司法書士試験について

司法書士試験について

皆さんは司法書士という職業について知っていますか?
司法書士とは、法務省が管理する国家資格者で、登記を中心とした法律事務の仕事をする専門家のことです。
受験資格はないようですが、採点方式や合格基準に特徴があるため、とても難関な試験だといわれています。
司法書士とはどのような職業で、どう試験を受けるのかをご紹介していきましょう。

適用する仕事

適用する仕事は司法書士です。
司法書士は法務局、裁判所、検察長など行政機関に提出するための書類の作成や審査請求を行うのが仕事です。
こうした作業には法律に関する専門知識が必要となるため、資格を有する司法書士が個人や法人などから依頼を受けて代行するのです。

具体的にはこんな作業を行なっています。

登記業務

司法書士の中で代表的な仕事です。
登記とは、行政上の手続きを踏むことで、権利関係について公に示すための制度です。
登記の手続きには、大きく分けて不動産と商業(法人)の二つがあります。

登記作業のイメージ

まず、不動産登記についてですが、もし土地や建物の情報がオープンになっていなければ、売り買いなどの取引は安全に進めることができません。
そのような決まりがあるため、不動産の所有者や不動産の面積・種類など公に登録する「登記」をしなければなりません。

例えば、私たちがマイホームを建てたとき、家の所有者が誰なのかを公示するために「所有権保存登記」が必要になるのと同じことです。

このように不動産に関する権利を明らかにするために登記の手続きは必要であって、その手続きを司法書士は代理して行なっているのです。

そして、2つ目の商業(法人)の場合も上記と似ていて、起業をして会社を設立する場合には、必ず設立登記をしなければなりません。
会社も取引が行われる組織で、その取引の情報となるものが登記された会社の情報です。
情報というのは、会社の商号、本店、発行済株式の総数、資本金の額、公開会社であるか否か、誰が役員であるかなどです。

会社を登記することを商業登記制度といいますが、これがあることによって会社は安全かつ円滑に取引を進めることができるのです。
このような手続きを行うのが司法書士なのです。

訴訟代理・支援

認定司法書士であれば、訴訟の代理や支援も行うことができます。
訴額が140万円以下の事件を扱う簡易裁判所であれば、代理人として訴訟することができます。
簡易裁判所で扱われる事例は、貸金返還請求や建物明渡請求などでの裁判です。
こうした案件の中で、司法書士は代理人として争うことができるし、訴訟に関するさまざまな支援を行うこともできます。

成年後見人業務

成年後見制度

成年後見人の業務とは、認知症や障害を持っている方など、判断能力が不十分な方を財産管理の面で助ける仕事です。
家庭裁判所の審判を経て、本人に代わって財産管理や契約を行います。

他にも、有価証券や金銭を供託所である法務局に預けて、それらを渡すべき相手に適切に分配する手続きをする供託業務や企業の運営にかかわる法律上の規制を把握してトラブルを防いだり、解決したりする企業法務などの仕事もあります。

行政書士とどこが違う?
似たような職業に行政書士というのもあります。
しかし、行政書士が行うのは自治体などに許認可申請に対してです。
一方、司法書士は法務局や裁判所に対して書類を提出します。
作成する書類の種類や提出先が異なります。
そのため、両者は競合関係ではありません。

おおよその年収とキャリアパス

司法書士の平均年収は650万~800万円台でしょう。
これは雇われ司法書士もいれば、独立した人も含まれているからです。

また、年収は年齢によっても変わります。
全世代からみて、平均年収が945万円というデータも出ています。
ボーナスも多く出る職種なので、収入に差は出ます。
大きく成功している人の中には、年収2,000万や3,000万円もの大金を稼いでいる場合もあります。

年収のイメージ

司法書士試験に合格したら

司法書士試験に合格しても段階を踏むことが肝心です。

<試験合格後の大まかな手順>

  1. 中央新人研修を受ける
  2. ブロック新人研修を受ける
  3. 各司法書士会新人研修を受ける(単位会によって時期は様々)
  4. 特別研修を受ける
  5. 司法書士事務所へ就職する

新人のうちは、研修後ほとんど司法書士事務所へ就職します。

司法書士の代表的なキャリア

3パターン観てみましょう

勤務司法書士として働く

これは司法書士事務所内で長く働く道です。
その中で契約業務や事業の新規立ち上げの際の会社法上の手続き、M&Aの手続きなどに関与したり、不動産会社で登記業務を行なったりします。
会社組織の場合は給与が保証されるメリットがあります。

勤務司法書士

勤務司法書士から独立する

これは勤めている司法書士事務所から独立するパターンです。
司法書士は実力主義の面があるため、自分の売り上げや顧客がついてから独立するのが多いです。
独立開業すると、基本的にすべて自己責任となります。
もし病気や怪我で働けなくなれば、その期間の収入はゼロです。

なかには、司法書士試験合格後、即独立するパターンもあります。
地方で開業を計画している人にあるケースです。

司法書士法人や合同事務所を設立する

個人事務所ではなく、もっと大きな法人や事務所として独立するやり方です。
具体的には、司法書士同士で「司法書士の会社」である司法書士の法人を立ち上げたり、税理士や他の士業の方と一緒に合同事務所を作るといった方法です。
規模が大きければ、人脈を広げやすくなるメリットもあります。

認可団体

法務省

法務省

受験条件

年齢・学歴・性別に関係なく、誰でも受験できます。
それに、受験回数にも制限がありません。
合格するまで何度でもチャレンジできます。

合格率

司法書士試験の合格率は例年3~4%台です。

2021年 5.14%
2020年 5.17%
2019年 4.39%
2018年 4.31%
2017年 4.07%

合格率が著しく低いのは、こんな理由があるからです。

難易度のイメージ

絶対評価ではなく相対評価

司法書士試験の評価方法は、基準点を超えた人全員が合格になれる(絶対評価)わけではありません。
合格点を超えた人のうちで、さらに成績上位者のみが合格できるシステムになっているので(相対評価)、合格率が低いのです。

足切りがある

司法書士の試験には、午前の択一問題・午後の択一問題・午後の記述問題の3つをクリアしなければなりません。
3つすべてが基準点を満たしてあり、かつ合格点に届いていなければ合格できません。
3つの関門を突破しなければいけないため、合格率も低くなるわけです。

1年当たりの試験実施回数

司法書士の試験は年1回です。
筆記試験は、例年7月の第1日曜日に実施されます。
そして、筆記試験が合格したら口述試験に進みます。
口述試験は例年10月中旬~下旬頃に行われます。

数字の1

試験科目

  1. 憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)、刑法に関する知識
  2. 不動産登記および商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)
  3. 供託や民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識
  4. その他「司法書士法第3条第1項第1号から第5号」までに規定する業務を行うのに必要な知識や能力

具体的には、民法、不動産登記法、商法・会社法、商業登記法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法、供託法、刑法、憲法の計11科目が出題されます。

口述試験も上記の科目2や4に掲げる事項について、問われます。

採点方式と合格基準

  • 午前の部の試験(科目1)および午後の部の試験のうち、上記科目3や4については多肢択一式、そして午後の部の試験のうち、上記科目2については多肢択一式及び記述式により、それぞれ実施します。
  • 午前の部の試験および午後の部の試験の多肢択一式問題は、それぞれ35問で105点満点です。午後の部の試験の記述式問題は、2問で70点満点です。
  • 午前の部の試験の多肢択一式問題、午後の部の試験の多肢択一式問題、または午後の部の試験の記述式問題、各成績のいずれかがそれぞれ一定の基準点に達しない場合には、それだけで不合格とされます。

取得に必要な勉強などの費用

司法書士試験を短期的に合格するには、予備校へ通うのをおすすめします。
その学費がかかります。

取得に必要な勉強などの費用

テキストにかかる費用

【試験科目】の欄でもお伝えしたように、司法書士試験は全部で11の科目の勉強が必要になります。
予備校でテキストは購入できますが、それとは別に自分でテキストを購入する人も少なくありません。

仮に、独自にテキストを買うとして、11科目全てを1冊でカバーできるテキストはありません。
どうしても4~5冊は必要になります。
テキストは大きく分けると択一式のテキスト、記述式のテキスト、そして過去問の3つに分かれます。
それを踏まえて購入すると、総額3万円台にもなります。

科目数多いと、テキスト代も増えますね。

予備校にかかる費用

予備校名 費用
スタディング 81,400円~104,500円
アガルート 140,800円~173,800円
クレアール 360,000円~500,000円
伊藤塾 386,000円~476,000円
LEC東京リーガルマインド 469,700円~658,900円

受験料

8,000円(収入印紙で納付)

受験申込方法

法務局

受験申込に関する書類は、全国の法務局または地方法務局の総務課で交付を受けることができます。
郵送による請求もできます。
提出先もそちらになります。

提出には司法書士試験受験申請書、受験料、写真票および筆記試験受験票が必要です。
写真は申請前3ヶ月以内に撮影したもので、サイズは縦5cm×横5cmです。
無帽かつ正面から上半身を写した背景のない写真をご用意ください。
写真票の所定の欄に完全に貼り付けます。

それと、該当者のみになりますが、筆記試験免除申請者は口述試験受験票の原本とその写し1通が提出に必要です。

まとめ

今回は司法書士とその試験について、見てきました。
司法書士というのは、法務局、裁判所、検察長など行政機関に提出するための書類作成や審査請求を行うのが仕事です。
行政書士と似ていますが、作成する書類の種類や提出先が異なりますので、混同しないようにしましょう。

こちらの試験の評価は合格点の人全員が受かる絶対評価ではなく、さらに成績上位者にならないと合格できない相対評価をとっています。
勉強する科目も多いため、独学では短期間に合格できないかと思われます。

こちらではおすすめの予備校もご紹介しました。
司法書士試験に合格したい人は、予備校をうまく活用して対策してみて下さいね。

未来を見つめる青年

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