今日はステンレス鋼についての検定をお話します。
ステンレス鋼というのは、表面に不導体被膜という非常に薄い保護被膜を形成する働きを持つため、錆に強くてずっと美しい状態を維持する鋼で主に鉄に11%以上のクロムを含有する合金鋼です。
そのステンレス鋼製品などに関する専門知識と技術を評価するための検定試験が、今回お伝えする「ステンレス鋼溶接技術者検定」なのです。
工業系のお仕事に就かれる方には興味のある試験だと思います。
Contents
適用する仕事
今回の「ステンレス鋼溶接技術者検定」の資格を取得すると、ステンレス鋼製品における専門知識と技術が身についている人物として評価されます。
というのも、造船業や製造業、建設業のステンレス溶接の作業で活躍できるからです。
現場で配管や建材(建築材)、ガードレール、鉄道レール、船舶などを溶接する仕事になります。
他にも、工場に勤務する場合はアクセサリーや家具、家電の生産などでも部品を流れ作業で溶接することになるのが一般的です。
それには資格を取得している方への採用が行われます。
ステンレス鋼溶接の作業は、空気中の放電現象を利用しながら溶接作業を行うアーク溶接をはじめ、さまざまな技術が必要となるため誰でも簡単にできるわけではありません。
技術者のスキルによってはできない溶接法もありますから、この「ステンレス鋼溶接技術者検定」を取得しているということは、JIS規格を基準に判断された一定レベルの知識・技能を持った人物として判断されうることとなるでしょう。
近年、溶接の技術者は高齢化していることもあるため、引退する人も増えているのが現状です。
現場では、より多くの技術者の力を必要と考えられているために、就職先も数多くあるものと思われます。
ちなみに、この溶接技術者に向いている人は次の通りです。
- 体力に自信のある方
- 慎重な性格の方(一歩間違えば重大な災害を引き起こしてしまうから)
- 視力に問題ない方(長時間細かい作業が続くため)
- 高い集中力を持っている方
- ものづくりが好きな方
おおよその年収とキャリアパス
まず、年収ですが「ステンレス鋼溶接技術者」は溶接工の1つと考えられます。
ですので、溶接工の年収やキャリアパスについてお伝えします。
年収は?
わりと新しい年のデータによると、溶接工の全国平均年収は約370万円となっています。
地方別にみると、東京都が約460万円、大阪府が約410万円、北海道が約360万円のようです。
溶接工は扱う工業製品の幅が広いため、扱うものや仕事の内容などにより収入が異なります。
1つのデータですが、それを見ると年収200万台の募集が70.4%と多数を占め、300万円台が25.5%だったので全国平均年収もわりと低めになりました。
割合は少ないものの、500万円台、600万円台の求人もあります。
上記に挙げたのは新規で入ったときの年収でありますが、もちろん年齢やスキルによって上がっていきます。
役職別の年収の年収を見てましょう。
- 見習い溶接工:年収300万円~
- 独立親方クラスの溶接工:750万円~1,000万円以上
- ベテラン溶接工:年収650万円~800万円
つぎに全体の年齢別年収推移予測です。
年齢 | 年収 |
20~24歳 | 265.6万円 |
25~29歳 | 280.9万円~330.9万円 |
30~34歳 | 263.5万円~363.5万円 |
35~39歳 | 310.7万円~414.7万円 |
40~44歳 | 345.0万円~466.0万円 |
45~49歳 | 399.9万円~521.9万円 |
50~54歳 | 449.2万円~559.2万円 |
55~59歳 | 444.5万円~554.5万円 |
60~65歳 | 277.5万円~554.5万円 |
また、会社によっては溶接作業に従事し、資格を推奨しているところは「資格手当」などがもらえるでしょう。
キャリアパスは?
溶接工は企業で正社員として働いている人もいれば、契約社員や派遣社員といった非正規社員で働いている人もいます。
また、溶接工として少しでも働いたことのある方は中途採用される場合があります。
年齢よりも実力が重視されるため「職業訓練校を卒業した」「資格を取得した」「数年間の溶接工の就業経験がある」などの条件がそろっていれば即戦力と見なされ採用されるでしょう。
とはいえ、若いうちや入りたての場合は技術の習得や経験を積むことが多いと思われます。
会社で先輩の指導を受けていき、ベテランの職人となると独立するケースもあります。
個人で町工場を立ち上げることも可能ですし、フリーランスとしての働き方もあり得ます。
しかし、それには業界との信頼関係が大切になってきます。
もちろん技術力が高いのが必須なのは言うまでもありません。
もし町工場を設立する際には、設備の費用が高額になることもあるため余裕をもって資金の準備が必要になります。
認可団体
「ステンレス鋼溶接技術者検定」を主催している団体は「一般社団法人 日本溶接協会:通称JWES」です。
所在地
〒101-0025
東京都千代田区神田佐久間町4丁目20番地 溶接会館
- 産学官の弛みない努力のもとで世界に冠たる溶接・接合技術の維持と発展を支え、製造立国である我が国の発展に貢献する
- 業種別の集まりである専門部会と、研究分野ごとの集まりである研究委員会の活動を通して、当該分野の技術開発とその普及・発展、ならびに人材育成に寄与するとともに、標準化・規格化を行い、広く社会に普及させる
- 溶接が関わる製品・構造物に対する信頼性を確保するためには、施工管理・非破壊検査などによる品質管理を支える仕組みが必要であるため、客観性をもって評価する「資格認証・認定制度」を継続的に開発・運用する
- 海外との対応、特にアジア諸国との連携強化を積極的に進め、国際交流に貢献するとともに会員各社にとって有用な中立機関として活動する
- 「溶接情報センター」から情報発信を行い、会員への重点支援に加え、社会に溶接接合技術の重要性をアピールするとともに教育・普及活動をインターネットを通して支援する
受験条件
この「ステンレス鋼溶接技術者検定」には、被覆アーク溶接、ティグ溶接、ガスシールドアーク溶接と3つの溶接方法で資格が区分けされています。
そして、各溶接方法には基本級と専門級があります。
各種類の基本級
1ヶ月以上溶接技術を習得した15歳以上の者(追記として労働安全衛生法に基づく「アーク溶接等の特別教育」を修了していることが望ましい)
各種類の専門級
3ヵ月以上溶接技術を習得した15歳以上の者で、 各専門級に対応する基本級の資格を所有する者。
ただし、基本級の試験に合格することを前提として基本級の試験と専門級の試験を同時に受験することはできる。
合格率
年度や都道府県により違ってきますが、おおむね合格率は約80%程度です。
しかし、一度資格を取得すれば一生使えるという資格ではなく、3年ごとに更新の試験があるので、資格を維持するためには再試験に受かり続けることが必要になります。
1年当たりの試験実施回数
日程は都道府県によって違います。
年1回だと思われます。
2021年は10月開催が多かったです。
試験科目
試験は学科試験と実技試験の2つがあります。
学科試験
学科試験は以下、6つの分野があります。
- ステンレス鋼の一般知識
- ステンレス鋼と溶接材料
- 溶接機の構造と操作
- 溶接施工
- 溶接部の試験と検査
- 溶接作業での安全衛生
実技試験
実技試験はJIS Z 3821にもとづいて行われ、外観試験及び曲げ試験により評価されます。
実技試験では、溶接姿勢、試験材料の種類や厚さ区分、溶接継ぎ手の区分、開先形状、裏当て金の有無等が問われます。
基本級の溶接姿勢は下向きで、専門級の溶接姿勢は下向き、立向き、横向き、上向きの全姿勢で行います。
採点方式と合格基準
学科試験の合格基準は正答率が60%以上とされています。
実技試験では溶接姿勢や溶接継ぎ手の区分など、複数の項目が定められたレベルを超えているかがチェックされます。
取得に必要な勉強などの費用
「ステンレス鋼溶接技術者検定」に対して、おすすめの学科試験用テキストがあります。
出版社名:産報出版
商品名:新版JISステンレス鋼溶接受験の手引
価格:¥2,409(税込)
「ステンレス鋼溶接技術検定における試験方法及び判定基準」に基づいて実施される「ステンレス鋼溶接技術検定」の受験者のため、ステンレス鋼溶接の基本的な知識や作業方法、そして資格取得方法を説明した手引書です。
第1部は受験講座、第2部は演習問題、第3部は演習問題模範解答、そして第4部は受験ガイドの4部構成となっております。
実技試験の場合は受験条件の欄で、基本級でも「1ヶ月以上溶接技術を習得した15歳以上の者」が対象ですので日頃の現場の中で鍛錬しましょう。
受験料
学科受験料金は1,100円(税込)と低額です。
問題は実技試験の料金です。
というのも、資格の種類によって料金が違います。
詳しくは「ステンレス鋼溶接技術検定」の公式サイトをご覧ください。
【ステンレス鋼溶接】
CN-FVHO | (1件毎)9,480円 |
CN-P | 42,860円 |
CA-FVHO | (1件毎)10,190円 |
CN-FM | 9,810円 |
CN-VM | 9,810円 |
CN-HM | 9,810円 |
CN-OM | 9,810円 |
CN-PM | 43,200円 |
TN-F | 6,780円 |
TN-VHO | (1件毎) 7,330円 |
TN-P | 19,920円 |
MN-VHO | (1件毎) 10,960円 |
MA-F | 11,300円 |
MA-VHO | (1件毎) 11,840円 |
MN-FM | 11,300円 |
MN-VM | 11,300円 |
MN-HM | 11,300円 |
MN-OM | 11,300円 |
MN-PM | 43,750円 |
受験申込方法
受験を申し込むには次の申込書を印刷して注意事項および申込書記入例を参照し、申込書へ記入してください。
そして、受験料金を添えて、地区溶接技術検定委員会に提出してください。
※詳細は「ステンレス鋼溶接技術検定」の公式サイト「ISO 9606-1に基づく溶接技能者評価試験」の欄をご覧ください。
まとめ
ここまでステンレス鋼溶接技術者検定について詳しく述べてきました。
この資格は一度取得してしまえば終わりではなく、3年に1回は更新試験を受けなければなりません。
そういう意味では検定料も掛かるし、めんどくさい資格ではあります。
ただこの資格を持っているとステンレス鋼溶接における信用は厚くなります。
実力の証明となりますので、転職や就職に有利になるでしょう。
業界としても需要はあるし、将来性も高いといえます。
今、溶接工に従事している方はこの資格を考えてみてはいかがでしょうか。
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