいを感じるでしょう。
DTP関連の仕事というのは、緻密さや技術・知識が重要になる業務です。
細かな仕事が得意な職人気質の人向きの仕事ともいえるでしょう。
コツコツと細かな調整が必要な業務ですが、きれいに刷り上がった制作物を見ると、とても達成感がある仕事です。
また、DTP検定の上位的な資格としてDTPエキスパートというものもあります。
さらに上を目指したい方は、こちらも受験してみてはどうでしょうか。
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