元々は、診療録管理士という名称の資格でしたが、1996年から「診療情報管理士」に名称が変更されました。
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適用する仕事
診療情報管理士は、カルテの管理や分析をする専門職です。
カルテとは、医療での患者の診察経過などを記録したものです。
患者の診療情報が記載されたカルテを管理、分析する専門職が診療情報管理士です。
仕事内容は、主に以下の3つに分けられます。
仕事内容
カルテ管理、データベース化
患者への医療行為や診察内容が、カルテには記載されています。
検査結果などの内容を精査して、データベースに登録します。
診療情報管理士のこの業務をICDコーディングといいます。
これはカルテに記載されている病名をコード化していく作業です。
このコード化は、世界共通のルールに従って行われます。
ICDとは、国際保健機関(WHO)の作成している国際疾病分類を指して、これは世界で12万以上もあるといわれている病名を国際的に統一した基準で定めたものです。
疾病の国際比較や情報管理の統一化に使われています。
サマリー、点検報告書の作成
サマリーとは、カルテに記載されている患者さんの詳しい情報をもとにして、病歴や治療歴をまとめたものです。
患者が退院や転院をするときに、次の受け入れ先へ情報共有のために作成されます。
基本的に医師が作成しますが、サマリーの最終点検を行うのは診療情報管理士の仕事です。
不備や記入漏れがあるときは、医師へ訂正の依頼をします。
診療情報管理士は、毎月作成されたサマリーをもとにして患者情報の統計を取ります。
それをもとに、点検報告書を作成して、病院長へ提出する業務も担っています。
がん登録
がん登録とは、がんの診断や治療、経過についての情報を収集、保管、整理解析する仕組みのことです。
これによって、毎年どのくらいの人ががんで亡くなっているのかや(死亡数)、毎年どのくらいの数のがんの診断があるのか(罹患数)、がんと診断された人がその後どのくらいの割合で生存しているのか(生存率)、といったがんの統計情報が重要です。
がん登録は、2013年にがん登録推進法が成立したことで、医療機関から各都道府県へがん患者の情報の提出が義務付けられ、行われるようになりました。
このがん登録も、診療情報管理士の重要な業務です。
がん登録では、がん患者の氏名や性別と生年月日、届け出を行った医療機関名、がんと診断された日、がんの発見経緯、がんの種類と進行度、治療内容、居住地、生存確認情報といった情報を提出します。
診療情報管理士の勤務スタイル
診療情報管理士は、仕事と家庭を両立できる働き方ができます。
残業や休日出勤が少なく、基本的には夜勤がないからです。
医療系の仕事は、夜勤や休日出勤が多いと思われている人が多いと思いますが、診療情報管理士はデータを扱う仕事なので救急患者対応などの急を要する業務はないです。
そのため、残業が少ないです。
終業は遅くても18時のところが多く、休日出勤もほとんどありません。
おおよその年収とキャリアパス
この仕事は、東京などの都市部と地方の都市とでは給与の差が大きいです。
正社員の場合、診療情報管理士の平均年収は320万円から440万円です。
同じ病院に長く勤務をしていると、役職がついてきます。
主任や係長、課長、部長と役職がついてくると役職手当が支給されます。
勤務年数が長くなるほど、基本給が徐々に上がっていくのが一般的なルートです。
平均年収は、初任給から40万円から100万円ほど上がるのが一般的です。
正社員で雇用されている方もいますが、契約社員や派遣、アルバイトという雇用形態の方も多いです。
契約社員、派遣、アルバイトの場合は、時給平均が1,500円から2,000円ほどです。
認可団体
公益社団法人医療研修推進財団と、次の4病院団体協議会によって共同で認定された資格です。
- 一般社団法人日本病院会
- 公益社団法人全日本病院協会
- 一般社団法人日本医療法人協会
- 公益社団法人日本精神科病院協会
受験条件
一般社団法人日本病院会が指定する大学や専門学校で、3年以上学んで指定の学位を修得すると受験資格を得られます。
または、指定以外の大学や短大や専門学校を卒業した場合は、一般社団法人日本病院会が主催の「診療情報管理士通信教育」を2年間受講して指定の学位を修得すると、認定試験に臨めます。
その場合、認定試験の前年10月までに受験申し込みと受験料を納めます。受験料は10,000円です。
「診療情報管理士通信教育」には基礎課程と専門課程があって、どちらも1年ほどかけて単位が取得できます。
基礎課程への受講資格は上記で述べたとおりです。
専門課程への編入資格ですが、次のいずれかに該当する場合は、基礎課程を受講せずに専門課程に編入できます。
合格率
年度 | 受験者 | 合格率 |
2022年 | 2,625人 | 66.7% |
2021年 | 2,800人 | 62.4% |
2020年 | 3,169人 | 61.9% |
診療情報管理士認定者は2021年時点で41,000人を超えていて、医療機関で活躍されています。
1年当たりの試験実施回数
試験は年に1回です。2月に行われています。
試験会場は、全国で15会場あります。
北海道、宮城、栃木、東京、神奈川、新潟、長野、愛知、大阪、岡山、広島、高知、福岡、鹿児島、沖縄です。
試験の開始時刻は午後1時です。
試験科目
試験は多肢選択式です。マークシート式です。
基礎分野(1時間)
- 医療概論
- 人体構造・機能論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論I~VIII
- 医学・医療用語
専門分野(1時間)
- 医療管理総論
- 医療管理各論I~III
- 保健医療情報学
- 医療統計I~II
- 診療情報管理I~III
- 国際統計分類I~II
採点方式と合格基準
マークシート式です。
100点満点の試験です。合格点は明確な発表はありませんが、合計の得点率が60%以上と考えられています。
取得に必要な勉強などの費用
一般社団法人日本病院会で受講する、診療情報管理士通信教育には受講料がかかります。
診療情報管理士通信教育の受講料は、2年間で220,000円です。(税込)
入構時に基礎課程の受講料110,000円、2年目に専門課程分110,000円をそれぞれ納めます。
受講料は受講受理通知を受けてから納入です。即納の受講料は返却されません。
受験料
受験料は10,000円、別途認定料は30,000円でそれぞれ税込です。
受験申込方法
WEBでの申込です。WEBのページ上の誘導に従っていけば、申し込みは完了します。
手順は以下の通りです。
- 「お申し込みページを開く」ボタンをクリックします。
- お申し込みフォームのURL請求し、メールアドレスの登録をします。
登録したメールアドレスに、申込み用フォームURLが記載されているメールが届きます。そこへアクセスして申込ができます。
※携帯電話のキャリアメールの場合はエラーになることがあります。1つのメールアドレスで複数名分の登録はできません。 - メールにてお申し込みファームURLのご案内があります。
- お申し込み内容を入力します。
- 受付完了メールが届きます。
- お申込内容の審査があります。数週間のお時間がかかるときがあります。
- 受理通知のメールが送付されます。受講料を納入します。
まとめ
診療記録や情報を管理する専門職の民間資格についてでした。
診療情報管理士は、主に病院でカルテに関わる仕事です。
正社員での雇用もありますが、契約社員や派遣、アルバイトという雇用形態が多いです。
一般社団法人日本病院会が指定する大学や専門学校で3年以上学んで資格試験を受験して合格するか、それ以外の大学や短大や専門学校卒業後に一般社団法人日本病院会が主催の「診療情報管理士通信教育」を2年間受講して認定試験を受けて、合格するかでないと資格を取得することはできません。
「診療情報管理士通信教育」は基礎課程と専門課程がありますが、どちらも1年ほどかけて単位を取得できます。
受講料は基礎課程と専門課程はそれぞれ110,000円です。
「診療情報管理士通信教育」は、WEBでの申込をしてからの受講です。
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