人間に医者がいるように、樹木にも医者がいます。
それが樹木医です。
樹木医はその名の通り、樹木の健康状態を見る職業です。
そこで今回は樹木医について見ていきましょう。
Contents
適用する仕事
樹木医の仕事は、巨樹・老樹の健康状態を診断して治療を行うことです。
日本では様々な場所に巨樹・老樹・古木林が存在しています。
これらは大事な環境資源であって、我々人間にとってシンボルや緑の文化財としてとても重要です。
ですので、巨樹・老樹の保護や保存が行われていますが、そのうちには環境の悪化・病害虫などが原因で樹勢が衰えてしまい、適切な保護を必要とするものもあります。
樹木医の仕事内容
樹木医は樹木の診断や治療の依頼を受けると、まずはその樹木を見に行って調査を行います。
調査の重要な点は、樹高・樹齢・幹の太さや葉の色やかれた枝の状況・根の張り具合・樹木の傷・腐朽・土の硬さ・水分の具合による土壌の状態などです。
腐朽の状態を診断する時は、幹に穴をあけて中に空洞がないか確認します。
樹木の状態を診断し終わったら、健康状態へ合わせて治療の方針を考えて計画を立てていきます。
この際、樹木の健康状態を記入したカルテと治療の計画書を作って、依頼人に見せて確認します。
治療は病害虫の駆除・消毒や痛んだ枝を剪定したりと外科的な手術・周辺の環境整備・土壌改良などを行います。
重機を使って大掛かりな移植・数年かかる治療もあります。
病気の予防措置・定期的に行う健康診断などもあります。
また、住宅地の開発などで山林にある古木の移植に対してのアドバイスを行なったり、町の緑化計画・造園計画のアドバイザーになることもあります。
昨今の樹木の事情
樹木医の治療対象は、天然記念物として指定されている名木・老木、公園・植物園の巨樹、街路樹、個人の家の庭木など様々な依頼があります。
そもそも木々は人々の憩いの環境を作り出し、野生動物が生きる環境を提供しているだけではなく、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の吸収・気温や湿度の調整・森の水を保つ水源の役割などがあります。
ですが、森林では林業者の高齢化・担い手不足によって木の手入れが不十分になってきています。
都市部などでは、公園・街路樹の整備により緑地を拡大する取り組みが行われてはいますが、環境の影響で木々が衰えて病気になる木もでてきます。
それに、持ち主がずっと大事にしてきた老木が病気になることがあります。
樹木医は樹木の治療や診断の専門家として、様々な存在理由を持っている木々の命を守ります。
おおよその年収とキャリアパス
勤務先・働き方により、収入には差が出やすいです。
樹木医を専業として働いている方は多くはありません。
樹木・植物に関わるその他の仕事をしながら、樹木医の専門的な知識を活用して仕事をする場合が多いので、どんな組織で働くかで給料が異なってきます。
民間企業のデータを見ると、民間の造園会社に勤めている時の平均年収は約250万円から約500万円程度となっています。
造園の仕事は技術職なので、個人の力量や経験により収入に差が出やすくなっています。
働くところによっては、樹木医の資格を持っていると毎月の給料に手当てがついたり、今より難易度が高めの業務を任されて昇進したりすることがあります。
造園業のほかに、大学など研究機関で樹木の生態の研究をする方もいます。
大学は役職が上がると収入が上がるので、講師なら年収は約720万円くらいですが、教授になると1000万円を超える方もいます。
その他にも自治体での公務員として林業・緑地造成の仕事に関わって、樹木医の資格を活用することもあります。
自治体で働く時は、その他の公務員と同じ扱いとなって国家公務員・地方公務員として決められた待遇になります。
日本では全国的に巨樹や古木が数多くあり、その種類も様々です。
こうした樹木は外国からも注目をされていて、自然環境保護・生物多様性の保全から見ても樹木を保護することへの関心が高くなっています。
これらの背景から樹木医の需要が少しずつ大きくなっています。
ただし、今現在は樹木医としての求人があまり多くないので、資格を取得すれば職に困らないというわけではありません。
樹木のプロとしてどのように活動をするのかを考えて、自ら活躍の場所を作り出すことも必要となります。
認可団体
以前は農林水産省でしたが、一般財団法人日本緑化センターが引き継ぎました。
受験条件
受験条件は業務経験が通算7年以上あることです。
業務経験の内容は、樹木の保護や管理・樹勢回復などに関する研究あるいは実務を行なった期間です。
一方、次のうちいずれかに該当する方は応募ができません。
- 成年被後見人や被保佐人
- 禁固以上の刑になってその執行が終わった方、または執行を受けることがなくなった日から計算して2年経過していない方
- 公務員で懲戒免職処分を受けて、その処分を受けた日から計算して2年経過していない方
- 樹木医の登録を取り消されて、取り消しの日から計算して2年経過していない方
- 破産者で復権を得ない方
合格率
毎年の合格率は約20%程度です。
1年あたりの試験実施回数
試験は1年に1回行われます。
選抜試験が7月、第1次審査がが10月上旬、第2次審査がが10月中旬にあります。
試験科目
樹木医研修受講者選抜試験というものを行います。
業務審査
筆記試験の前に業務審査が行われます。
これは応募の際に提出された書類により行われるもので、業務経験事例などによる書類審査となっています。
筆記試験
筆記試験は午前と午後があります。
午前は択一式で制限時間が90分です。
倫理を含む樹木医が備えるべき一般教養、高等学校卒業レベルの生物の知識、樹木医研修科目に関係している専門分野が出題されます。
午後は論述式で3題出されます。
制限時間が90分となっていて、樹木医としてバランスが総合的に取れた知識・文章能力・技術を審査されます。
採点方法と合格基準
択一式試験の正答率が5割に満たないと論述式が審査対象外となり、不合格となります。
民間資格の中では、かなり難しいといわれています。
また、正確に言うと、選抜試験に合格して終わりではありません。
選抜試験の後は研修を受けなければなりません。
研修で2週間程度をかけて講義と16科目の実習を行い、修了試験として筆記試験を受けます。
他にも、樹木医としての適性を見るための面接試験もあります。
当サイトでは、樹木医研修受講者選抜試験に重きを置きました。
取得に必要な勉強などの費用
日本樹木医会から参考書が約2,500円で発売されております。
また、通信講座も行われています。
基本講座が40,000円・論述添削が60,000円、論述問題実践が全2回のうち1回あたり25,000円、過去問実践が全2回のうち1回あたり20,000円となっています。
受験料
樹木医補の認定を受けていない方は18,000円(税込)
樹木医補の認定を受けている方は15,000円(税込)。ただし、樹木医補認定証の写しを添付すること
受験申込方法
応募には必要な書類があります。
1.受験年度の樹木医研修受講者選抜申込書
2.業務経歴書
3.業務経験事例
4.業務経歴証明書
5.受験手数料の振込票またはその写し
6.樹木医補認定証のコピー(樹木医補の認定を受けた者のみ)
7.1で貼付した受験者と同じ写真1枚
8.郵便はがき1枚
まとめ
樹木医は難易度は高いものの、この資格さえ持っていれば職にすぐにつけるというものではありません。
しかし、樹木関連の仕事をしてる方は合格すれば大きなスキルアップにつながりますし、できることも増えますので受けてみてはいかかでしょうか。
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